構造計算の実務 公開日:2026年6月15日 更新日:2026年7月6日

実施設計とは?基本設計との違いと設計料の比率

実施設計とは?基本設計との違いと設計料の比率

実施設計とは、基本設計で決めた建物の骨格・仕様の方針をもとに、実際に施工できるレベルまで詳細な図面と構造計算書をつくり込む設計段階です。工事の見積り・契約や建築確認申請は、この実施設計図書に基づいて行われるため、設計プロセスの中でもっとも作業量が多く、責任の重い段階といえます。

この記事の要点
  • 実施設計は「施工できる図面+構造計算書」を完成させる段階で、確認申請・見積り・工事契約の基礎になる。
  • 詳細設計は実施設計とほぼ同義で使われることが多い。
  • 設計料の配分は基本設計:実施設計≒3:7前後が目安(監理は別途)。

実施設計とは何をする段階か

建築設計は一般に「企画 → 基本設計 → 実施設計 → 工事監理」という流れで進みます。基本設計で建物の規模・構造種別・スパン割り・主要部材の目安を固めたあと、実施設計ではすべての部材の断面・配筋・接合部・納まりを確定させ、施工者が迷わず工事できる情報として図面化します。英語では detailed design や working drawing(実施図)と呼ばれます。

構造設計者にとっての実施設計は、荷重の設定から応力解析、断面検定、構造図の作図までを一貫して行う中心業務です。意匠・設備との取り合い(梁貫通孔の位置、スリーブ、天井内の納まりなど)を調整しながら図面の整合を取る作業も、この段階の重要な仕事です。

実施設計の成果物

  • 構造図:基礎伏図・床伏図・軸組図・断面リスト・配筋図・標準図
  • 構造計算書:荷重・地震力・応力・断面検定
  • 仕様書・詳細図(施工に必要なすべての情報)

構造図は「伏図で位置を、リストで断面を、標準図で共通ルールを示す」という役割分担になっています。構造計算書は、確認申請で審査機関がチェックする書類であり、一定規模以上の建物では構造計算適合性判定(適判)の対象にもなります。図面と計算書の内容が食い違うと審査で指摘を受けるため、図面と計算書の整合は実施設計の生命線です。

基本設計・詳細設計との違い

実施設計は基本設計の次の段階で、施工に必要な情報を確定させます。「詳細設計」は実施設計とほぼ同義で使われることが多く、実施設計の中の詳細な検討・作図を指します。土木分野では「詳細設計」という呼び方が一般的で、建築分野では「実施設計」が標準的な用語です。

段階目的主な成果物
基本設計建物の骨格・仕様の方針を決める基本設計図書・概算工事費
実施設計施工できる情報まで確定させる実施設計図書・構造計算書・仕様書
工事監理図面どおり施工されているか確認監理報告書
注意

実施設計の途中で基本設計の前提(階高・スパン・構造種別など)を変更すると、計算・作図のやり直しが大きくなります。基本設計段階での合意形成が、実施設計を手戻りなく進めるカギです。

設計料の比率(目安)

POINT

設計業務の報酬は、国土交通省告示(業務報酬基準)などを参考に、業務段階で配分されます。基本設計より実施設計のほうが作業量が多く、比率も大きいのが一般的で、目安として基本設計:実施設計 ≒ 3:7 前後とされることがあります(監理は別途)。実際の比率は契約・規模により異なります。

たとえば設計料(監理を除く)が1,000万円の契約であれば、基本設計に約300万円、実施設計に約700万円という配分がひとつの目安になります。実施設計は作図枚数・計算量が多く、担当者が複数人で数か月かけて取り組むことも珍しくありません。

よくある質問

Q1. 実施設計と確認申請はどちらが先ですか?

実施設計で図面と構造計算書をまとめ、その図書を用いて建築確認申請を行うのが基本の流れです。審査での指摘に応じて図書を補正することもあります。

Q2. 実施設計が終われば設計者の仕事は終わりですか?

終わりではありません。着工後は工事監理として、配筋検査や施工図の照査など、設計図書どおりに施工されているかを確認する業務が続きます。

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実務のワンポイント

実施設計の山場は、いつも意匠・設備との梁貫通位置の調整でやってきます。構造計算が固まった後に設備配管の変更で梁せいごと見直した経験があり、確定前に情報を早めに共有しておくことの大切さを痛感しています。

まとめ

  • 実施設計は施工できる詳細図と構造計算書をつくる段階。確認申請・見積り・契約の基礎になる。
  • 詳細設計はほぼ同義。基本設計の方針を確定させる。
  • 構造図と計算書の整合が実施設計の生命線。
  • 設計料は実施設計の比率が大きく、基本:実施≒3:7が目安。