構造計算の実務 更新日:2026年6月12日

許容応力度計算とは?構造計算ルートの全体像をやさしく解説

許容応力度計算は、日本の構造設計の最も基本となる計算方法です。「部材に生じる応力度が、材料の許容応力度以下であることを確かめる」というシンプルな考え方ですが、構造計算ルートとの関係が初学者にはわかりにくいところです。この記事で全体像を整理しましょう。

許容応力度計算の基本的な考え方

建物に荷重(固定荷重・積載荷重・積雪・風・地震など)が作用すると、柱や梁の各部材に応力が生じます。許容応力度計算では、部材の各断面について次の関係を確認します。

生じる応力度 σ ≦ 許容応力度 f 応力度=応力を断面性能(断面積・断面係数など)で割った単位面積あたりの力。許容応力度=材料の基準強度に安全率を考慮した値。

許容応力度には長期(常時の荷重に対するもの)と短期(地震や台風など稀にしか起きない荷重に対するもの)があり、それぞれの荷重の組み合わせに対して検定します。

一次設計と二次設計

現行の耐震設計は、2段階の目標を持っています。

  • 一次設計:中規模(稀に発生する)の地震に対して、損傷しないこと。→ 許容応力度計算で確認。
  • 二次設計:大規模(極めて稀に発生する)の地震に対して、損傷はしても倒壊・崩壊しないこと。→ 層間変形角・剛性率・偏心率の確認や保有水平耐力計算で確認。
中規模の地震 稀に発生(震度5強程度) 損傷させない 一次設計 許容応力度計算で確認 大規模の地震 極めて稀(震度6強〜7) 倒壊させない 二次設計 層間変形角・保有耐力等

図:2段階の耐震設計目標。許容応力度計算は一次設計の中心的手法

POINT

「中地震では無傷、大地震では壊れても人命は守る」というのが日本の耐震設計の基本思想です。許容応力度計算は一次設計の中心的な手法にあたります。

構造計算ルート1・2・3の違い

建物の規模や形状に応じて、どこまでの計算を行うかが「ルート」として整理されています。

ルート主な対象計算内容のイメージ
ルート1小規模な建物(例:鉄骨造の小規模建築、壁量の多いRC造など)許容応力度計算+壁量・部材規定などの仕様的な確認。二次設計の詳細計算は省略できる。
ルート2中規模・整形な建物(高さ31m以下が目安)許容応力度計算に加え、層間変形角・剛性率・偏心率を確認し、バランスのよさを担保する。
ルート3大規模・不整形な建物許容応力度計算に加え、保有水平耐力計算で大地震時の終局的な耐力を直接確認する。

ルートの数字が大きいほど高度な計算を行う、という関係です。さらに高さ60mを超える超高層建築物などでは、時刻歴応答解析による検証と大臣認定が必要になります。

剛性率・偏心率とは

  • 剛性率:高さ方向の剛性のバランス。特定の階だけ柔らかい(例:ピロティ階)と、その階に変形・損傷が集中するため、各階の剛性率が6/10以上であることを確認する。
  • 偏心率:平面的な剛性のバランス。重心と剛心がずれていると地震時に建物がねじれるため、偏心率が15/100以下であることを確認する。

計算の実務的な流れ

  1. 荷重の設定:固定荷重・積載荷重を拾い、地震力(Ai分布による層せん断力)・風荷重などを算定する。
  2. 応力解析:架構モデルに荷重を載荷し、各部材の応力(曲げ・せん断・軸力)を求める。現在は一貫構造計算プログラムを使うのが一般的。
  3. 断面検定:各部材の応力度が許容応力度以下であることを確認する。
  4. 二次設計の確認:ルートに応じて層間変形角(原則1/200以内)、剛性率、偏心率、保有水平耐力などを確認する。
あわせて確認

断面検定で使う断面性能の基礎は「断面二次モーメントとは?」、変形の検討は「梁のたわみの計算方法」で解説しています。

まとめ

  • 許容応力度計算は「生じる応力度 ≦ 許容応力度」を確認する、一次設計の基本手法。
  • 耐震設計は「中地震で損傷しない(一次設計)」「大地震で倒壊しない(二次設計)」の2段構え。
  • 建物の規模・形状に応じてルート1〜3を選択し、ルート3では保有水平耐力計算まで行う。

※本記事は学習用の概説です。実際の設計にあたっては建築基準法・同施行令・告示および最新の技術基準解説書を必ず確認してください。