構造力学の基礎 更新日:2026年6月12日

固有周期と共振とは?建物の揺れの基礎をわかりやすく解説

建物にはそれぞれ「揺れやすいリズム」があります。これが固有周期です。地震の揺れのリズムと建物のリズムが一致すると、揺れがどんどん大きくなる共振が起きます。耐震設計・免震設計の根っこにある、振動の基礎を押さえましょう。

固有周期 T とは

建物を横に押して手を離すと、建物は一定のリズムで左右に揺れます。1往復にかかる時間(秒)が固有周期 T です。1質点系(おもり+バネのモデル)では次式で表されます。

T = 2π √( m / k ) T:固有周期(秒)/ m:質量/ k:水平剛性(硬さ)。重いほど周期は長く、硬いほど周期は短い。
  • 重い建物ほど周期が長い(ゆっくり揺れる)。
  • 硬い建物ほど周期が短い(小刻みに揺れる)。
  • 高い建物ほど柔らかくなるため、高層ほど周期は長い

建物の高さからの概算式

設計の初期段階では、建物高さ h(m)から固有周期を概算します(建築基準法の略算式)。

RC造(壁が多く硬い):T ≒ 0.02 h / S造(柔らかい):T ≒ 0.03 h 例:高さ30mのRC造マンション → T≒0.6秒。高さ200mのS造超高層 → T≒6秒。

共振:リズムが合うと揺れが増幅する

ブランコを押すとき、ブランコの揺れのリズムに合わせて押すと、小さな力でもどんどん大きく揺れます。これが共振です。建物でも同じことが起き、地震動の卓越周期と建物の固有周期が近いと、応答(揺れ)が数倍に増幅されます。

共振の実例
  • 1985年メキシコ地震:軟弱地盤の卓越周期(約2秒)と中高層建物の周期が一致し、10〜15階建てに被害が集中した。
  • 長周期地震動:巨大地震では周期2〜10秒のゆっくりした揺れが遠方まで伝わり、固有周期の長い超高層ビルだけが大きく長時間揺れる。2011年東北地方太平洋沖地震では大阪の超高層が大きく揺れた。

設計への応用:周期を「ずらす」「吸収する」

  • 免震:積層ゴムで建物の周期を3〜5秒に伸ばし、一般的な地震動の卓越周期(0.1〜1秒程度)から外す。「耐震・制震・免震の違い」参照。
  • 制震:共振しても揺れのエネルギーをダンパーで吸収し、増幅を抑える(減衰を増やす)。
  • 地盤との相性:硬い地盤は短周期、軟弱地盤は長周期の揺れが卓越する。軟弱地盤×長周期の建物は共振リスクが高く、基準法でも地盤種別(第1種〜第3種)に応じて設計用地震力が変わる。

振動の基礎用語ミニ整理

用語意味
固有周期 T建物が1往復揺れるのにかかる時間(秒)
固有振動数 f1秒あたりの往復回数。f = 1/T(Hz)
卓越周期地震動・地盤で最も強く現れる揺れの周期
減衰揺れが自然に小さくなっていく性質。ダンパーで増やせる
1次・2次モード揺れ方の形。1次は全体が同方向、高次はくねるように揺れる
あわせて確認

剛性 k を決めるのは部材の EI。「断面二次モーメント」「ヤング係数」とつなげて理解すると、固有周期の式が腑に落ちます。

まとめ

  • 固有周期は建物固有の揺れのリズム。T = 2π√(m/k)。重いほど長く、硬いほど短い。
  • 概算は RC造 T≒0.02h、S造 T≒0.03h。高層ほど周期が長い。
  • 地震動の卓越周期と一致すると共振して揺れが増幅。免震は「周期をずらす」、制震は「減衰を増やす」技術。