構造計算の実務 公開日:2026年6月15日 更新日:2026年7月22日

構造強度とは?建築基準法施行令との関係

構造強度とは?建築基準法施行令との関係

構造強度とは、建築物が自重や地震・風などの力に対して安全であるための構造に関する技術的基準の総称です。建築基準法施行令の第3章が「構造強度」にあてられており、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造など構造種別ごとの仕様から、許容応力度計算に至るまで、構造設計の実務で参照する規定の大部分がここに含まれます。構造強度という言葉自体は法律上の見出しの名称ですが、実務では「守るべき構造ルールの集合体」というイメージで使われることが多い用語です。

この記事の要点
  • 構造強度は建築基準法施行令第3章にまとめられた構造に関する技術的基準の総称
  • 法20条の大原則を、仕様規定と構造計算という2つの方法で具体化している
  • 耐久性等関係規定はどんな計算ルートを選んでも必ず適用される

建築基準法施行令との関係

建築基準法第20条が「建築物は自重・積載荷重・地震などに対して安全な構造でなければならない」という大原則(構造耐力)を定め、その具体的な基準を施行令第3章「構造強度」が定めています。法律は理念・大枠を示し、施行令や告示がその中身を具体的な数値・手順として補うという、建築基準法特有の階層構造を理解しておくと、条文を読み解くときに迷いにくくなります。

施行令第3章の構成(概要)

区分内容
総則・耐久性等関係規定共通の基本ルール(36条ほか)
仕様規定木造・組積造・RC造・S造・SRC造などの具体的な基準
構造計算許容応力度計算・保有水平耐力計算など(計算ルート)

このように施行令第3章は、共通ルールである総則・耐久性等関係規定を土台として、構造種別ごとの仕様規定と、規模に応じた構造計算のルートが積み上がる構成になっています。どの建築物にも同じ厚みの規定が適用されるわけではなく、規模や構造種別によって求められる検討の深さが変わる点が特徴です。

仕様規定と構造計算の違い

POINT

構造強度の基準は、大きく「仕様規定(具体的な仕様を守る)」と「構造計算(計算で安全を確かめる)」の2本立てです。規模・構造種別に応じて、どこまで計算が必要かが決まります。計算をしても耐久性等関係規定は必ず適用されます。

仕様規定は「柱の小径を何cm以上にする」「筋かいの端部をこう緊結する」といった具体的な数値・工法を守ることで安全性を確保する考え方です。一方、構造計算は建築物に生じる応力やたわみを計算し、許容応力度などと比較して安全性を確認する考え方です。小規模な建築物では仕様規定のみで完結する場合もありますが、規模が大きくなるほど構造計算による検証が求められます。

実務でのポイント

実務で構造強度の規定を扱う際は、まず対象の建築物がどの計算ルートに該当するかを整理し、そのルートで要求される仕様規定・構造計算の範囲を確認するのが基本の流れです。仕様規定は一見単純に見えても、告示で細かな数値が定められている項目が多いため、思い込みで設計せず、都度条文・告示にあたる姿勢が欠かせません。構造計算を行う場合でも、耐久性等関係規定(かぶり厚さや防腐・防蟻措置など)は別枠で常に満たす必要がある点を見落とさないようにしましょう。

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実務のワンポイント

計算ルートが決まると気が緩みがちですが、耐久性等関係規定(かぶり厚さなど)はどのルートでも別枠で必ず満たす必要があります。私は計算書のチェックリストにこの項目を独立させて置き、計算が通ったことと仕様規定を満たすことを混同しないようにしています。

施行令第3章の全体地図(図解)

