構造力学の基礎 更新日:2026年6月12日

座屈とは?オイラーの公式と座屈長さをわかりやすく解説

細い物差しを両手で押すと、折れる前にふっと横にはらみます。これが座屈です。細長い圧縮材は、材料の強度に達するずっと手前で、横にはらんで耐力を失ってしまいます。柱やブレースの設計で必ず検討する、圧縮材の最重要テーマです。

座屈は「強度」ではなく「剛性」の問題

座屈は材料が壊れる現象ではなく、まっすぐな状態を保てなくなる不安定現象です。そのため座屈荷重は材料の強度(F値)には関係なく、曲げにくさ(EI)と長さで決まります。

オイラーの座屈荷重 Pe = π²EI / Lk² Pe:弾性座屈荷重(N)/ E:ヤング係数(N/mm²)/ I:断面二次モーメント(mm⁴)/ Lk:座屈長さ(mm)

式から読み取れるポイントは3つです。

  • 長さの2乗で効く:座屈長さが2倍になると座屈荷重は1/4。
  • I は弱いほうの軸で決まる:部材は曲げにくい方向ではなく、曲げやすい方向(弱軸まわり)に座屈する。
  • 強度 F は式に入っていない:SS400を高強度鋼に変えても座屈荷重は上がらない(Eは鋼種によらず一定のため)。

座屈長さ Lk:支持条件で決まる「実質の長さ」

同じ長さの柱でも、端部の固定度によって座屈のしやすさは大きく変わります。これを「座屈長さ」という仮想の長さに換算して扱います。

両端ピン Lk = L 両端固定 Lk = 0.5L 固定+ピン Lk = 0.7L 固定+自由 Lk = 2L

図:端部の拘束が強いほど座屈長さは短くなり、座屈しにくくなる

支持条件座屈長さ Lk座屈荷重(両端ピン比)
両端固定0.5L4倍
一端固定・他端ピン0.7L約2倍
両端ピンL1(基準)
一端固定・他端自由2L1/4

細長比 λ:座屈しやすさの指標

実務では、座屈のしやすさを細長比 λで評価し、λ に応じて許容圧縮応力度を低減します。

λ = Lk / i ( i = √(I/A):断面二次半径 ) λが大きい=細長い=座屈しやすい。鋼構造では柱の細長比を200以下(一般部材は250以下)に制限。

断面二次半径 i は断面性能計算ツールで自動計算できます。λ には弱軸まわりの i(小さいほうの値)を使う点に注意してください。

POINT(試験頻出)
  • 座屈荷重は EI に比例し、Lk² に反比例する。
  • 座屈は弱軸まわりに生じる。H形鋼の柱で弱軸方向に胴縁や間柱で拘束するのはこのため。
  • 材料強度を上げても座屈荷重は変わらない。効くのは断面形状(I)と座屈長さ。
  • ブレースの圧縮側が座屈で効かなくなるため、ブレース構造では引張側だけを当てにする設計(引張ブレース)も多い。
あわせて確認

座屈荷重を左右する I の意味は「断面二次モーメントとは?」、E については「応力度とひずみ度・ヤング係数」をどうぞ。

まとめ

  • 座屈は細長い圧縮材が横にはらんで耐力を失う不安定現象。強度ではなく剛性(EI)の問題。
  • オイラー式 Pe = π²EI/Lk²。座屈長さは両端固定0.5L〜一端固定他端自由2L。
  • 細長比 λ = Lk/i で座屈しやすさを評価し、許容圧縮応力度を低減する。