鉄筋コンクリート造(RC造) 公開日:2026年6月14日 更新日:2026年7月22日

セメントの種類と特徴|主要7種類を解説

セメントの種類と特徴|主要7種類を解説

セメントとは、水と反応(水和)して固まるコンクリートの結合材のことです。JISに規格化されたセメントは、クリンカと石膏だけでつくるポルトランドセメントと、高炉スラグやフライアッシュなどを混ぜた混合セメントに大別されます。この記事では、建築で登場する代表的な7種類の特徴と使い分けを、初期強度・水和熱・耐久性という3つの視点から解説します。

この記事の要点
  • ポルトランド系は普通N・早強H・中庸熱M・低熱L・耐硫酸塩SRが代表。
  • 混合セメントは高炉B・フライアッシュFが代表。長期強度・低発熱・耐久性に優れる。
  • 選定の軸は「初期強度」「水和熱」「耐久性・化学抵抗性」。

ポルトランドセメント(5種)

種類記号特徴・用途
普通ポルトランドN最も一般的。一般の建築・土木全般
早強ポルトランドH初期強度が高い。寒中・工期短縮
中庸熱ポルトランドM水和熱が小さめ。マスコンクリート
低熱ポルトランドL水和熱が最も小さい。マス・高強度
耐硫酸塩ポルトランドSR硫酸塩に強い。温泉地・下水・海岸の構造物

※このほか超早強(UH)を加えてポルトランドセメントは6種類とされます。

ポルトランドセメントの性格を分けているのは、主に鉱物組成の違いです。早く反応する成分を増やせば早強型に、発熱の大きい成分を減らせば中庸熱・低熱型になります。名前の「ポルトランド」は、硬化した色が英国ポートランド島産の石材に似ていたことに由来します。

混合セメント(2種)

種類記号特徴・用途
高炉セメントB高炉スラグを混合。長期強度・水密性・化学抵抗性・アルカリ骨材反応抑制に優れ、水和熱も低い
フライアッシュセメントF石炭灰を混合。ワーカビリティ向上・長期強度・水和熱低減

混合セメントは混合材の割合でA種・B種・C種に分かれ、建築では高炉セメントB種が広く使われます。混合セメントは製鉄や火力発電の副産物を有効利用するため、製造時のCO₂排出が少なく環境面でも注目されています。ただし初期強度の発現は普通セメントよりやや遅いため、寒い時期の施工や型枠の早期転用には注意が必要です。

選び方のポイント

POINT:発熱と初期強度で選ぶ
  • 早く強度がほしい → 早強(H)
  • 発熱を抑えたい(大断面・高強度)→ 中庸熱(M)・低熱(L)・高炉(B)
  • 耐久性・化学抵抗を高めたい → 高炉(B)・耐硫酸塩(SR)

迷ったら基準は普通ポルトランドセメント(N)です。そのうえで、①工期を詰めたい・冬期に強度を早く出したい場面ではH、②部材が厚く水和熱による温度ひび割れが心配なマスコンクリートではM・L・B、③海岸部や土壌中など劣化因子の多い環境ではBやSR、というように「現場の課題」から逆引きすると選定を間違えません。

よくある質問

Q1. 種類が違うと強度も違うのですか?

最終的に得られる強度そのものより、強度が出るまでの速さ(強度発現)と発熱の大きさが主な違いです。早強は初期強度が高く、低熱・混合系は初期はゆっくりでも長期強度がよく伸びる傾向があります。

Q2. 一般的な建物にはどれが使われていますか?

大半は普通ポルトランドセメント(N)です。生コン工場の標準品もNを前提としており、特別な要求(低発熱・耐久性・工期短縮など)がある場合に他の種類を指定します。

実務のワンポイント

型枠の存置期間を詰めたい現場で高炉セメントB種を指定すると、初期強度の立ち上がりの遅さで工程が押すことがある。冬場は特に、セメント種類の指定は工程表とセットで確認するようにしている。

あわせて読みたい

ポルトランドセメント(6種)」「混合セメント」、違いは「セメントとコンクリート」をどうぞ。

7種類の使い分けマップ(図解)

初期強度と水和熱でみる7種類 初期強度 → 水和熱 早強 H 普通 N 中庸熱 M 低熱 L 高炉B BB フライ アッシュB 工期短縮・寒中 マスコン 一般全般
初期強度が高いほど水和熱も大きくなる傾向がある。用途に応じて、この2軸のどこに位置するセメントを選ぶかを判断する。

選定のフローチャート

条件選ぶセメント
特別な要求がない普通ポルトランド(N)
工期短縮・寒中施工早強ポルトランド(H)
中規模のマスコンクリート中庸熱ポルトランド(M)
大規模マスコン・高強度低熱ポルトランド(L)
海水・硫酸塩環境、ASR抑制高炉セメントB種(BB)
ワーカビリティ改善・低発熱フライアッシュB種
入手性も選定の重要な要素

性能面で最適なセメントを選んでも、地域の生コン工場が扱っていなければ使えません。普通ポルトランドと高炉B種は全国的に入手しやすい一方、中庸熱・低熱・フライアッシュ系は工場が限られます。特殊なセメントを指定する場合は、設計段階で供給の可否を確認しておくことが不可欠です。「図面に書いたが手配できない」という事態は、工程に直接影響します。

まとめ

  • セメントはポルトランド(普通N・早強H・中庸熱M・低熱L・耐硫酸塩SR)と混合(高炉B・フライアッシュF)に大別。
  • 早強は初期強度、中庸熱・低熱・高炉は低発熱、高炉・耐硫酸塩は耐久性に優れる。
  • 選定は「初期強度・水和熱・耐久性」の3軸で、現場の課題から逆引きする。
  • 建築では普通N、低発熱が必要な場面で高炉Bなどを使い分ける。