構造計算の実務 公開日:2026年7月10日 更新日:2026年7月12日

剛床とは?剛床仮定と床面内せん断力の検討をわかりやすく解説【無料Excel】

剛床とは?剛床仮定と床面内せん断力の検討(床が地震力を耐震壁へ伝える仕組みの図解記事)

地震に強い建物をつくるには、柱や壁をバランスよく配置することが大切です。しかし、いくら柱や壁だけを強くしても、うまくいかないことがあります。建物の重量の大半は屋根や床に集中し、地震の力は各部の重量に比例して生じます。屋根や床に生じた地震力を柱や壁まで伝達できなければ、どれだけ強い柱や壁があっても意味がありません。そのためには、力の通り道となる床が強く、硬い必要があります。この記事では、構造計算の基礎の基礎である剛床仮定と、それが成り立つために必要な床面内せん断力の検討を、図解と無料Excelでわかりやすく解説します。

この記事の要点
  • 剛床仮定とは、床が面内で変形しないほど硬いと仮定して構造計算を簡略化する考え方。
  • この仮定が成り立つには、地震力を伝える過程で生じる床面内せん断力をスラブが負担できる必要がある。
  • 記事末で1階床スラブの面内せん断検討に使える無料Excelを配布しています。

床の役割(重力・地震力への抵抗)

① 重力(鉛直荷重)に抵抗する

骨組となる柱や梁は「線」の部材なので、それだけでは空間をつくれません。骨組の上に床を設けて「面」を構成します。床は、その上にいる人・家具・その他すべての重量を梁まで伝える役割を担い、床が抜けたりたわみが過大にならないよう、ある程度の厚さが必要です。ここまでは、多くの方が認識している床の役割でしょう。

② 地震の力に抵抗する(水平力の伝達)

室内にあるもののほとんどが床の上に載っており、床自体にも重量があるため、建物重量の大部分が床に集中しています。地震力は重量に比例するため、地震時に床には大きな力が生じ、この力を柱や耐震壁まで伝達しなければなりません。さらに、柱や壁が上下階でずれている場合には、床は「上の階の壁から下の階の壁へ」「柱から柱へ」力を渡す通り道にもなり、場合によっては壁と同程度の性能が要求されます。

剛床仮定とは

建物の安全性を確かめる構造計算は、さまざまな仮定のうえに成り立っています。その中でも特に重要なのが剛床仮定です。簡単に言えば「建物の床がとても硬く、力が加わっても(面内方向に)変形しない」という仮定です。

地震が起こると、建物の各部(各節点)は前後・左右・上下の3方向に動き、それぞれの方向に回転もできるため、1点あたり6方向(6つの自由度)の成分があります。部材の数×6方向について答えを求めるため、本来は膨大な計算量になります。しかし床が非常に硬くて変形しないのであれば、同じ床につながる部材は一体となって同じ動きをするとみなせます。すると考慮すべき方向が大幅に減り、解析が非常に簡単になります。この仮定のおかげで、構造計算に要する時間が大きく短縮されるのです。

POINT

剛床仮定は「計算を楽にする便利な仮定」ですが、実際に床が十分硬いことが前提です。床の硬さが仮定とかけ離れていると計算結果は信頼できません。だからこそ、剛床が成り立つことを床面内せん断力の検討で裏づける必要があります。

RC造の床と木造の床(根太工法・剛床工法)

RC造の床

鉄筋コンクリート造(RC造)の建物は床も鉄筋コンクリートで、鉄骨造でも床は鉄筋コンクリートとするのが一般的です。RCスラブは施工性・耐久性・耐火性に優れ、剛床仮定を成立させるだけの硬さ・強さを備えています。ただし、分厚い壁が多い高層建物や吹き抜けの多い建物では、剛床とみなせなくなる場合もあり、その際は個別の検討が必要です。

木造の床(根太工法・剛床工法)

木造では床の作り方によって面内の硬さが大きく変わります。従来の根太(ねだ)工法は根太の上に床板を張る方式で、面内のせん断剛性は高くありません。一方、厚い構造用合板を梁・土台に直接留め付ける剛床工法(根太レス工法)は、床面が一体の面材として働き、面内せん断剛性が高く、水平力を耐力壁へ確実に伝えられます(→床組)。近年の木造で剛床工法が主流なのは、この面内剛性の確保が耐震上きわめて重要だからです。

壁と床のバランス/1階床にも剛床は必要か

耐震設計では耐震壁の量とバランスが注目されがちですが、その力を集めて壁へ渡すのは床です。壁だけを強くしても、床が力を運べなければ性能を発揮できません。「強い壁」と「力を運べる床」は両輪の関係にあります。

また、上階の床だけでなく1階床にも面内せん断の検討が必要になる場合があります。たとえばRC造マンションで、張間方向が耐震壁・両妻がラーメン架構のように、各フレームの負担せん断力に差がある場合、杭は「1階床が剛床である」という仮定のもとに剛比分配されています。この負担力の差を1階床スラブが伝達できることを確認しなければ、剛床仮定が崩れてしまうのです。次章で具体的な検討方法を見ていきましょう。

