超高層建築物とは?高さ60m超の定義・構造形式と大臣認定
超高層建築物とは、建築基準法上は高さ60mを超える建築物を指します。「超高層」という言葉自体に法律上の定義があるわけではありませんが、構造設計の世界では「60m超=時刻歴応答解析と大臣認定が必要になる建築物」という意味で使われるのが一般的です。一般のビルとは異なる、特別な構造設計と審査が求められます。この記事では、定義の根拠、認定の流れ、採用される構造形式、そして長周期地震動の課題までを整理します。
- 超高層建築物=建築基準法20条で最上位区分となる「高さ60m超」の建築物。
- 時刻歴応答解析で安全性を検証し、性能評価+国土交通大臣認定が必要。
- S造・CFT造が主流。制震・免震を併用し、長周期地震動への対策が重要。
高さ60m超という定義
建築基準法第20条では、建築物を高さなどで区分し、必要な構造安全性の確かめ方を定めています。高さ60mを超える建築物は最上位の区分で、通常の計算(許容応力度等計算・保有水平耐力計算など)ではなく、より高度な検証が必要です。
なぜ60mで線を引くのでしょうか。建物が高くなるほど固有周期が長くなり、地震時の揺れ方が複雑になります。通常の設計で使う地震力の算定式(静的な計算)は、ある程度の高さまでの建物を想定して作られているため、それを超える建物では「実際の地震波を入力して挙動を直接確かめる」動的な検証が求められる、という考え方です。目安として60mはおよそ15〜20階建てに相当し、これを超えるタワーマンションやオフィスビルが該当します。
大臣認定の仕組み
高さ60m超の建築物は、地震・風に対して時刻歴応答解析(地震波を入力して時々刻々の応答を計算する手法)などで安全性を検証し、指定性能評価機関の性能評価を経て、国土交通大臣の認定を受ける必要があります。一方、高さ60m以下は政令で定める計算方法(ルート1〜3)で確かめます。
時刻歴応答解析では、過去の代表的な地震波(観測波)や、その敷地で想定される地震波(サイト波)を建物モデルに入力し、各階の揺れ・部材の損傷の程度が基準内に収まることを確認します。設計→性能評価機関での審査(性能評価)→大臣認定→確認申請、という流れになるため、一般の建物より設計・審査に時間がかかります。
採用される構造形式
- 鉄骨造(S造)・CFT造:軽くて粘り強く、超高層の主流。CFT造は鋼管にコンクリートを充填した合成構造で、細い柱で大きな軸力を負担できる。
- 制震・免震:オイルダンパー・鋼材ダンパーなどの制震部材や免震層で揺れのエネルギーを吸収する。
- チューブ構造・アウトリガー:外周のフレームや中央コアと外周柱をつなぐ剛強な部材で、水平力に効率よく抵抗。
高さが増すほど、地震力よりも風揺れ(居住性)が設計を支配する場面も増えます。建物の軽量化と減衰(揺れを吸収する仕組み)の確保が、超高層の構造計画の共通テーマです。RC造の超高層タワーマンションも近年は一般的で、高強度コンクリート(高強度コンクリート)と高強度鉄筋の開発がこれを支えています。
長周期地震動の課題
超高層は固有周期が長い(数秒程度になる)ため、遠方の巨大地震で生じる長周期地震動と共振し、上層階が大きくゆっくり揺れることがあります。東日本大震災では、震源から遠く離れた大阪の超高層ビルが長時間大きく揺れたことが知られています。これに対し、制震部材(ダンパー)の付加や既存建物のレトロフィット(改修)などの対策がとられます。
よくある質問
Q1. 高さ60mちょうどの建物は超高層ですか?
法規上の区分は「60mを超える」建築物なので、60mちょうどは含まれません。60m以下の建物は、政令に定める計算ルート(許容応力度等計算・保有水平耐力計算など)で構造安全性を確認します。
Q2. 超高層は普通のビルより地震に強いのですか?
検証のレベルが高く、想定地震波に対する挙動まで確認されているという意味で、設計の信頼性は高いといえます。ただし「揺れない」わけではなく、むしろ長周期の大きな揺れが長く続く特性があるため、家具の固定やエレベーター停止への備えなど、使う側の対策も重要です。
大臣認定物件の審査対応では、時刻歴応答解析の入力地震波の選定根拠を細かく問われることが多い。想定地震動の代表性を説明できるよう、解析条件は設計段階からきちんと記録に残しておくことが欠かせない。
「耐震・制震・免震の違い」「構造種別の違い」「固有周期と共振」をどうぞ。
まとめ
- 超高層建築物は高さ60m超の建築物(建築基準法20条の最上位区分)。
- 時刻歴応答解析などで検証し、性能評価を経て国土交通大臣認定が必要。
- S造・CFT・制震・免震などを採用。軽量化と減衰の確保が構造計画の鍵。
- 固有周期が長いため、長周期地震動との共振への配慮が重要。