構造計算の実務 公開日:2026年6月29日 更新日:2026年7月6日

RC造の構造計算ルートとは?ルート1・2・3の違いと判定をわかりやすく解説

RC造の構造計算ルートとは?ルート1・2・3の違いと判定をわかりやすく解説

鉄筋コンクリート造(RC造)の構造設計では、建物の規模や特性に応じて「構造計算ルート」を選びます。ルート1・2・3のどれを通すかで、必要な検討項目・計算量・構造計算適合性判定の要否が変わります。この記事では、各ルートの違い・選び方・判定の流れを、はじめての方にもわかるように図解で丁寧に解説します。記事末では、計算書に使えるRC造の設計ルート判定Excelを無料ダウンロードできます。

この記事の要点
  • 構造計算ルートとは、大地震に対する安全性をどう確認するかの手順の選択肢。RC造はルート1・2・3。
  • ルートが上がる(1→3)ほど検討は厳密になり、適用できる建物の規模も大きくなる。
  • ルート3は構造計算適合性判定(構適判)が必要。ルート2も一定条件で必要、ルート1は不要。

構造計算ルートとは?(一次設計と二次設計)

建築物の構造計算は、大きく2段階で安全性を確かめます。

  • 一次設計許容応力度計算…数十年に一度程度の「中地震」に対し、部材の応力が許容応力度以内で、建物が損傷しないことを確認する。
  • 二次設計(大地震に対する検討)…数百年に一度級の「大地震」に対し、建物が倒壊・崩壊しないことを確認する。

この二次設計を“どの方法で”確認するかの違いが、ルート1・2・3です。ルートが上がるほど、地震時の挙動をより直接的・厳密に検証します。

RC造の設計ルート全体像(ルート1・2・3)

RC造の構造計算ルートは、二次設計の確認方法によって次の3つに分かれます。まずは全体像をつかみましょう。

RC造の構造計算ルート(ルート1・ルート2・ルート3)の判定フロー図。許容応力度計算から、壁量・柱量の確保、剛性率・偏心率・層間変形角の確認、保有水平耐力計算へ進む流れ
RC造の設計ルート(構造計算ルート)の全体像。二次設計の確認方法でルート1・2・3に分かれる。
ルート二次設計の確認方法適用の目安構適判
ルート1壁量・柱量の確保で代替小規模・低層の建物不要
ルート2剛性率・偏心率・層間変形角+靭性確保中規模の建物一部必要
ルート3保有水平耐力計算規模・高さの大きい建物必要

※ 具体的な高さ・階数などの適用条件は「各ルートの比較表」と「法的根拠」を参照してください。高さ60mを超える建物は時刻歴応答解析(大臣認定ルート)になります。

ルート1|許容応力度計算+壁量・柱量の確保

小規模な建物で使える、もっとも簡便なルートです。許容応力度計算(一次設計)に加えて、各階に十分な耐力壁・柱の断面積を確保することで、保有水平耐力計算などの二次設計を省略します。

考え方はシンプルで、壁・柱が十分にあれば、大地震時の地震力も弾性的に受け止められるとみなすものです。代表的な確認式(イメージ)は次のとおりです。

Σ(2.5 × Aw) + Σ(0.7 × Ac) ≧ Z・W・Ai

ここで Aw=耐力壁の水平断面積、Ac=柱の水平断面積、Z=地域係数、W=重量、Ai=高さ方向の分布係数です(係数はコンクリート強度などにより告示で規定されます)。

  • メリット:計算が簡便で、構造計算適合性判定が不要。
  • デメリット:壁量・柱量の制約が厳しく、大きな建物や開放的なプランには不向き。

ルート2|剛性率・偏心率・層間変形角の確認

中規模の建物向けのルートです。許容応力度計算に加えて、建物のバランスと変形を確認します。

  • 層間変形角 ≦ 1/200…地震時の各階の変形が過大でないことを確認する。
  • 剛性率 ≧ 0.6…高さ方向で硬さが極端に偏っていないこと(特定階への損傷集中を防ぐ)。
  • 偏心率 ≦ 0.15…平面的に剛性が偏っていないこと(ねじれ破壊を防ぐ)。

あわせて、柱・梁・耐力壁のせん断破壊を防ぐ靭性確保(せん断設計)を行います。ルート2は構造形式によりルート2-1・2-2・2-3などに細分されます。

ルート3|保有水平耐力計算

規模・高さの大きい建物や、ルート1・2の条件を満たさない場合に用いるルートです。大地震に対する建物の粘り(保有水平耐力)を直接計算して確かめます。

Qu ≧ Qun (必要保有水平耐力) Qun = Ds・Fes・Qud

ここで Qu=保有水平耐力、Ds=構造特性係数(靭性が高いほど小さくできる)、Fes=形状係数(剛性率・偏心率に応じた割増)、Qud=大地震時の地震層せん断力です。崩壊メカニズムを想定し、各部材が脆性破壊せず粘り強く壊れる(曲げ降伏先行・せん断破壊回避)ように設計します。もっとも自由度が高い反面、検討は大規模で、構造計算適合性判定が必要です。