床面内せん断力の検討

ここでは、剛床仮定を裏づけるための床面内せん断力の考え方と算定手順を整理します。

床(水平ダイアフラム)を上から見た図 地震力(床全体に分布して作用) 耐震壁 EW 耐震壁 EW 床面内にせん断力が生じる (床が“横向きの深い梁”のように働く) 床が地震力を集め、両側の耐震壁へ伝達する。その通り道で面内せん断力が生じる。
床面内せん断力の概念。床(ダイアフラム)は水平の梁のように働き、地震力を耐震壁へ伝える。その過程で床面内にせん断力が生じる。

① 床面内せん断力とは

X方向の地震(X加力)を考えます。RC架構で、ある通りに耐震壁(EW)があると、その壁は大きな地震力を負担します。負担する地震力は、床面を介して壁へと集まってきます。このとき床面(スラブ)内に生じるせん断力が「床面内せん断力」です。

② 力の流れの向き

力の流れは階ごとに向きが変わります。たとえば2階にY1・Y3通りに耐震壁があれば、RF床面ではその壁に向かって面内せん断力が生じます。逆に1階にY2通りの耐震壁があれば、2F床面ではRFとは逆向きに面内せん断力が生じます。どの通りに壁があるかで、床面内せん断力の向きが決まります。

③ 床面内せん断力Qの算定

床面内せん断力Qは、次の(1)と(2)の差として求めます。

床面内せん断力 Q = Q(1) − Q(2) Q(1):剛床で解析した応力解析結果での各通りせん断力/Q(2):当該階の各通りの重量×震度 + その通りの上階のせん断力

(2)で上階のせん断力を加えているのは、上階のせん断力は移動せず、そのまま下階へ降りてくるためです。下の通りから順に ΣQ(1)・ΣQ(2) を積み上げていき、その差分から床面内せん断力の大きさと向きが決まります。

④ 検定(照査)

算定した床面内せん断力が、スラブのせん断耐力以下であることを確認します。

床面内せん断力 Q ≦ スラブのせん断耐力

実際にはスラブ厚と有効せいから断面積Aを求め、生じるせん断応力度 τ=QD/A が、コンクリート強度Fcから定まる許容せん断応力度 sfc 以下であることを確認します。なお、これは剛床が成り立つ場合のスラブ耐力検討である点に注意してください(一次設計での確認)。

床面内せん断検討Excelの無料ダウンロード

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1階床スラブ 面内せん断検討 Excel

杭は「1階床が剛床」という仮定のもとに剛比分配されています。たとえばRC造マンションで張間方向が耐震壁・両妻がラーメン架構の場合、各フレームの負担せん断力に差があるため、1階床でせん断力の移行が発生します。本Excelは、その移行せん断力に対して1階スラブが許容せん断耐力以下であることを確認する検討シートです(一次設計)。1層地震用重量・基礎部水平震度・各フレームの杭負担水平力・スパン・スラブ厚・Fcなどを入力すると、移行せん断力とτ・sfcを算定できます。

※ Microsoft Excel(.xlsx)。計算結果は設計者ご自身の責任でご確認のうえご使用ください。

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実務のワンポイント

私が構造計算書をチェックするとき、耐震壁が特定の通りに偏った建物では真っ先に床面内せん断の検討を探します。応力解析は剛床で回っていても、その力をスラブが本当に運べるかは別問題で、開口の多いスラブや細長い床は要注意です。壁の量ばかり気にして「床が力を運べるか」を見落とすと、剛床仮定そのものが崩れてしまいます。

ご利用にあたって

本記事とExcelは、剛床仮定と床面内せん断力の考え方を理解するための解説資料です。実際の設計では、採用する基準・指針や条件に応じた確認が必要です。計算結果は設計者ご自身の責任でご確認のうえご使用ください。

よくある質問

Q1. 剛床仮定は必ず使わなければいけませんか?

必須ではありませんが、実務ではほとんどのRC造・S造で剛床仮定を用います。床を剛とみなすことで自由度が減り、解析が現実的な時間で行えるためです。吹き抜けが大きい・平面が細長い・スラブに大きな開口があるなど剛床が疑わしい場合は、床の面内変形を考慮した解析(非剛床・弾性床)や、本記事のような面内せん断の検討で妥当性を確認します。

Q2. 床面内せん断力の向きはどう決まりますか?

どの通りに耐震壁があるかで決まります。壁のある通りに向かって床面内せん断力が集まります。上下階で壁の位置が変わると床面内せん断力の向きも変わるため、下の通りから順にΣQ(1)・ΣQ(2)を積み上げ、その差分の符号(向き)と大きさを確認します。

Q3. 1階の床にも検討が必要なのはなぜですか?

杭の負担せん断力を「1階床は剛床」という前提で剛比分配しているためです。各フレームの負担力に差があると、その差分が1階床スラブを介して伝達されます。この移行せん断力にスラブが耐えられなければ前提が崩れるので、1階床でも面内せん断の検討が必要になります。

まとめ

  • は重力を梁へ伝えるだけでなく、地震力を集めて耐震壁・柱へ伝達する重要な部材。
  • 剛床仮定は「床が面内で変形しない」とみなして計算を簡略化する仮定。使うには床が実際に硬い必要がある。
  • 剛床が成り立つことを裏づけるのが床面内せん断力の検討。Q=Q(1)−Q(2)で算定し、スラブのせん断耐力以下であることを確認する。
  • 耐震壁が偏った建物では1階床でも移行せん断力の検討が必要。記事末のExcelで確認できます。
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