構造力学の基礎 更新日:2026年6月12日

梁のたわみの計算方法|公式一覧と覚え方のコツ

たわみは、荷重を受けた梁がどれだけ変形するかを表す量です。構造設計では強度(壊れないこと)だけでなく、使用上支障のない変形に収めることも求められます。建築士試験でも頻出のテーマです。

たわみ公式の一覧

代表的な支持条件・荷重条件のたわみ(最大値 δ)は次のとおりです。

支持条件荷重条件最大たわみ δ
片持ち梁先端に集中荷重 PPL³ / 3EI
片持ち梁等分布荷重 wwL⁴ / 8EI
単純梁中央に集中荷重 PPL³ / 48EI
単純梁等分布荷重 w5wL⁴ / 384EI
両端固定梁中央に集中荷重 PPL³ / 192EI
両端固定梁等分布荷重 wwL⁴ / 384EI
例:単純梁・等分布荷重 δ = 5wL⁴ / 384EI δ:最大たわみ(mm)/ w:単位長さあたりの荷重(N/mm)/ L:スパン(mm)/ E:ヤング係数(N/mm²)/ I:断面二次モーメント(mm⁴)
w δ(最大たわみ) スパン L

図:等分布荷重 w を受ける単純梁。中央で最大たわみ δ が生じる

公式の構造を理解すれば覚えやすい

6つの公式を丸暗記する必要はありません。すべての公式は次の形をしています。

  • 集中荷重なら PL³、等分布荷重なら wL⁴ が分子(wL が全荷重に相当するため、次数がひとつ上がる)。
  • 分母は必ず EI ×(係数)。EI は「曲げ剛性」で、大きいほどたわみは小さい。
  • 係数は拘束が強いほど大きくなる(=たわみが小さくなる):片持ち 3 → 単純 48 → 両端固定 192。
覚え方のコツ
  • 単純梁・中央集中の「48」を基準に、両端固定はその4倍の「192」。
  • 等分布の「5/384」は、両端固定になると分子の5が取れて「1/384」。
  • スパン L の影響が最も大きい(3乗〜4乗)。スパンが2倍になるとたわみは8〜16倍。

計算例:単純梁のたわみ

スパン L = 6m の鉄骨単純梁(H-400×200×8×13、I = 2.37×10⁸ mm⁴、E = 2.05×10⁵ N/mm²)に、等分布荷重 w = 10 kN/m が作用する場合:

δ = 5 × 10 × 6000⁴ / (384 × 2.05×10⁵ × 2.37×10⁸) ≒ 3.5 mm w = 10 kN/m = 10 N/mm として計算

スパンに対する比率は δ/L = 3.5/6000 ≒ 1/1700 で、一般的な制限値より十分小さく収まっています。

たわみの制限値

建築の構造設計では、たわみそのものの値よりもスパンに対する比率で管理します。建築基準法施行令第82条にもとづく告示では、梁のたわみ(変形増大係数を考慮した値)をスパンの1/250以下とすることが原則とされています。

  • たわみが大きいと、仕上げ材のひび割れ、建具の開閉不良、振動・歩行感の悪化につながる。
  • RC造ではクリープによる長期的な変形増大を考慮する(変形増大係数)。
  • 片持ち梁は変形が出やすいため、実務ではより厳しめに管理することが多い。
あわせて確認

たわみ計算に必要な断面二次モーメント I の意味と求め方は「断面二次モーメントとは?」で解説しています。I の計算は断面性能計算ツールが便利です。

まとめ

  • たわみ公式は「荷重項(PL³ or wL⁴)÷ EI × 係数」という共通構造で覚える。
  • スパン L の影響が最大(3〜4乗)。スパンが伸びる設計ではたわみ検討が支配的になりやすい。
  • 実務ではたわみをスパンの1/250以下などの比率で管理する。