鉄骨造(S造) 公開日:2026年6月14日 更新日:2026年7月22日

鋼構造接合部設計指針とは?内容・目次・柱脚の設計を解説

鋼構造接合部設計指針とは?内容・目次・柱脚の設計を解説

鋼構造接合部設計指針は、日本建築学会(AIJ)が発行する、鉄骨造(S造)接合部に特化した設計の指針です。柱梁接合部・継手・柱脚など、鉄骨造で最も検討が難しい「部材と部材のつなぎ目」の設計法をまとめています。

位置づけ:接合部設計の拠りどころ

鋼構造設計規準が部材設計の基本を定めるのに対し、本指針は接合部の詳細設計を担います。鉄骨造では「接合部は部材より先に壊れてはいけない」という保有耐力接合の考え方が重要で、その具体的な算定方法が示されています。

目次(主な構成)

版によって構成は変わりますが、おおむね次のような内容が扱われます。

項目主な内容
接合部設計の基本保有耐力接合の考え方、応力伝達の原則
高力ボルト接合摩擦接合・引張接合のすべり・耐力、ボルト配置
溶接接合完全溶込み・隅肉溶接の耐力、のど厚、欠陥の扱い
継手梁継手・柱継手の応力分担とボルト・溶接の設計
柱梁接合部パネルゾーン、ダイアフラム(通しダイアフラム形式 等)
柱脚露出柱脚・根巻き柱脚・埋込み柱脚の設計

柱脚の設計

柱脚は鉄骨柱の力を基礎に伝える重要な部分で、本指針の中心的なテーマの一つです。代表的な3形式があります。

形式特徴
露出柱脚ベースプレートとアンカーボルトで固定。施工が容易だが回転剛性は小さめ
根巻き柱脚柱脚まわりをRCで根巻きし剛性・耐力を高める
埋込み柱脚柱を基礎コンクリートに埋め込む。剛性・耐力が大きく固定度が高い

実務での使い方

  • 梁継手・柱継手のボルト本数・溶接サイズを決める根拠として参照する。
  • 柱梁接合部のパネルゾーンやダイアフラムの検討に使う。
  • 露出柱脚のアンカーボルト・ベースプレートの設計に使う。
  • 保有水平耐力(二次設計)の検討で、接合部が先行破壊しないことの確認に用いる。
あわせて読みたい

部材設計の基本は「鋼構造設計規準」、継手の標準は「梁継手・接合部標準図集(SCSS-H97)」、施工は「JASS6」をどうぞ。

よくある質問

Q1. 「接合部は母材より先に壊れてはいけない」とよく言われるのはなぜですか?

接合部(溶接・ボルト)が母材(梁・柱)より先に壊れると、部材が本来持っている粘り(塑性変形能力)を発揮する前に建物が崩壊してしまうためです。そこで接合部は、接合される部材が全塑性に達しても壊れないよう余裕を持たせて(保有耐力接合として)設計するのが原則です。指針はその具体的な検討方法を示しています。

Q2. 柱脚の形式にはどんな種類がありますか?

大きく露出形式・根巻き形式・埋込み形式の3種類があります。露出柱脚はアンカーボルトとベースプレートで固定する最も一般的な形式、根巻き・埋込みはRCで柱脚を固めて剛性・耐力を高める形式です。それぞれ回転剛性や固定度の評価方法が異なり、指針に沿って検討します。

実務のワンポイント

柱脚の形式を選ぶとき、指針どおりに耐力を満たせるかだけでなく、施工のしやすさまで含めて検討するようにしています。露出柱脚は施工が早い分、回転剛性の評価次第で上部架構の応力が変わってくるため、架構全体への影響を必ず確認しています。

柱脚3形式の比較(図解)

指針の中心テーマである柱脚は、形式によって固定度と施工性が大きく異なります。

柱脚の3形式(左ほど施工が容易、右ほど固定度が高い) 露出柱脚 ベースPL+アンカーボルト 施工が容易・固定度は小さめ 根巻き柱脚 柱脚まわりをRCで巻く 剛性・耐力を高められる 埋込み柱脚 柱を基礎に直接埋め込む 固定度が最も高い
露出・根巻き・埋込みの順に固定度が高くなる。設計では、想定する固定度に応じた接合部の検討が必要になる。

保有耐力接合の考え方

この指針を貫く思想が保有耐力接合です。ひと言でいえば「つなぎ目を、つながれる部材より強くしておく」という原則です。

なぜ接合部を強くするのか

鉄骨造の粘り強さは、梁が降伏して大きく変形しながらエネルギーを吸収することで生まれます。ところが、その手前で溶接部やボルトが破断してしまうと、部材は本来の粘りをまったく発揮できないまま、建物が崩壊します。溶接やボルトの破壊は脆性的(前触れなく一気に)起こるため、特に危険です。そこで接合部には、部材が全塑性モーメントに達してもなお壊れない余裕を持たせます。

接合部の最大耐力 ≧ α × 部材の全塑性耐力 α:安全率にあたる割増し係数。接合形式や鋼種に応じて定められる

この考え方は柱梁接合部だけでなく、梁継手・柱継手・ブレース端部・柱脚など、力を伝えるすべての箇所に適用されます。特にブレースの端部は見落とされやすく、ブレース材自体が降伏する前に取り付けボルトが破断すると、地震時に水平力を負担する要素が突然失われることになります。

検討する箇所基準となる部材の耐力
梁継手梁の全塑性モーメント
柱梁接合部(ダイアフラム・溶接)梁の全塑性モーメント
ブレース端部の接合ブレース材の降伏軸力
柱脚(アンカーボルト)柱の全塑性モーメント(形式による)

まとめ

  • 鋼構造接合部設計指針は、日本建築学会による鉄骨接合部の設計指針。
  • 高力ボルト・溶接・継手・柱梁接合部・柱脚の設計法を扱う。
  • 「保有耐力接合(接合部を先に壊さない)」が基本思想。版は最新版を確認する。