構造計算の実務 公開日:2026年7月22日 更新日:2026年7月22日

地震力の算定方法とは?Z・Rt・Ai・C0の意味と層せん断力係数をわかりやすく解説【無料Excel】

地震力の算定方法とは?Z・Rt・Ai・C0の意味と層せん断力係数をわかりやすく解説【無料Excel】

建物の耐震設計では、まず「地震のときに各階へどれだけの水平力が働くか」を求めることから始まります。この水平力が地震力です。建築基準法では、地震力を層せん断力という形で階ごとに算定し、その大きさは地震層せん断力係数 Ci=Z・Rt・Ai・C0 という4つの係数の積で決まります。名前だけ見ると難しそうですが、一つひとつは「地域」「地盤と建物の揺れやすさ」「高さ方向の分布」「地震の強さ」を表しているだけです。この記事では、地震力の算定方法とZ・Rt・Ai・C0の意味を図解でかみくだき、記事末でAi分布算出Excelを無料配布します。基礎的な全体像は「地震力の計算方法」もあわせてご覧ください。

この記事の要点
  • 各階の地震力(層せん断力)は Qi=Ci×Wi。Ciは Z・Rt・Ai・C0 の積。
  • Z=地域、Rt=地盤と周期、Ai=高さ方向の分布、C0=地震の強さ(一次0.2/二次1.0)。
  • 記事末で Ai分布算出Excel を無料配布。地下部分の地震力(水平震度k)も解説します。

地震力はどこに作用するのか(層せん断力)

地震のとき、建物を横に揺らそうとする力は、重量の集まっている各階の床の位置に働くと考えます。ある階より上にある部分の地震力をすべて足し合わせ、その階が下の階へ伝える水平力を層せん断力 Qi と呼びます。層せん断力は次の式で求めます。

Qi = Ci × Wi Qi:i階の層せん断力/Ci:i階の地震層せん断力係数/Wi:i階から上の地震用重量の合計
各階の地震力と層せん断力 Qi 各階に働く地震力(上階ほど大きい) 層せん断力 Qi 下階ほど累積 地震力は各階に分かれて働き、下の階ほど上階分が積み重なって大きくなる。
地震力は各階に分かれて作用し、層せん断力Qiは上階分を累積するため下階ほど大きくなる。上階の地震力が相対的に大きくなる度合いを表すのがAi分布。

地震層せん断力係数 Ci=Z・Rt・Ai・C0

層せん断力の大きさを決めるのが地震層せん断力係数 Ci です。Ciは次の4つの係数の積で表されます。

Ci = Z ・ Rt ・ Ai ・ C0 Z:地域係数/Rt:振動特性係数/Ai:高さ方向の分布係数/C0:標準せん断力係数

それぞれが独立した役割を持っており、「その土地(Z)で」「その地盤とその建物が(Rt)」「どの高さで(Ai)」「どのくらいの強さの地震(C0)」を受けるか、を表しています。以下、C0から順に見ていきましょう。

標準せん断力係数 C0 の意味

標準せん断力係数 C0 は、想定する地震の強さを表す基準値です。設計の段階によって値が変わります。

  • C0 = 0.2一次設計(許容応力度計算)。中規模の地震(震度5強程度)で建物が損傷しないことを確認します。
  • C0 = 1.0 以上二次設計(保有水平耐力計算)。大地震(震度6強〜7)で倒壊しないことを確認します。

C0=0.2は「建物重量の20%の水平力」を意味します。一次設計と二次設計でC0が5倍違うのは、想定する地震の大きさが段違いだからです。木造で必要壁量を求めるときなどにも、この考え方が根底にあります。

地震用重量 W とは

地震力は重量に比例するため、算定には建物の重量が必要です。ここで使う重量が地震用重量 W で、固定荷重と、地震用に定められた積載荷重を合計したものです。積載荷重は用途ごとに「床用・大梁柱地震用・地震用」の3種類が定められており、地震用がもっとも小さい値になります。これは、地震はごく短時間の現象で、そのあいだ室内の人や物がすべて最大に載っている可能性は低い、という考え方によります。Wiは「i階から上の各階の地震用重量を合計した値」で、上の階ほどWiは小さく、1階でWは最大(=地上部分の全重量)になります。

地域係数 Z の意味

地域係数 Z は、その地域で過去に起きた地震の記録や地震活動から定められた、地域ごとの割増・割引の係数です。値は0.7〜1.0 の範囲で、地震活動が活発とされる多くの地域では Z=1.0、比較的地震が少ないとされる一部地域では 0.9・0.8、沖縄県では 0.7 が定められています。同じ建物でもZが小さい地域では地震力を小さく見込めますが、あくまで法令上の係数であり「その地域は地震が来ない」という意味ではない点に注意が必要です。

振動特性係数 Rt と一次固有周期 T

振動特性係数 Rt は、建物の揺れやすさ(一次固有周期T)地盤の硬さ(地盤種別)の関係から、地震力をどれだけ低減できるかを表す係数です(最大1.0、周期が長いほど小さくなる)。硬い地盤の上に建つ短周期の建物ではRt=1.0のまま、軟らかい地盤や背の高い長周期の建物ではRtが小さくなり、地震力が低減されます。

まず建物の一次固有周期 T(→固有周期)を、建物高さh(m)から略算します。

T = h(0.02 + 0.01α) h:建物の高さ(m)/α:鉄骨造部分の高さの割合(RC造・SRC造→0、S造→1)

