構造計算の実務 公開日:2026年6月15日 更新日:2026年7月3日

一次設計とは?震度との関係と二次設計との違い

一次設計とは?震度との関係と二次設計との違い

一次設計とは、建物の供用期間中に数回は遭遇しうる中規模の地震に対して、建物が損傷しない(使い続けられる)ことを確かめる設計です。英語では「serviceability design(使用性設計)」に近い位置づけで語られることもあり、許容応力度計算が中心的な検証方法になります。建築基準法における構造計算は、この一次設計と、後述する二次設計の2段階でチェックする仕組みになっており、両者をあわせて理解することで、なぜ日本の建物が地震に強いのかが見えてきます。

この記事の要点
  • 一次設計は「中地震で損傷しない」ことを、許容応力度計算で確かめる設計。
  • 想定する地震力は標準せん断力係数 C₀=0.2 を用いて求める。
  • 「倒壊させない」ことを目標とする二次設計とは目的も方法も異なる。
中地震(数十年に一度) 一次設計:損傷させない 大地震(数百年に一度) 二次設計:倒壊させない
構造計算の2段階。一次設計=中地震で損傷させない、二次設計=大地震で倒壊・崩壊させない。

一次設計の意味

一次設計では、地震や風などの外力(荷重)によって各部材に生じる応力度が許容応力度以下であることを確認します。応力度とは部材の断面に単位面積あたりどれだけの力が働いているかを表す量で、これが材料ごとに定められた許容応力度を超えなければ、部材は弾性範囲内にとどまり、目に見える損傷や残留変形を残さずに元の状態へ戻ります。つまり一次設計は、地震後も建物をそのまま使い続けられるかどうかを判定する設計段階といえます。あわせて、たわみや層間変形角が過大にならないかも確認し、使い勝手や仕上げ材への影響がないかをチェックします。

震度との関係

POINT

一次設計が想定するのは、まれに起こる中地震(震度5強程度)です。地震力は標準せん断力係数 C₀=0.2 を用いて計算します(地震力=重量×係数)。この地震に対しては「無被害(許容応力度以内)」が目標です。

ここでいう「中地震」は、数十年に一度程度の頻度で遭遇しうる地震を指し、建物の供用期間中に何度か経験する可能性がある規模です。これに対して、標準せん断力係数C₀を0.2とするのは、建物の重量のおおむね2割に相当する水平力を想定していることを意味します。実際の設計用地震力は、これに地域係数や振動特性係数、建物重量などを掛け合わせて各階ごとに算出します。

二次設計との違い

一次設計二次設計
想定地震中地震(震度5強程度)大地震(震度6強〜7)
目標損傷しない倒壊・崩壊しない
係数C₀=0.2C₀=1.0相当
方法許容応力度計算保有水平耐力計算など

一次設計と二次設計は、同じ「地震に対する安全確認」でも守るものが異なります。一次設計は建物の資産価値や使用継続性を守るための検討で、二次設計は人命を守るための最終防衛ラインという位置づけです。規模の小さな建物では二次設計が省略され、仕様規定を満たすことで安全性を担保する仕組みになっている点も特徴です。

実務における一次設計の位置づけ

実務では、構造計算ルートを選ぶ段階で一次設計・二次設計のどちらまで必要かが決まります。小規模な木造住宅などでは仕様規定の遵守で足りることが多い一方、中高層の建物や規模の大きな建物では、一次設計に加えて二次設計(保有水平耐力計算や層間変形角の確認など)が必要になります。設計の順序としては、まず固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風荷重・地震荷重などの荷重を整理し、次に一次設計で部材断面を仮定して応力度を確認し、必要に応じて二次設計へ進むという流れが一般的です。この積み重ねによって、日常的な使用性と、まれに起こる大地震への耐性という2つの性能を段階的に確保しています。

注意

一次設計だけをクリアしていても、大地震に対する安全性が確認されたことにはなりません。建物の規模・用途によって二次設計の要否が変わるため、どの計算ルートに該当するかを設計初期の段階で確認しておくことが重要です。

よくある質問

Q1. 一次設計だけで建物は建てられますか?

建物の規模や構造種別によっては、一次設計(許容応力度計算)と仕様規定の遵守のみで建築確認を受けられる場合があります。ただし規模が大きくなると、二次設計まで行うことが法令上求められます。

Q2. C₀=0.2はどんな建物にも共通ですか?

標準せん断力係数の基本値は0.2ですが、地盤の状況や建物の振動特性、地域による地震の起こりやすさなどを考慮する係数を掛け合わせるため、最終的に採用する設計用地震力は建物ごとに異なります。

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実務のワンポイント

一次設計で実際に厳しくなるのは、応力度そのものより変形のほうが多いというのが私の実感です。鉄骨造の大スパン梁は断面を絞ると応力度には余裕が残っても、たわみや層間変形角が1/200を超えてしまい、結局は梁せいを上げ直す羽目になります。応力度と変形は必ずセットで見るようにしています。

まとめ

  • 一次設計は中地震(震度5強程度)で損傷しないことを確かめる設計。
  • 許容応力度計算で、応力度を許容値以内に収める。C₀=0.2。
  • 大地震に対する二次設計(倒壊させない)と目的が異なる。
  • 建物の規模によって、一次設計のみで足りるか二次設計まで必要かが変わる。