基礎構造 更新日:2026年6月21日

ストラット・タイモデルとは?偏心基礎フーチングの検討と無料Excel

ストラット・タイモデルは、コンクリートの中を流れる力を、シンプルな『骨組み(トラス)』に置きかえて考える方法です。特に杭が柱の真下からずれた「偏心基礎」のフーチング検討で役立ちます。この記事では、考え方・検討が必要になる場面・検討用Excel(無料ダウンロード)の使い方を、実務目線で解説します。

この記事の要点
  • ストラット・タイモデルは、コンクリート内の力をストラット(圧縮材)=コンクリート/タイ(引張材)=鉄筋のトラスに置き換える方法。
  • 検討が必要になるのは、おもに基礎が偏心している場合(柱芯と杭芯がずれている)。
  • 記事末で、ストラット・タイモデルの検討用Excelを無料配布しています。

ストラット・タイモデルとは?

ストラット・タイモデルは、コンクリートの中を流れる力を、シンプルな『骨組み(トラス)』に置きかえて考える方法です。2つの部材でモデル化します。

部品はたらき実際のもの
ストラット(圧縮材)押される力を伝える「つっぱり棒」コンクリート(ななめの圧縮)
タイ(引張材)引っぱられる力を受け持つ「ひも」鉄筋(下端の主筋)

フーチングでは、柱からの力がコンクリートのななめのつっぱり棒(ストラット)を通って杭へ流れます。すると杭の上では外向きに広がろうとする力が生まれるので、それを下端の鉄筋(タイ)が『ひも』のように引っぱって、ぐっと押さえこみます。

ストラット・タイモデルの概念図。柱軸力がストラット(コンクリートの圧縮力)を通って杭支持力へ流れ、タイ(鉄筋の引張力)が広がりを押さえる
図1 ストラット(圧縮)とタイ(引張)の力の流れ(概念図)

検討が必要な場合(偏心基礎)

柱の真下に杭がある基礎では、柱からの力が直接杭へ流れます。このような素直な力の流れなら、基本的に基礎フーチングに大きなせん断力は発生しません。

ところが、敷地境界や隣の建物との関係で、杭を柱の真下に置けないことがあります。柱の中心と杭の中心が横にずれている――これが「偏心している基礎」です。この場合、柱の力はまっすぐ下へ流れず、大きなせん断力が発生して、基礎フーチングの設計が非常に厳しくなります。

そこで役立つのがストラット・タイモデルです。「力がどこを通って杭へ届くか」という実際の流れに沿って骨組みをえがき、それに合わせて鉄筋を配置します。

  • ストラット(つっぱり棒=コンクリート)が、柱からかたよった杭へ向かうななめの力の道すじをそのまま表す。
  • タイ(ひも=鉄筋)が、その横ずれによって生じる引っぱりの力を受け持つ。

つまり、力がねじれて流れる偏心基礎でも、「どこを押して、どこを引っぱるか」を正直にモデル化できるのが強みです。

検討用Excelの使い方ガイド

1. このシートの目的

RC規準2018に倣い、柱から杭への軸力伝達において「ストラット・タイモデル」を用いて、ストラット(斜め圧縮材)に生じる圧縮応力度 σ が、コンクリートの許容圧縮応力度 fc 以下であること(σ < fc)を確認するための計算シートです。検討軸力は1F柱軸力と1F床荷重の合計(支点反力−基礎自重)とします。

2. 使い方の基本(3ステップ)

  • STEP1 水色(薄い青)の入力欄に数値を入力します。
  • STEP2 「自動計算」の欄は数式が入っているため、触らずにそのままにします。
  • STEP3 一番下の「判定」欄を確認します。OK なら安全、NG なら断面などを見直します。

3. 入力する項目(①〜⑩)

検討表の中で、次の項目に数値を入力します(G列。複数検討する場合はH列以降も同様)。

No.入力項目セル内容・単位
基礎符号・位置G26・G27検討する基礎の名称と位置(例:F2A、SY1/SX1)
NL(長期軸力)G28[kN] 1F柱の長期軸力+1F床荷重
NE(地震時軸力)G29[kN] 地震時に加わる軸力
基礎自重G30[kN] 基礎自身の重量
梁せい DG31[mm] 基礎梁のせい
dtG32[mm] 主筋重心までの距離
偏心距離 eG34[mm] 柱杭芯距離(施工誤差100mmを考慮)
柱幅G39[mm]
柱せいG40[mm]
コンクリート強度 FcG44[N/mm²] 設計基準強度

4. 自動で計算される項目

以下は数式により自動計算されます。入力は不要です。

自動計算項目計算式説明
j=(D−dt)×7/8ストラットのせい
sinθ=j/√(j²+e²)ストラットの傾斜角
ストラットの圧縮軸力 C長期=(NL−自重)/sinθ/短期=(NL−自重+NE)/sinθストラットに生じる圧縮力
ストラットの断面積 As=柱幅×柱せい×0.8有効断面積
ストラットの圧縮応力度 σ=C×1000/(As×sinθ)応力度(これを判定に使用)
長期/短期 許容応力度長期=Fc/3/短期=Fc/3×2許容できる応力度の上限

5. 判定の見方

  • 判定(長期) σ(長期)< 長期許容応力度(Fc/3) であれば OK
  • 判定(短期) σ(短期)< 短期許容応力度(Fc/3×2) であれば OK

NG の場合の対処:柱断面(柱幅・柱せい)を大きくする/偏心距離 e を小さくする/コンクリート強度 Fc を上げる、などにより応力度 σ を下げて再検討します。

6. 補足

  • 別の基礎も検討したいときは、H列をコピーして右の列(I列・J列…)に貼り付け、値を変えます。
  • 単位は各行のセル([kN]・[mm]・[N/mm²])に合わせて入力してください。
  • 数式セルを誤って消した場合は、隣の列からコピーして戻せます。

検討用Excelの無料ダウンロード

無料ダウンロード

ストラット・タイモデル 検討用Excel

上で解説した検討シート(footing_stm.xlsx)を無料でダウンロードできます。水色の入力欄に数値を入れるだけで、ストラットの圧縮応力度 σ と判定(σ<fc)を確認できます。

※ Microsoft Excel(.xlsx)。計算結果は設計者ご自身の責任でご確認のうえご使用ください。

ご利用にあたって

本記事とExcelは、ストラット・タイモデルの考え方を理解するための解説資料です。実際の設計では、採用する基準(RC規準ほか)や条件に応じた確認が必要です。Excelの計算結果は設計者ご自身の責任でご確認のうえご使用ください。

参考文献

  • 鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(2024)(日本建築学会)
  • 大阪府 構造計算適合性判定 指摘事例集(PDF

まとめ

  • ストラット・タイモデルは、コンクリート内の力をストラット(圧縮=コンクリート)とタイ(引張=鉄筋)のトラスで表す方法。
  • 特に偏心基礎のフーチングで、力の流れに沿って鉄筋を配置できるのが強み。
  • 検討用Excelで、ストラットの圧縮応力度σが許容値以下(σ<fc)かを手早く確認できる。
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