RC造なら T=0.02h、S造なら T=0.03h です(S造のほうが同じ高さでも周期が長い=ゆっくり揺れる)。次に、地盤種別ごとに定めたTc(第1種=硬い地盤 0.4秒、第2種 0.6秒、第3種=軟弱地盤 0.8秒)と比較して、Rtを次式で求めます。

T < Tc : Rt = 1.0
Tc ≦ T < 2Tc : Rt = 1 − 0.2(T/Tc − 1)²
2Tc ≦ T : Rt = 1.6 Tc/T
Rt と一次固有周期 T の関係 T(周期) Rt 1.0 Tc 2Tc Rt=1.0 2次曲線で低減 1.6Tc/T 短周期(硬い地盤・低い建物)はRt=1.0。長周期になるほどRtは小さく=地震力を低減。
Rtは一次固有周期TがTc未満で1.0。Tc以上では周期が長いほど小さくなり、長周期の建物ほど地震力が低減される。

Ai分布の算定方法と意味

Ai は、地震力を高さ方向にどう分配するかを表す係数です。建物は地震時に上階ほど大きく揺れ動くため、上階に働く地震力は下階より相対的に大きくなります。この「上階への集中の度合い」を数値化したのがAi分布で、次の式で求めます。

Ai = 1 + ( 1/√αi − αi )× 2T /(1 + 3T)
αi = Wi / W αi:i階から上の地震用重量Wiを、地上部分の全重量Wで割った重量比/T:一次固有周期

1階では αi=1 となり Ai=1.0、上階へ行くほど αi が小さくなって Ai は1.0より大きくなります。式のなかにTが入っているため、周期の長い(背の高い)建物ほど上階への集中が強まり、Aiが大きくなるのが特徴です。Aiに Z・Rt・C0 を掛ければ各階のCiが求まり、Wiを掛ければ層せん断力Qiが得られます。手計算では各階のαiを積み上げていくのが手間ですが、下のExcelを使えば階数と各階重量を入れるだけで一括算定できます。

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Ai分布算出 Excel(18層モデル)

各階の階高と重量を入力すると、一次固有周期T・重量比αi・分布係数Ai・地震層せん断力係数Ci・層せん断力Qi を各階まとめて自動計算するExcelです。標準せん断力係数C0(初期値0.2)や、鉄骨造部分の高さ比αも入力でき、RC造・S造どちらにも対応します。地震力算定の流れを実際に手を動かして確認するのに便利です。

※ Microsoft Excel(.xlsx)。計算結果は設計者ご自身の責任でご確認のうえご使用ください。

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地下部分の地震力の算定方法

これまでは地上部分の話でした。地下部分は周囲を地盤に囲まれ、地上とは揺れ方が異なるため、Ai分布ではなく水平震度 k を各部分の重量に直接かける方法で算定します。

地下部分の地震力 = k × W(地下部分の重量)
k ≧ 0.1(1 − H/40)× Z k:水平震度/H:地盤面からの深さ(m)。20mを超える場合は20とする/Z:地域係数

地表に近いほどkは大きく、深くなるほど(地盤に拘束されて揺れにくくなるため)小さくなります。地上部分の地震力とは考え方が別なので、混同しないよう注意しましょう。

実務のワンポイント

Z・Rt・Ai・C0は一貫計算プログラムが自動で算定してくれますが、私はチェックのとき必ず「Rtに使ったTと地盤種別」「Aiに使った重量」が妥当かを手計算で当たります。特に地盤種別を一つ甘く見るとRtが変わり、建物全体の地震力がずれます。地震力は設計の出発点なので、ここが狂うと以降の応力・断面がすべて狂う——という意識で最初に固めておくのが結局は近道です。

ご利用にあたって

本記事とExcelは、地震力の算定方法を理解するための解説資料です。係数の値や算定式は建築基準法・同施行令および関連告示に基づいていますが、実際の設計では最新の法令・条件に応じた確認が必要です。計算結果は設計者ご自身の責任でご確認のうえご使用ください。

よくある質問

Q1. 一次設計と二次設計で地震力はどれくらい違いますか?

もっとも大きく効くのはC0で、一次設計の0.2に対し二次設計は1.0以上です。単純にはC0が5倍なので地震力も5倍規模になりますが、二次設計では建物の粘り(靭性)を考慮した保有水平耐力で確認するため、そのまま5倍の力に耐える必要があるわけではありません。

Q2. Rtを小さくする(地震力を減らす)にはどうすればよいですか?

Rtは一次固有周期Tが長いほど小さくなります。ただしTは建物の高さや構造で決まるもので、恣意的に操作するものではありません。地盤種別も地盤調査に基づいて正しく設定します。「地震力を減らすために都合よくRtをいじる」のではなく、正しいTと地盤種別を用いた結果として妥当なRtになる、と考えてください。

Q3. Ai分布と層せん断力係数Ciはどう違いますか?

Aiは高さ方向の分布だけを表す無次元の係数で、1階が1.0、上階ほど大きくなります。これにZ・Rt・C0を掛けたものが各階の地震層せん断力係数Ciです。Ciに各階の地震用重量Wiを掛けると、実際の水平力である層せん断力Qiになります。

まとめ

  • 各階の地震力(層せん断力)は Qi=Ci×Wi。Ciは Z・Rt・Ai・C0 の積。
  • Z=地域係数(0.7〜1.0)、C0=標準せん断力係数(一次0.2/二次1.0以上)。
  • Rt=一次固有周期Tと地盤種別による低減係数、Ai=上階ほど大きくなる高さ方向の分布係数。
  • 地下部分は水平震度 k≧0.1(1−H/40)Z で別に算定。記事末のAi分布算出Excelで一括計算できます。
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