鉄骨造(S造) 公開日:2026年6月14日 更新日:2026年7月22日

冷間成形角形鋼管設計施工マニュアルとは?BCR・BCPの設計根拠と目次

冷間成形角形鋼管設計施工マニュアルとは?BCR・BCPの設計根拠と目次

冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアルは、鉄骨造(S造)の柱に多く使われる角形鋼管(コラム)のうち、冷間成形でつくられたものの設計・施工ルールをまとめた資料です。代表的な材種がBCRBCPです。

冷間成形とは:なぜ特別なルールが必要か

角形鋼管は、鋼板を常温で曲げ加工(冷間成形)してつくります。冷間で加工すると、曲げた角部が硬く・もろくなり(加工硬化)、変形能力が低下します。そのため通常の鋼構造設計規準に加えて、地震時に柱に余裕を持たせる(応力を割り増す)といった特別な配慮が必要になります。

BCRとBCPの違い

材種成形方法主な強度区分
BCR295ロール成形(連続的に丸めて角にする)295N/mm²級
BCP235プレス成形(板を曲げて溶接)235N/mm²級
BCP325プレス成形325N/mm²級

BCR(Box Column Roll)はロール成形、BCP(Box Column Press)はプレス成形を表します。一般にBCRは中小規模、BCPは板厚の大きい大規模建物で使われることが多い材種です。

設計根拠:柱の応力割増し

このマニュアルの最大のポイントは、冷間成形角形鋼管の柱は、地震時に塑性変形が梁ではなく柱に集中しやすいことへの配慮です。柱の変形能力が低いため、保有水平耐力の検討時などに柱の応力(耐力)を割り増して安全側に設計します。割増し係数は材種・接合形式により定められています。

目次(主な構成)

項目主な内容
材料BCR・BCPの規格・機械的性質
設計柱の応力割増し、柱梁耐力比、接合部(ダイアフラム)
接合・施工溶接、通しダイアフラム形式、品質管理
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柱梁接合部・ダイアフラムは「鋼構造接合部設計指針」、部材設計の基本は「鋼構造設計規準」、施工は「JASS6」をどうぞ。

よくある質問

Q1. なぜ冷間成形角形鋼管は柱の応力を割り増すのですか?

冷間成形は常温で鋼板を曲げて角形に成形するため、特に角部で加工硬化が生じ、伸び能力(変形性能)が低下します。大地震時に柱梁接合部へ塑性変形が集中したときに脆く壊れないよう、柱に生じる応力を割り増して安全側に設計する規定が設けられています。

Q2. BCRとBCPはどう使い分けますか?

BCR(ロール成形)は比較的小〜中断面で経済的、BCP(プレス成形)は板厚の厚い大断面に対応できます。建物規模・柱断面・板厚に応じて選定し、いずれもマニュアルの規定に従って応力割増しや接合部の検討を行います。

実務のワンポイント

構造計算書を審査する立場になってからは、柱梁耐力比の計算に冷間成形角形鋼管の応力割増しがきちんと反映されているかを真っ先に確認します。この割増しを見落としたまま柱梁耐力比を満たしている計算書に、何度か出会ったことがあります。

なぜ角部が弱くなるのか(図解)

冷間成形の角形鋼管が特別扱いされる理由は、製造の過程にあります。常温で鋼板を曲げると、曲げた部分の材質が変化します。

冷間成形角形鋼管の角部で起きること 角部 平板部 角部(曲げ加工した部分) 強度は上がるが「伸び」が減る 平板部 元の鋼材の性質を保つ 加工硬化で角部の変形能力が落ちる → 地震時に粘れない → 設計で割増しが必要
冷間成形では角部が加工硬化し、強度は上がる一方で伸び能力(変形性能)が低下する。この性質が設計上の割増し規定につながっている。

