構造計算の実務 公開日:2026年6月12日 更新日:2026年7月22日

固定荷重・積載荷重の拾い方|荷重の種類と組み合わせをわかりやすく解説

固定荷重・積載荷重の拾い方|荷重の種類と組み合わせをわかりやすく解説

構造計算は「建物にどんな力が作用するか」を数え上げる荷重の拾い(荷重拾い)から始まります。地味な作業ですが、ここを間違えると後の計算がすべて狂う、実務で最も大切な工程のひとつです。

建築の荷重の全体像

固定荷重・積載荷重・積雪… スラブ(床) ← 梁 → 基礎 地盤へ (スラブ → 梁 → 柱 → 基礎 → 地盤)
「力の流れ」の基本。荷重はスラブ→梁→柱→基礎→地盤の順に伝達される。
記号荷重性質
G固定荷重(自重)常時・鉛直
P積載荷重常時・鉛直(人・家具など)
S積雪荷重短期(多雪区域では長期も)
W風圧力短期・水平
K地震力短期・水平

固定荷重 G:建物そのものの重さ

構造体(柱・梁・床・壁)の自重に、仕上げ材・設備などの重さを加えたものです。単位体積重量 × 体積、または単位面積重量 × 面積で拾います。

材料・部位重さの目安
鉄筋コンクリート24 kN/m³
コンクリート(無筋)23 kN/m³
鋼材78.5 kN/m³(カタログの単位重量 kg/m を使用)
RCスラブ(t=150+仕上げ)約 4.5〜5.5 kN/m²
例:300×600のRC大梁の自重 0.3 × 0.6 × 24 ≒ 4.3 kN/m

積載荷重 P:人や物の重さ(用途で決まる)

人・家具・書類・機器などの重さで、室の用途ごとに建築基準法施行令第85条に最低値が定められています。重要なのは、同じ室でも検討対象によって3段階の値を使い分けることです。

室の用途①床用(N/m²)②大梁・柱・基礎用③地震力用
住宅の居室1,8001,300600
事務室2,9001,800800
教室2,3002,1001,100
百貨店・店舗の売場2,9002,4001,300

なぜ3段階に分かれているのか

  • ①床用が最大:床スラブは狭い範囲で見るため、人や物が一か所に集中する場合を考える。
  • ②架構用は平均化:大梁や柱は広い面積を支えるため、全面に最大荷重が同時に載る確率は低い。
  • ③地震用が最小:地震力の計算(Qi=Ci×Wi)に使う建物全体の平均的な重さ。建物全体で見ればさらに平均化される。
POINT(試験頻出)
  • 大小関係は必ず 床用 > 架構用 > 地震用
  • 「事務室の床用2,900」など代表値は暗記対象。百貨店・店舗 ≧ 事務室 > 教室 > 住宅の順も覚える。
  • 倉庫業の倉庫の床は実況に応じて計算し、3,900 N/m²を下回ってはならない。

荷重の組み合わせ

拾った荷重は、検討する状況に応じて組み合わせます(一般区域の場合)。

状態組み合わせ使う許容応力度
長期(常時)G + P長期許容応力度
短期(積雪時)G + P + S短期許容応力度
短期(暴風時)G + P + W
短期(地震時)G + P + K

多雪区域では「G+P+0.7S+K(地震時)」のように積雪を組み合わせるなど、地域によって扱いが変わります。組み合わせた応力で部材を検定する流れは「許容応力度計算とは?」で解説しています。

あわせて確認

拾った重量から地震力を求める方法は「地震力の計算方法」へ。荷重を受けた梁の応力の求め方は「Q図・M図の描き方」をどうぞ。

実務のワンポイント

固定荷重で見落としがちなのは、竣工後に追加される空調更新や太陽光パネルなどの重さです。私は仕上げ表だけでなく改修計画も確認し、将来の荷重増を見込んで多少の余裕を持たせて拾います。積載荷重も当初の用途どおりに使われ続けるとは限らず、テナント替えで倉庫的な使い方に変わり後年トラブルになった例も見てきました。