施行令第3章「構造強度」の構成 施行令 第3章「構造強度」 第1節 総則 36条:構造方法に関する    技術的基準 36条の2:地階を除く階数 36条の3:構造設計の原則 37〜39条:材料の品質、  荷重・外力、屋根ふき材 第2〜7節 構造種別 第3節:木造(40〜50条) 第4節:組積造 第4節の2:補強CB造 第5節:鉄骨造(63〜70条) 第6節:RC造(71〜79条) 第7節:SRC造 第8節 構造計算 81条:構造計算の適用 82条:許容応力度等計算 82条の2:層間変形角 82条の3:保有水平耐力 82条の6:剛性率・偏心率 83〜99条:荷重・材料強度 左と中央が「仕様規定」、右が「構造計算」。どちらか一方ではなく、両方を満たす必要がある。
条文を探すときは、まずこの3ブロックのどれに当たるかを考えると早い。構造種別ごとの規定は第2〜7節、計算方法は第8節。

仕様規定と構造計算の関係を正しく理解する

仕様規定構造計算
性格「こうつくりなさい」という方法の指定「安全を数値で確かめなさい」という検証
条文令36〜80条の3(構造種別ごと)令81〜99条(第8節)
基礎の形式、壁量、柱の小径、かぶり厚さ許容応力度計算、保有水平耐力計算
計算で代替できるか一部は可能。ただし耐久性等関係規定は不可
4号建築物(小規模木造)これだけで確認申請が通る場合がある省略できる場合がある

よくある誤解が「構造計算をすれば仕様規定は無視できる」というものです。これは正しくありません。計算で代替できるのは一部の規定だけで、耐久性等関係規定(防腐・防蟻、コンクリートのかぶり厚さ、基礎の形式など)は、どれだけ高度な構造計算をしても省略できません。耐久性は計算では確かめられない——時間とともに進む劣化は、計算式では表現できないからです。

条文の探し方(実務のコツ)

知りたいこと見る条文
木造の必要壁量令46条(構造耐力上必要な軸組等)
木造の柱の小径令43条
基礎の形式・仕様令38条
荷重・外力の種類令83条(積載荷重は85条、地震力は88条)
鉄骨の柱の脚部令66条
コンクリートのかぶり厚さ令79条
層間変形角の制限令82条の2(1/200以内)
剛性率・偏心率令82条の6(剛性率0.6以上、偏心率0.15以下)
材料の許容応力度令89〜94条(木材・鋼材・コンクリート等)
告示までセットで確認する

施行令の条文には、しばしば「国土交通大臣が定める基準による」という書き方が出てきます。この「大臣が定める基準」の中身は告示に書かれており、条文だけを読んでも具体的な数値はわかりません。
たとえば地震力の計算で使うRt(振動特性係数)やAi分布の式は、令88条ではなく告示1793号に書かれています。実務では、令の条文 → 該当する告示 → 学会規準(RC規準・鋼構造設計規準など)という順に降りていくのが基本の調べ方です。地震力の算定のように、告示まで含めて理解して初めて計算できる項目は多くあります。

よくある質問

Q1. 構造計算をすれば仕様規定は守らなくてよいのですか?

いいえ。構造計算で代替できるのは一部の仕様規定だけで、耐久性等関係規定(防腐・防蟻処理、コンクリートのかぶり厚さ、基礎の形式など)は、どれだけ高度な構造計算をしても省略できません。時間とともに進む劣化は計算では確かめられないためです。

Q2. 施行令の条文を読んでも具体的な数値が書かれていません。どこを見ればよいですか?

告示を確認してください。施行令には「国土交通大臣が定める基準による」という委任規定が多く、具体的な数値や計算式は告示に書かれています。たとえば地震力のRtやAi分布の式は告示1793号にあります。令の条文→告示→学会規準の順に調べるのが実務の基本です。

Q3. 構造強度の規定は施行令のどこにありますか?

建築基準法施行令の第3章(36条〜99条)が「構造強度」です。第1節が総則、第2〜7節が構造種別ごとの仕様規定(木造・組積造・補強CB造・鉄骨造・RC造・SRC造)、第8節が構造計算の方法という構成になっています。

まとめ

  • 構造強度は、構造の安全に関する技術的基準(施行令第3章)。
  • 法20条の構造耐力を、施行令第3章が具体化している。
  • 仕様規定と構造計算の2本立て。耐久性等関係規定は常に適用。
  • 建築物の規模・構造種別に応じて求められる検討の深さが異なる。