構造力学の基礎 公開日:2026年6月12日 更新日:2026年7月22日

固有周期と共振とは?建物の揺れの基礎をわかりやすく解説

固有周期と共振とは?建物の揺れの基礎をわかりやすく解説

建物にはそれぞれ「揺れやすいリズム」があります。これが固有周期です。地震の揺れのリズムと建物のリズムが一致すると、揺れがどんどん大きくなる共振が起きます。耐震設計・免震設計の根っこにある、振動の基礎を押さえましょう。

固有周期 T とは

小さく速く揺れる 低い・硬い = 周期が短い 大きくゆっくり揺れる 高い・柔らかい = 周期が長い
固有周期のイメージ。建物が高く(柔らかく)なるほど、ゆっくり大きく揺れる=固有周期が長くなる。

建物を横に押して手を離すと、建物は一定のリズムで左右に揺れます。1往復にかかる時間(秒)が固有周期 T です。1質点系(おもり+バネのモデル)では次式で表されます。

T = 2π √( m / k ) T:固有周期(秒)/ m:質量/ k:水平剛性(硬さ)。重いほど周期は長く、硬いほど周期は短い。
  • 重い建物ほど周期が長い(ゆっくり揺れる)。
  • 硬い建物ほど周期が短い(小刻みに揺れる)。
  • 高い建物ほど柔らかくなるため、高層ほど周期は長い

建物の高さからの概算式

設計の初期段階では、建物高さ h(m)から固有周期を概算します(建築基準法の略算式)。

RC造(壁が多く硬い):T ≒ 0.02 h / S造(柔らかい):T ≒ 0.03 h 例:高さ30mのRC造マンション → T≒0.6秒。高さ200mのS造超高層 → T≒6秒。

共振:リズムが合うと揺れが増幅する

ブランコを押すとき、ブランコの揺れのリズムに合わせて押すと、小さな力でもどんどん大きく揺れます。これが共振です。建物でも同じことが起き、地震動の卓越周期と建物の固有周期が近いと、応答(揺れ)が数倍に増幅されます。

共振の実例
  • 1985年メキシコ地震:軟弱地盤の卓越周期(約2秒)と中高層建物の周期が一致し、10〜15階建てに被害が集中した。
  • 長周期地震動:巨大地震では周期2〜10秒のゆっくりした揺れが遠方まで伝わり、固有周期の長い超高層ビルだけが大きく長時間揺れる。2011年東北地方太平洋沖地震では大阪の超高層が大きく揺れた。

設計への応用:周期を「ずらす」「吸収する」

  • 免震:積層ゴムで建物の周期を3〜5秒に伸ばし、一般的な地震動の卓越周期(0.1〜1秒程度)から外す。「耐震・制震・免震の違い」参照。
  • 制震:共振しても揺れのエネルギーをダンパーで吸収し、増幅を抑える(減衰を増やす)。
  • 地盤との相性:硬い地盤は短周期、軟弱地盤は長周期の揺れが卓越する。軟弱地盤×長周期の建物は共振リスクが高く、基準法でも地盤種別(第1種〜第3種)に応じて設計用地震力が変わる。

振動の基礎用語ミニ整理

用語意味
固有周期 T建物が1往復揺れるのにかかる時間(秒)
固有振動数 f1秒あたりの往復回数。f = 1/T(Hz)
卓越周期地震動・地盤で最も強く現れる揺れの周期
減衰揺れが自然に小さくなっていく性質。ダンパーで増やせる
1次・2次モード揺れ方の形。1次は全体が同方向、高次はくねるように揺れる
あわせて確認

剛性 k を決めるのは部材の EI。「断面二次モーメント」「ヤング係数」とつなげて理解すると、固有周期の式が腑に落ちます。

実務のワンポイント

略算式T≒0.02h・0.03hはあくまで初期検討用の目安で、実際の固有周期は保有水平耐力計算時の固有値解析で確定します。略算値と解析値が大きくずれるときは、袖壁や垂れ壁を剛性にどう反映させているかなど、モデル化の前提を疑うようにしています。

共振で揺れが増幅する仕組み(図解)

共振がなぜ危険なのか、地震動の周期と建物の周期の関係をグラフで見てみましょう。

周期が一致すると揺れが増幅する 建物の固有周期 → 揺れの 大きさ 地震動の卓越周期 減衰が小さい → 大きく増幅 減衰が大きい → 増幅が抑えられる 周期をずらす(免震)か、減衰を増やす(制震)ことで揺れを抑える
建物の固有周期が地震動の卓越周期に近いほど揺れが増幅される。免震は周期を右へずらし、制震は減衰を増やして山を低くする技術。

グラフの山が示すように、周期が一致した状態では、揺れが数倍に増幅されます。これを避ける方法は2つあります。①周期をずらす(免震)か、②減衰を増やして山そのものを低くする(制震)かです。制震ダンパーが「揺れを吸収する」といわれるのは、この減衰を人為的に増やしていることを指します。

減衰とは何か

減衰は、揺れのエネルギーが熱などに変わって失われ、振動が徐々に収まっていく性質です。減衰が大きいほど、揺れは早く止まります。

建物の種類減衰定数の目安揺れの収まり方
鉄骨造(S造)約2%揺れが長く続きやすい
鉄筋コンクリート造(RC造)約3〜5%S造より早く収まる
制震装置を設けた建物10〜20%程度大幅に早く収まる
免震建物20〜30%程度(免震層)ゆっくり揺れて短時間で収まる

RC造がS造より減衰が大きいのは、コンクリートのひび割れや内部摩擦がエネルギーを消費するためです。S造の建物が「揺れを感じやすい」といわれるのは、剛性が低いことに加えて、減衰が小さく揺れが長引くことにも理由があります。制震ダンパーがS造の超高層で多用されるのは、この小さい減衰を人為的に補う意味があります。

よくある質問

Q1. 固有周期が長いほうが地震に有利なのですか?

一般的な地震動に対しては有利です。日本の内陸型地震の主要な周期成分は0.1〜1秒程度なので、建物の周期がそれより長ければ共振を避けられ、建物に作用する加速度(=地震力)も小さくなります。基準法のRtが周期の長い建物ほど小さくなるのはこのためです。ただし、周期2〜10秒の長周期地震動に対しては、超高層や免震建物のほうがむしろ共振しやすくなるため、一概に有利とは言えません。

Q2. 同じ高さの建物でも固有周期が違うことはありますか?

あります。固有周期は質量と剛性で決まるため、同じ高さでも構造種別や耐震壁の量によって変わります。壁の多いRC造は硬く周期が短くなり、柱と梁だけのS造ラーメンは柔らかく周期が長くなります。基準法の略算式でRC造をT=0.02h、S造をT=0.03hと分けているのは、この違いを反映したものです。

Q3. 建物の固有周期は実際に測れるのですか?

測れます。常時微動測定という方法で、地面や建物が常に受けているごくわずかな振動(交通振動や風など)を高感度の測定器で記録し、その周波数成分を分析することで固有周期を求めます。耐震診断や、大地震後の建物の健全性確認にも用いられ、設計時の想定値と実測値を比較することで、建物の剛性が想定どおりかを検証できます。

まとめ

  • 固有周期は建物固有の揺れのリズム。T = 2π√(m/k)。重いほど長く、硬いほど短い。
  • 概算は RC造 T≒0.02h、S造 T≒0.03h。高層ほど周期が長い。
  • 地震動の卓越周期と一致すると共振して揺れが増幅。免震は「周期をずらす」、制震は「減衰を増やす」技術。