負担幅の考え方(図解)

スラブに載る荷重を梁に振り分けるとき、その梁が「どの範囲の床を支えているか」を示すのが負担幅です。荷重拾いの中心となる考え方です。

梁が支える床の範囲(負担幅) 梁A 梁B 梁C 梁Bの負担幅 L1/2 L2/2 梁Bは、左右のスパンの半分ずつ(L1/2 + L2/2)の床を支える
梁の負担幅は、両隣の梁との距離の半分ずつの合計。スラブの荷重(kN/m²)に負担幅を掛けると、梁に作用する等分布荷重(kN/m)になる。

荷重拾いの計算例

実際の数値で、スラブから梁への荷重の流れを追ってみましょう。

条件:事務室、RCスラブ厚150mm+仕上げ、スパン6m×6mのグリッド。梁Bの負担幅は3m(両側3m/2×2)とします。

項目計算
スラブ自重0.15m × 24kN/m³3.6 kN/m²
仕上げ・天井・設備(一般的な目安)1.0 kN/m²
固定荷重 G の小計3.6 + 1.04.6 kN/m²
積載荷重 P(事務室・架構用)1,800 N/m²1.8 kN/m²
合計(長期 G+P)4.6 + 1.86.4 kN/m²
梁Bへの等分布荷重6.4 kN/m² × 負担幅3m19.2 kN/m
梁自身の自重(0.4×0.7想定)0.4 × 0.7 × 246.7 kN/m
梁の設計用荷重19.2 + 6.7約25.9 kN/m

ここで注意したいのが、梁自身の自重を忘れないことです。スラブからの荷重だけを拾って梁の自重を落とすミスは、初学者にありがちな失敗です。この例では梁自重が全体の約26%を占めており、無視できない大きさであることがわかります。

積載荷重は「どの部材を検討するか」で使い分ける

上の例では梁の検討なので架構用(1,800N/m²)を使いました。同じ事務室でも、スラブそのものを検討するときは床用(2,900N/m²)、地震力の算定に使う建物重量には地震用(800N/m²)を用います。同じ室でも検討対象によって値が変わる点が、荷重拾いでもっとも間違えやすいポイントです。

よくある質問

Q1. スラブの荷重は必ず負担幅で振り分けるのですか?

スラブの形状によります。一方向にだけ長い(長辺/短辺が2を超える)スラブは、荷重がほぼ短辺方向にだけ流れるため、短辺方向の梁が負担幅ぶんを受けると考えます。一方、正方形に近いスラブは四方の梁に荷重が流れるため、四隅から45度の線を引いて三角形・台形に分割して各梁に振り分けます。実務では等価な等分布荷重に換算して扱うことが多いです。

Q2. 積雪荷重はどのように扱いますか?

積雪量1cmあたり20N/m²以上を、その地域の垂直積雪量に応じて計算します。一般区域では短期荷重として扱いますが、多雪区域では長期の組み合わせにも積雪の一部(0.7倍)を含めるなど、扱いが異なります。また、屋根勾配が急な場合は雪が滑り落ちるため低減でき、逆に谷部や壁際では吹きだまりによる不均等な積雪を考慮する必要があります。

Q3. 設備荷重はどのくらい見込めばよいですか?

用途によって大きく異なります。一般的な事務所・住宅では、天井・設備配管を含めて0.5〜1.0kN/m²程度を固定荷重に含めるのが目安です。ただし、機械室・サーバー室・厨房・図書室の書架などは特に重く、実際の機器重量を個別に拾う必要があります。設計初期に設備担当と重量物の位置・重さを共有しておかないと、後から梁の断面変更が必要になることがあります。

まとめ

  • 荷重はG(固定)・P(積載)・S(積雪)・W(風)・K(地震)の5種類が基本。
  • 積載荷重は用途ごとに「床用>架構用>地震用」の3段階を使い分ける。
  • 長期はG+P、短期はそれにS・W・Kのいずれかを加えて検討する。