H形鋼の断面二次モーメント|強軸と弱軸の違い
断面二次モーメント(I)は、曲げにくさ(曲げ剛性)を表す断面性能です。H形鋼は向きによってIが大きく変わり、強軸と弱軸を区別することがとても重要です。
強軸(Ix)と弱軸(Iy)の違い
H形鋼を曲げる向きによって、断面二次モーメントは2種類あります。
| 強軸(x軸)Ix | 弱軸(y軸)Iy | |
|---|---|---|
| 曲げの向き | せい方向に曲げる(フランジが上下) | 幅方向に曲げる |
| 値 | 大きい | 小さい |
| 使い方 | 梁はこの向きで使う | 横座屈・2軸曲げで効く |
材料が中立軸から遠い上下フランジに集まる強軸はIが大きく、フランジが中立軸の近くに来る弱軸はIが小さくなります。同じH形鋼でも、せいを縦にして使う(強軸で曲げる)と何倍も曲げに強いのはこのためです。
求め方の公式
弱軸:Iy = [ 2·t2·B³ + (H − 2·t2)·t1³ ] / 12 H:せい/B:フランジ幅/t1:ウェブ厚/t2:フランジ厚
強軸は「外形BHの矩形から、ウェブ両脇の空白を引く」考え方、弱軸は「フランジ2枚+ウェブ」を足し合わせる考え方です。
代表サイズの一覧(強軸Ix・弱軸Iy)
| 呼称(mm) | Ix(cm⁴) | Iy(cm⁴) | Ix/Iy |
|---|---|---|---|
| H-400×200×8×13(細幅) | 23700 | 1740 | 約13.6 |
| H-300×300×10×15(広幅) | 20400 | 6750 | 約3.0 |
| H-400×400×13×21(広幅) | 66600 | 22400 | 約3.0 |
細幅はIx/Iyが大きく強軸に偏った断面(梁向き)、広幅はIyも比較的大きく2方向に強い断面(柱向き)であることが数値からわかります(→広幅・中幅・細幅)。
梁は強軸で曲げを受けるように架けるのが原則。弱軸方向は横座屈に弱いため、横補剛で圧縮フランジを支えます。
そこから出す「断面係数」、代表値の「断面性能一覧」、基礎理論の「断面二次モーメントとは?」をどうぞ。
よくある質問
Q1. なぜ同じH形鋼でも強軸と弱軸で断面二次モーメントがこれほど違うのですか?
断面二次モーメントは「中立軸から離れた位置にある材料ほど効く(距離の2乗で効く)」量だからです。強軸まわりでは上下フランジが中立軸から大きく離れているためIxが大きく、弱軸まわりではフランジ幅の範囲でしか材料が広がらないためIyは小さくなります。この差が、梁をウェブ縦向き(強軸曲げ)で使う理由です。
Q2. たわみの計算にはIxとZxのどちらを使いますか?
たわみは断面二次モーメントIxを使います(例:等分布荷重の単純梁の中央たわみ δ=5wL⁴/384EIx)。断面係数Zは応力度(強度)の検討に使う量で、役割が異なります。両者を取り違えると検討結果を誤るので注意してください。
形鋼表を照合していて気づくのは、たわみの検討でIxとZxを取り違える若手が意外と多いことです。断面二次モーメントは変形、断面係数は応力度の話だと最初に整理しておかないと、計算書の後段で数値の意味を見失いがちです。
強軸と弱軸の断面(図解)
同じH形鋼でも、どちらの向きに曲げるかで性能がまったく違います。断面図で確認しましょう。
計算例:H-400×200×8×13
公式に実際の数値を入れて、強軸・弱軸の値を求めてみましょう。
寸法:H=400mm、B=200mm、t1(ウェブ厚)=8mm、t2(フランジ厚)=13mm
= [ 200 × 400³ − (200 − 8) × (400 − 26)³ ] / 12
= [ 200 × 64,000,000 − 192 × 52,313,624 ] / 12
= [ 12,800,000,000 − 10,044,215,808 ] / 12 ≒ 22,965万 mm⁴ ≒ 22,965 cm⁴
= [ 2 × 13 × 200³ + 374 × 8³ ] / 12
= [ 208,000,000 + 191,488 ] / 12 ≒ 1,733万 mm⁴ ≒ 1,733 cm⁴
強軸と弱軸の比は 22,965 ÷ 1,733 ≒ 13.2倍。同じ部材でも、向きを間違えると曲げ剛性が13分の1になってしまうことがわかります。梁を架けるときにウェブを鉛直にするのは、この強軸を活かすためです。
実務では、上記の計算をせずとも鋼材の断面性能表からIx・Iyを直接読み取ります。ただし、表にない寸法や、板を組み合わせたビルドH(溶接組立H形鋼)では自分で計算する必要があります。当サイトの断面性能計算ツールでも自動計算できます。
まとめ
- 断面二次モーメントIは曲げにくさ。H形鋼は強軸Ixと弱軸Iyで大きく異なる。
- Ix=[BH³−(B−t1)(H−2t2)³]/12、Iy=[2t2·B³+(H−2t2)t1³]/12。
- 梁は強軸で使う。細幅は梁向き、広幅は2方向に強く柱向き。