ルートの選び方と判定の流れ

  • まず建物の高さ・階数・形状で、適用可能なルートを絞り込む。
  • 小規模で壁量が確保できる → ルート1。バランス確認で成立 → ルート2。それ以外・大規模 → ルート3
  • ルート3は構造計算適合性判定の対象。ルート2も一定条件で対象、ルート1は対象外(ただし許容応力度計算は必須)。
  • 材料選定の考え方(梁断面を小さくしたいなら高強度鉄筋、柱断面を小さくしたいなら高強度コンクリート)ともあわせて検討します(→「RC造とは?」「鉄筋の種類」)。

各ルートの比較表

ルート1・2・3の違いを一覧で整理すると次のとおりです。

項目ルート1ルート2ルート3
計算内容仕様規定のみ許容応力度+剛性率・偏心率ルート2+保有水平耐力
高さ制限13m以下(目安)31m以下制限なし(60m超は別途)
構造計算適合性判定不要不要(一部必要)必要
計算の複雑さ
設計の自由度
実務での使用頻度高(最多)

実務での注意点とよくある質問

Q1. ルート2とルート3、どちらを選ぶべきか?

原則はルート2での設計を目指すことを推奨します。ルート2はルート3に比べて計算量が少なく、構造計算適合性判定(いわゆる「構適判」)が不要なケースが多いためです。ただし、平面・立面に形状的な不整形がある場合はルート3が必要になります。

Q2. 構造計算適合性判定(構適判)はどのルートで必要?

原則としてルート3(保有水平耐力計算)以上の計算を行う場合に、構造計算適合性判定機関による審査が必要です。ルート2でも、高さ20mを超えるRC造など一定の条件で必要となります。

Q3. 剛性率・偏心率がNGになった場合は?

以下の対応策が考えられます。

  • 耐震壁の追加・移動によるバランス改善
  • 柱・梁断面の見直し
  • ルート3への移行(形状係数 Fes を用いて保有水平耐力で確認する)

Q4. 免震構造の場合はどのルートになる?

免震構造は通常の設計ルートとは別に、大臣認定に基づく特別な計算方法が適用されます。限界耐力計算または時刻歴応答解析との組み合わせが一般的です。

法的根拠

RC造の構造計算ルートの根拠となる主な法令・基準は次のとおりです。

根拠法令条項
建築基準法施行令第81条
国土交通省告示第593号(平成19年)
建築物の構造関係技術基準解説書(黄色本)最新版参照

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監修:国土交通省国土技術政策総合研究所・建築研究所 ほか/発行:全国官報販売協同組合|構造設計実務の必携書(通称「黄色本」)

構造計算ルートの判定や許容応力度計算・保有水平耐力計算の根拠が体系的にまとめられた、構造設計の実務の拠り所となる解説書です。法令・告示と一体で参照されるため、最新の2025年版を1冊手元に置いておくことを強くおすすめします。

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RC造 設計ルート判定Excel

建物条件を入力すると、適用できる構造計算ルートの判定に使えるシートです。計算書の添付資料としてもご活用いただけます。

※ Microsoft Excel(.xlsx)。判定結果は設計者ご自身の責任でご確認のうえご使用ください。

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ご利用にあたって

本記事とExcelは、RC造の構造計算ルートの考え方を理解するための解説資料です。実際の設計では、採用する基準(建築基準法施行令・関連告示・建築物の構造関係技術基準解説書ほか)や条件に応じた確認が必要です。計算結果は設計者ご自身の責任でご確認のうえご使用ください。

実務のワンポイント

実務では、平面計画の段階でルート2に収まるかどうかを意匠設計者と早めにすり合わせるようにしています。実施設計が進んでからルート3への切替えが判明すると、構造計算適合性判定のスケジュールに響き、工程全体を圧迫してしまうからです。

まとめ

  • RC造の構造計算ルートは1・2・3で、二次設計(大地震への確認)の方法が違う。
  • ルート1=壁量・柱量で代替/ルート2=剛性率・偏心率・層間変形角/ルート3=保有水平耐力計算。
  • 実務ではルート2が最多。形状の不整形などがあればルート3へ。
  • ルート3は構適判が必要、ルート2も一定条件で必要。規模・高さ・形状でルートを選ぶ。
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