アルカリ骨材反応の対策|意味・種類と3つの方法
アルカリ骨材反応(ASR:Alkali Silica Reaction/Alkali Aggregate Reaction)とは、セメント中のアルカリ分と骨材中の反応性鉱物が化学反応を起こし、コンクリートが内部から膨張してひび割れる劣化現象です。いったん発生すると根本的な補修が難しく、構造体の耐久性を長期にわたり損なうため、あらかじめ防ぐ(抑制する)ことが何より重要です。この記事では、反応のメカニズム・種類・3つの抑制対策を、建築士試験と実務の両方の視点から整理します。
- アルカリ骨材反応は、セメントのアルカリと骨材の反応性シリカによる膨張・ひび割れ劣化。
- 対策は「抑制セメント」「アルカリ総量3.0kg/m³以下」「無害な骨材」のいずれか。
- 水分の供給を断つことも進行の抑制に有効。
アルカリ骨材反応の意味とメカニズム
セメント中のアルカリ分(ナトリウム・カリウム)と、骨材に含まれる反応性のシリカが反応し、アルカリシリカゲルという生成物ができます。このゲルが周囲の水を吸って膨張し、コンクリートが内部から押し広げられて、亀甲状(網目状)のひび割れや劣化を起こします。進行すると鉄筋の破断に至った事例もあり、「コンクリートのがん」とも呼ばれます。
反応が成立するには、①反応性シリカを含む骨材、②十分なアルカリ、③水分、の3条件がそろう必要があります。逆にいえば、このうちどれか1つを断てば反応は進みません。後述の3つの対策は、①と②を断つ考え方に対応しています。また、屋外で雨水にさらされる部位ほど劣化が進みやすいため、防水や排水で水分の供給を減らすことも実務上有効です。
種類
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| アルカリシリカ反応 | 最も一般的。反応性シリカを含む骨材(安山岩・チャートなど)で生じる |
| アルカリ炭酸塩反応 | 特定の炭酸塩岩で生じる(まれ) |
実際に問題となるのはほとんどがアルカリシリカ反応であるため、一般に「アルカリ骨材反応=ASR」として扱われます。
3つの対策
建築基準法・JISでは、次のいずれかの方法でアルカリ骨材反応を抑制します。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| ① 抑制効果のあるセメントを使う | 高炉セメントB/C種、フライアッシュセメントB/C種などを使う |
| ② アルカリ総量を抑える | コンクリート中のアルカリ総量をNa₂O換算で3.0kg/m³以下に抑える |
| ③ 無害な骨材を使う | 試験(化学法・モルタルバー法)で「無害」と確認された骨材を使う |
①の混合セメントは、アルカリを固定する働きで反応を抑えられるため、有効な対策としてよく使われます。3つのうち少なくとも1つを満たすことが求められます。
アルカリ骨材反応によるひび割れは、打設後すぐではなく数年〜十数年かけて現れることが多い劣化です。竣工時の検査では見つけられないため、材料選定の段階で抑制対策を確実に行うことが唯一の実効的な予防策になります。
よくある質問
Q1. 乾燥収縮のひび割れとどう見分けるのですか?
ASRのひび割れは拘束のない部位では亀甲状(網目状)に、PC部材や柱など拘束の強い部材では主応力方向に沿って現れるのが特徴です。ひび割れ部からゲルの滲出が見られることもあります。確定診断にはコア採取による残存膨張量試験などが用いられます。
Q2. 発生してしまった場合はどうしますか?
反応の進行には水分が必要なので、表面被覆やひび割れ注入で水の供給を断つことが基本になります。ただし膨張を完全に止めることは難しく、対症療法にとどまるため、やはり事前の抑制対策が重要です。
既存建物の劣化診断で、亀甲状のひび割れを見てASRを疑う場面が何度かありました。竣工時の検査記録には異常がなく、数十年後になって表面化するため、設計段階でどの抑制策を採ったかを構造計算書や特記仕様書に残しておくことが、後年の診断作業を大きく左右すると実感しています。
抑制に使う「高炉セメント」「フライアッシュセメント」、ひび割れは「コンクリートの弱点」をどうぞ。
反応のメカニズム(図解)
発見と診断
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| ひび割れの形状 | 亀甲状(網目状)。無筋部分に多い。鉄筋がある方向には拘束されて筋状になることも |
| ゲルの滲出 | ひび割れから白色〜透明のゲルがにじみ出る |
| 進行の速さ | 数年〜十数年かけて徐々に進む。竣工直後には現れない |
| 発生しやすい部位 | 雨がかりのある屋外部材、湿潤環境。乾燥した屋内では進みにくい |
| 診断方法 | コア採取による岩石学的判定、促進膨張試験、残存膨張量の測定 |
ASRが厄介なのは、いったん発生すると止めるのが難しい点です。反応には水が必要なので、表面被覆で水分の供給を断つ対策が基本ですが、内部にすでに水分がある場合は効果が限定的です。膨張が続けば鉄筋の破断に至った事例もあります。だからこそ、設計・材料選定の段階で防ぐことが決定的に重要で、3つの抑制対策(無害な骨材の使用、アルカリ総量規制、抑制効果のある混合セメント)のいずれかを必ず実施します。
まとめ
- アルカリ骨材反応は、セメントのアルカリと骨材の反応性シリカで膨張・ひび割れする劣化。
- 種類はアルカリシリカ反応(一般的)とアルカリ炭酸塩反応。
- 対策は①抑制セメント②アルカリ総量3.0kg/m³以下③無害な骨材、のいずれか。
- 反応には水分が必要。水の供給を断つことも進行抑制に有効。