柱の応力割増しの考え方

建築物の耐震設計では、大地震時に梁が先に降伏し、柱は健全なまま残ることが望ましいとされます。柱が先に壊れると、その階全体が潰れる層崩壊につながるためです。

なぜ柱を先に壊してはいけないのか

梁が先に降伏する「梁降伏型」の建物は、多数の梁が順に降伏しながらエネルギーを吸収するため、粘り強く倒壊しにくくなります。逆に柱が先に降伏する「柱降伏型」では、その階の柱がすべて壊れて一気に潰れる(層崩壊)危険があります。冷間成形角形鋼管は変形能力が低いため、この危険がとくに大きくなります。

そこでマニュアルでは、保有水平耐力の検討などにおいて、柱に生じる応力を割り増して評価します。割増し係数は、材種(BCR/BCP)や柱梁接合部の形式、柱梁耐力比の条件に応じて定められており、これにより柱に十分な余裕を持たせて梁降伏型を確保します。

確認する項目内容
柱梁耐力比接合部において、柱の耐力の合計が梁の耐力の合計を上回っているか
応力の割増し材種・接合形式に応じた係数で柱の応力を割り増す
ダイアフラムの検討梁フランジの力を確実に柱へ伝えられる板厚・溶接であるか

BCR・BCP・STKRの比較

BCR295BCP235 / BCP325STKR400 / 490
成形方法ロール成形(連続的に曲げる)プレス成形(1辺ずつ曲げる)ロール成形
規格の位置づけ建築構造用(国土交通大臣認定)建築構造用(国土交通大臣認定)JIS G 3466(一般構造用)
板厚の範囲6〜22mm程度12〜40mm程度(厚板に対応1.6〜22mm程度
断面サイズ□-150〜□-550程度□-400〜□-1000程度(大断面□-50〜□-400程度
角部の性能規格で管理されている規格で管理されている管理されていない
柱の応力割増し不要(またはBCP相当)不要必要(告示による)
主な用途中低層の柱(もっとも一般的)中高層・大スパンの柱二次部材・小規模建物

実務での使い分けはシンプルです。中低層の柱ならBCR295、大断面・厚板が必要ならBCP、構造柱以外ならSTKR。STKRを主要な柱に使うと応力の割増しが必要になり、結果として断面が大きくなるため、最初からBCRを選ぶほうが合理的です。

柱梁接合部の納まり

ダイアフラム形式特徴使いどころ
通しダイアフラム柱を切断し、梁せいに合わせたプレートを挟んで溶接。もっとも一般的標準的な中低層建物
内ダイアフラム柱の内部にプレートを入れる。柱を切らない柱を切りたくない場合、外観が見える柱
外ダイアフラム柱の外側にリング状のプレートを回す柱内部の作業が困難な場合

角形鋼管は閉断面のため、内部に手が入りません。そこで柱を一度切断し、ダイアフラムという補強プレートを挟んで溶接し直す通しダイアフラム形式が標準になっています。このプレートには板厚方向の引張力がかかるため、SN材のC種を使うのが原則です。

「便利さの代償」を理解して使う

冷間成形角形鋼管は、①2方向とも同じ強さ、②弱軸がない、③納まりが単純、という大きな利点があり、日本の鉄骨造の柱では圧倒的に多く使われています。
その一方で、常温で曲げるという製法上、角部が加工硬化して硬く脆くなります。硬くなるということは強度が上がるということですが、同時に粘りが失われるということでもあります。地震時に柱が塑性化する際、この角部から破断が始まる恐れがあるのです。
そのため設計では、①柱の応力を割り増す、②柱梁耐力比を確保して梁を先に降伏させる、③STKRを使う場合はDsを割り増す、といった対応が求められます。便利な材料には必ず制約がある——マニュアルが1冊にまとめられている理由がここにあります。

まとめ

  • 冷間成形角形鋼管マニュアルは、BCR・BCPの柱の設計・施工ルールをまとめた資料。
  • BCR295=ロール成形、BCP235・BCP325=プレス成形。
  • 冷間成形で変形能力が下がるため、地震時に柱の応力を割り増して設計するのが要点。