構造計算の実務 公開日:2026年6月15日 更新日:2026年7月22日

耐震構造とは?制震・免震との仕組みの違い

耐震構造とは?制震・免震との仕組みの違い

耐震構造とは、建物自体を強く・粘り強くして地震の力に耐える構造です。柱・梁・壁などの骨組みそのものの強度と粘りによって地震のエネルギーを受け止める考え方で、最も基本的で一般的な地震対策として、ほとんどの建物がこの考え方で設計されます。制震構造・免震構造も、この耐震構造を土台としたうえで、揺れの伝わり方や吸収の仕方に工夫を加えたものと理解すると整理しやすくなります。

この記事の要点
  • 耐震構造は建物自体を頑丈にして地震力に正面から耐える基本構造
  • 制震は揺れを吸収、免震は揺れを伝えないという異なる発想で地震対策をする
  • コストや効果、適用できる建物規模の違いから使い分けが必要

耐震構造の仕組み

耐震 硬く強くして耐える 制震(制振) ダンパーが揺れを吸収 免震 装置が揺れを伝えない
耐震=耐える/制震=吸収する/免震=伝えない。3つの考え方の違い。

柱・梁・耐力壁・筋かいなどで建物を頑丈にし、地震力に正面から耐えます。大地震では部材の一部が塑性化しても、建物の粘り(靱性)でエネルギーを吸収し、倒壊を防ぎます(二次設計の考え方)。中規模の地震(一次設計で想定するレベル)では建物がほとんど損傷しないことを、大地震(二次設計で想定するレベル)では損傷しても倒壊・崩壊しないことを、それぞれ目標として設計するのが一般的な二段階の考え方です。

耐震構造のメリット・デメリット

耐震構造の最大のメリットは、特別な装置を使わないためコストを抑えやすく、施工も比較的シンプルな点です。一方で、大地震時には建物自体が変形してエネルギーを吸収するため、柱・梁のひび割れなど構造体の損傷が生じやすく、家具の転倒や什器の被害を防ぎにくいという弱点もあります。揺れそのものを軽減したい場合は、後述の制震・免震を組み合わせる必要があります。

制震・免震との違い

耐震構造制震構造免震構造
考え方耐える吸収する伝えない
仕組み強く粘り強い骨組みダンパーで揺れを減衰免震層で地盤と切り離す
コスト標準高い
建物の損傷大地震で一部許容抑えられる大きく抑えられる
POINT

耐震は「壊れにくくする」、制震は「揺れを吸収して抑える」、免震は「揺れを建物に伝えない」方法です。耐震が基本で、より高い性能や揺れの低減が必要な場合に制震・免震を加えます。詳しくは「耐震・制震・免震の違い」をご覧ください。

どう使い分けるか

一般的な戸建て住宅や中小規模の建物では、コストの面から耐震構造が主流です。タワーマンションや病院・庁舎など、地震後も機能を維持したい建物や、揺れによる家具転倒・什器被害を極力抑えたい建物では、制震・免震を組み合わせることが増えています。特に免震構造は、揺れそのものを大幅に低減できる反面、免震層の設置スペースやコストが必要になるため、建物の用途・重要度・予算を踏まえた総合的な判断が求められます。

Q1. 耐震構造だけでは地震に弱いのですか

いいえ。耐震構造は建築基準法が定める最低限の耐震性能を満たすように設計されており、正しく設計・施工されていれば大地震でも倒壊を防ぐことを目標としています。ただし、大きな揺れそのものは建物に伝わるため、制震・免震に比べると室内被害や損傷は生じやすくなります。

Q2. 既存の耐震構造の建物を後から制震化できますか

はい。既存建物にダンパーなどの制震部材を追加する「制震補強」は、耐震改修の手法の一つとしてよく用いられます。壁を増設する在来の耐震補強に比べ、開口部を確保しやすいなどのメリットがあります。

実務のワンポイント

耐震構造の目標は「壊れない」ではなく「倒壊しない」ことです。被災建物を調査すると柱や梁は健全でも、天井材や配管の損傷で使用停止になっている例が多く、施主にはこの区別をあらかじめ説明しておくことがトラブル防止につながります。

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耐震・制震・免震の比較

比較項目耐震構造制震構造免震構造
基本の考え方頑丈につくって耐えるダンパーで揺れを吸収する地面と切り離して揺れを伝えない
建物の揺れ大きい中程度小さい(1/3〜1/5)
建物本体の損傷大地震で損傷を許容損傷を軽減ほぼ無損傷
家具の転倒起きやすいやや軽減大幅に軽減
コスト増(対 耐震)—(基準)+2〜5%程度+5〜15%程度
メンテナンス不要ダンパーの点検定期点検が必須(免震層のクリアランス確保)
適した建物ほぼすべて中高層・既存の補強病院・データセンター・美術館・超高層
弱点繰り返しの地震で損傷が蓄積単独では耐震性を代替できない長周期地震動・強風時の揺れ、設備配管の追従

3つは対立する技術ではなく、耐震が土台にあって、その上に制震・免震を重ねるという関係です。制震構造も免震構造も、建物本体は耐震構造として成立していることが前提であり、「免震だから建物は弱くてよい」ということはありません。

耐震基準の変遷

時期基準内容
〜1971年旧耐震(初期)震度法のみ。RC造の帯筋規定も緩い
1971〜1981年5月旧耐震十勝沖地震を受けRC柱の帯筋間隔を強化
1981年6月〜新耐震基準一次設計(中地震で損傷しない)+二次設計(大地震で倒壊しない)の2段階
2000年6月〜2000年基準(木造)地盤に応じた基礎、柱頭柱脚の金物、壁配置バランス(4分割法)を明確化
2007年〜構造計算適合性判定一定規模以上で第三者による審査(ピアチェック)を義務化
2025年4月〜4号特例の縮小木造2階建て等でも構造関係規定の審査対象が拡大

耐震診断や既存建物の評価で決定的に重要なのが1981年6月という境目です。この日以降に建築確認を受けた建物が「新耐震基準」で、それ以前が「旧耐震」。中古住宅の売買、住宅ローン控除、地震保険の割引など、実務のさまざまな場面でこの日付が判定基準になります。木造については、さらに2000年6月という第2の境目があります。

新耐震=「無傷」ではない

新耐震基準が想定しているのは、①震度5強程度の中地震で損傷しない ②震度6強〜7の大地震で倒壊・崩壊しないという2段階です。②で求められているのはあくまで「人命を守る」ことであり、建物が無傷で使い続けられることではありません。
実際、熊本地震(2016年)では新耐震基準の建物でも大きな損傷を受けた例があり、余震の繰り返しで倒壊した建物もありました。
「建物が壊れず、地震後もそのまま使いたい」という要求があるなら、基準を満たすだけでは足りません。耐震等級3を確保する、制震ダンパーを併用する、免震構造を選ぶ——といった基準を上回る性能を意図的に設計する必要があります。

まとめ

  • 耐震構造は建物自体を強く粘り強くして地震に耐える基本の構造。
  • 制震は揺れを吸収、免震は揺れを伝えない仕組みで、目的が異なる。
  • 耐震が基本。性能や揺れ低減の要求に応じて制震・免震を併用する。
  • 建物の用途・重要度・コストを踏まえて工法を選ぶことが大切。