筋交いの鉄筋(鉄筋ブレース)とは?意味・倍率
木造の筋交いには木材のほか、鉄筋(丸鋼)を使った筋かい=鉄筋ブレースもあります。細い鋼材の引張に強い性質を活かした耐力壁で、木の筋かいとは力の負担のしかたが大きく異なります。鉄骨造のブレース構造と同じ考え方が、木造の耐力壁にも応用されているとイメージすると理解しやすくなります。
- 鉄筋ブレースは丸鋼を斜めに張り、引張力だけで水平力に抵抗する筋かい。
- 圧縮側は座屈してしまうため負担できず、たすき掛け(2本1組)にして両方向に効かせる。
- ターンバックルで導入する初期張力(プレテンション)が、たわみを抑え性能を発揮させる鍵になる。
意味
鉄筋ブレース(丸鋼ブレース)は、細い丸鋼を斜めに張って引張で水平力に抵抗する筋かいです。両端をターンバックルで固定し、張力を調整します。断面が細いため意匠的にすっきりし、開口を確保しやすいのが特徴で、店舗のショーウインドウまわりなど、大きな開口が必要な壁面でよく使われます。
引張のみ負担する理由
丸鋼は断面が細く、圧縮力を受けると簡単に座屈(横に曲がってしまう現象)を起こします。座屈すると耐力を発揮できないため、鉄筋ブレースは実質的に引張力だけを負担する部材として設計します。木の筋かいが圧縮・引張の両方を負担できるのとは対照的です。そのため片方向だけでは、地震動が反対に振れたときに効かなくなってしまい、たすき掛け(×に2本)にして、常にどちらか一方が引張で効くようにするのが基本です。
ターンバックルと初期張力
ターンバックルは、ねじの回転でブレースの長さを微調整し張力を導入する金物です。施工時にたるみのない状態(初期張力)を与えておくことが重要で、たるんだままだと地震で建物が変形し始めてからようやく張力が効き始め、初期の変形が大きくなってしまいます。初期張力を適切に管理することで、小さな変形の段階からブレースが効き、耐力壁としての性能を発揮できます。
壁倍率と接合の考え方
鉄筋ブレースも、径や仕様に応じて壁倍率が定められた製品(認定耐力壁)があります。木の筋かいと同様、倍率に応じて端部を金物でしっかり緊結することが前提です。引張力を負担する部材である以上、端部が抜けたり緩んだりすると耐力壁として機能しないため、柱・土台への定着方法はメーカーの仕様に厳密に従う必要があります。
筋かいの種類(まとめ)
| 種類 | 負担 | 特徴 |
|---|---|---|
| 木の片筋かい | 圧縮・引張 | 一般的 |
| 木のたすき掛け | 両方向 | 倍率が高い |
| 鉄筋(丸鋼)ブレース | 引張のみ | 細い・たすき掛けで使う。開口を確保しやすい |
鉄筋ブレースは片側の1本だけでは反対方向の地震動に効かないため、必ずたすき掛けで計画します。また、初期張力が不足していると本来の壁倍率どおりの性能が出ないおそれがあるため、施工時のターンバックルの締め付け確認は欠かせません。木の筋かいのように圧縮も負担できるわけではない点を、設計・施工の双方で正しく理解しておく必要があります。
鉄筋ブレースの現場で、ターンバックルを締めたつもりで実は緩んだままの箇所を見つけたことがある。図面上の壁倍率は初期張力が入って初めて成立する数値なので、竣工前の増し締め確認を検査項目にきちんと入れておくと安心できる。
鉄筋ブレースが引張だけを負担する理由(図解)
ターンバックルと初期張力の実務
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ターンバックルの役割 | ねじで長さを微調整し、ブレースのたるみを取る金物 |
| 初期張力の目的 | たるみをなくし、地震の初期から確実に効くようにする |
| 締めすぎの弊害 | 柱・梁に不要な圧縮力が生じ、建方が引っ張られて歪む |
| 適正の目安 | 指で押してわずかに動く程度。設計図に張力指定がある場合はそれに従う |
| 建方の順序 | 柱・梁の建入れ直し(垂直の調整)を完了してから締める |
| 再確認のタイミング | 外装取付け後・引渡し前。緩みがないか点検する |
ブレースはたるんでいるとまったく効きません。地震で建物が変形し、たるみが取れて初めて力を負担し始めるため、その分だけ他の部材に余計な変形が生じます。逆に締めすぎると、地震が来る前から柱・梁に無駄な力が入り、建物が歪みます。「ちょうど張っている」状態が正解です。
どこで使われるか
| 用途 | 使われ方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 木造の耐力壁 | 丸鋼ブレース+筋かいプレート | 壁倍率1.0程度。木の筋交いより低い |
| 鉄骨造の壁面ブレース | 丸鋼・ターンバックル付き | 倉庫・工場の外壁面に多用 |
| 鉄骨造の屋根面ブレース | 水平ブレース | 屋根の水平構面をつくる |
| 仮設(建方時) | ワイヤー・仮ブレース | 建方中の転倒防止。本設とは別 |
| 耐震補強 | 鉄骨ブレース増設 | 既存RC造の窓面に外付けすることも |
鉄筋ブレース(丸鋼9mm程度)の壁倍率は1.0前後で、木の筋交い(45×90mmのたすき掛けで4.0)よりずっと低く評価されます。鉄のほうが強い材料なのに、なぜでしょうか。
理由は接合部と剛性にあります。丸鋼は細いため、引張力が同じでも伸びが大きく、建物の変形が進んでからでないと力を発揮しません。また、丸鋼を木材に留める金物部分の耐力が先に決まってしまいます。つまり「材料の強さ」ではなく「接合部を含めた壁全体の性能」で評価されるため、この数値になるのです。構造は必ず一番弱いところで決まる——この原則がよく表れた例といえます。
よくある質問
Q1. 鉄筋ブレースはなぜ引張しか負担しないのですか?
細長い部材は圧縮を受けるとすぐ座屈して曲がってしまい、力を伝えられないためです。そのため設計では圧縮側の抵抗を期待せず、引張のみで検討します。どちらの向きの地震にも対応できるよう、必ず2本を交差させたたすき掛けで配置します。
Q2. ターンバックルはどのくらい締めればよいですか?
たるみが取れて、わずかに張っている状態が適正です。締めすぎると柱・梁に不要な力が入って建物が歪み、緩いと地震の初期に効きません。設計図に初期張力の指定がある場合はそれに従い、必ず柱・梁の建入れ直しを完了してから締めます。
Q3. 木造で鉄筋ブレースの壁倍率が低いのはなぜですか?
丸鋼は細いため引張時の伸びが大きく、建物がある程度変形しないと力を発揮しないこと、そして木材に留める金物部分の耐力で全体が決まってしまうことが理由です。材料としての鋼の強さではなく、接合部を含めた壁全体の性能で評価されるためです。
まとめ
- 鉄筋ブレースは丸鋼を斜めに張り、引張で水平力に抵抗する筋かい。
- 圧縮では座屈するため引張のみ負担。たすき掛けで両方向に効かせる。
- ターンバックルで初期張力を与えることが、性能を発揮させるポイント。
- 認定品に壁倍率が定められ、端部は金物で緊結する。