鉄骨造(S造) 公開日:2026年6月14日 更新日:2026年7月6日

中実材とは?中空材との違いと断面二次モーメントの比較

中実材とは?中空材との違いと断面二次モーメントの比較

中実材(ちゅうじつざい)とは、断面の内部まで材料が詰まった鋼材のことです。丸鋼・平鋼・角鋼などが該当し、英語では solid section(ソリッド断面)と呼ばれます。中が空洞になっている中空材(鋼管)と対になる言葉です。この記事では、中実材の読み方と意味、中空材との違い、断面二次モーメントの比較を計算例つきで解説します。

この記事の要点
  • 中実材(ちゅうじつざい)=中身が詰まった鋼材。丸鋼・平鋼・角鋼が代表例です。
  • 同じ断面積(≒同じ重さ)なら、材料が外周に分布する中空材のほうが断面二次モーメントが大きく、曲げ・座屈に有利です。
  • 中実材は引張ブレースや小物部材など、断面性能より加工性・接合のしやすさが重視される部位で活躍します。

中実材の読み方と意味

読み方は「ちゅうじつざい」です。「中実」は「中身が実(み)ちている」、つまり断面の内部まで金属が詰まっている状態を表します。「ちゅうみざい」「なかみざい」ではないので注意しましょう。代表的な中実材には次のようなものがあります。

  • 丸鋼:断面が円形の棒鋼。引張ブレース(筋かい)やアンカーボルトの素材などに使われます。
  • 平鋼(フラットバー):断面が長方形の帯状の鋼材。ガセットプレートの添え材や手すり・階段まわりの部材に多用されます。
  • 角鋼:断面が正方形の棒鋼。小物金物や機械部品の素材になります。

なお、H形鋼などの形鋼は板要素を組み合わせた断面であり、通常「中実材」とは呼びません。あくまで「中身が詰まっているか、空洞か」という視点の分類です。

中空材との違い

中実材と対になるのが、円形鋼管や角形鋼管のように断面の中央が空洞になっている中空材です。両者の違いを整理すると次のとおりです。

中実材中空材
断面中身が詰まっている中が空洞(鋼管)
丸鋼・平鋼・角鋼円形鋼管・角形鋼管
曲げ・座屈効率同じ重さでは劣る同じ重さで有利
加工・接合ねじ切り・曲げ加工が容易端部処理・接合に工夫が必要
主な用途引張ブレース・小物部材柱・トラス材など圧縮を受ける部材

曲げやすさ・座屈しにくさを断面のかたちで比較するときのキーワードが、次に説明する断面二次モーメントです。

断面二次モーメントの比較(計算例つき)

断面二次モーメントIは、断面の曲げにくさを表す量で、図心(断面の中心)から遠い位置にある材料ほど大きく効くという性質があります。同じ断面積(≒同じ重さ)でも、材料が外周に分布する中空材のほうがIは大きくなります。中実の丸鋼(直径D)のIは次式です。

中実丸鋼:I = πD⁴ / 64D:直径。中空円管の場合は I = π(D⁴ − d⁴)/64(D:外径、d:内径)

数値例で確かめてみましょう。直径50mmの丸鋼の断面積は約19.6cm²、Iは約30.7万mm⁴です。これとほぼ同じ断面積になるように、外径約100mm・厚さ約6.6mmの鋼管に置き換えると、Iは約220万mm⁴となり、同じ重さのまま約7倍に増えます。材料を図心から遠い外周側へ移すだけで、曲げにも座屈にも大幅に強くなるわけです。

POINT

だからこそ、鉄骨では中実材よりH形鋼(外側にフランジ)や鋼管(中空)が梁・柱に多用されます。中実材は、断面が小さくてよい引張材(ブレース等)や、座屈が問題にならない部位で使われます。

実務での使い分け

「中空材のほうが効率的なら、中実材は不要では?」と思うかもしれませんが、実務では中実材にも明確な出番があります。

  • 引張専用の部材:引張力には断面積だけが効き、座屈の心配がないため断面のかたちによる効率差が出ません。丸鋼ブレース(ターンバックル付き)が典型です。
  • 加工性が必要な部位:丸鋼は端部にねじを切って接合でき、平鋼は曲げ加工や孔あけが容易です。
  • 断面が小さくてよい部材:小径では鋼管の板厚が薄くなりすぎて製作・接合が難しく、中実材のほうが合理的なことがあります。
注意

丸鋼ブレースは圧縮側では座屈してほぼ効かないため、「引張のみ有効」として設計するのが原則です。圧縮も負担させたい場合は、鋼管や形鋼のブレースを選定します。

よくある質問

Q1. 中実材と「充腹材」は同じ意味ですか?

別の概念です。充腹材(じゅうふくざい)は、H形鋼のようにウェブが一枚板で連続している部材を指し、トラス状の非充腹材と対比される言葉です。一方、中実材は「棒として中身が詰まっているか」という分類です。詳しくは「充腹形・非充腹形」をご覧ください。

Q2. 同じ直径なら中実材と鋼管はどちらが強いですか?

同じ外径で比べれば、断面積の大きい中実材のほうがIも耐力も大きくなります。中空材が有利なのは、あくまで「同じ断面積(同じ重さ)」で比較した場合です。

実務のワンポイント

丸鋼ブレースを含む物件の照査では、圧縮側を負担させる想定になっていないか必ず確認している。座屈してほぼ効かない前提を忘れて圧縮力を期待した図面を見かけたことがあり、以来この点は見逃さないようにしている。

あわせて読みたい

対になるのは「中空断面」、計算は「断面二次モーメント」、座屈は「座屈とは?」をどうぞ。

まとめ

  • 中実材(ちゅうじつざい)は中身が詰まった鋼材。丸鋼・平鋼・角鋼など。
  • 同じ断面積なら中空材のほうが断面二次モーメントが大きく曲げ・座屈に有利(数値例では約7倍)。
  • 中実材は引張材や座屈が問題にならない部位、加工性が求められる部位に使われる。
  • 比較するときは「同じ重さか、同じ外径か」の条件をそろえて考える。