箱型断面とは?断面係数・断面二次モーメントの計算
箱型断面(はこがただんめん/ボックス断面)とは、4枚の板で矩形に囲んだ閉断面のことです。英語ではbox sectionと呼びます。角形鋼管や、厚板を溶接して組み立てるボックス柱が代表で、上下・左右どちらの方向にも強く、ねじりにも強いことから、鉄骨造の柱に最も広く使われる断面形です。この記事では、箱型断面の特徴、断面二次モーメント・断面係数の計算式と数値例、角形鋼管への応用までを整理します。
- 箱型断面は矩形の閉断面。2方向の曲げとねじりにバランスよく抵抗する。
- I=(BH³−bh³)/12、Z=I/(H/2)。「外形−空洞」で計算する。
- 代表例は角形鋼管(BCR・BCP・STKR)で、柱に多用される。
箱型断面の特徴
- 2方向に強い:上下・左右どちらの曲げにもバランスよく抵抗する。
- ねじりに強い:閉断面なのでねじり剛性が大きい。
- 座屈に有利:材料が外周に分布し、断面二次モーメントが大きい。
H形鋼のような開断面は強軸・弱軸の差が大きく、弱軸方向の曲げやねじりが苦手です。これに対して箱型断面は、正方形にすればX方向・Y方向の性能が等しくなり、どの方向から地震力を受けても同じように抵抗できます。柱は梁と違って2方向から力を受けるため、この「方向性のなさ」が大きな長所になります。
断面二次モーメント・断面係数の計算
外形 B×H、内側の空洞 b×h の中空矩形(箱型)の断面二次モーメント I と断面係数 Z は、外形から空洞を引いて求めます。
中身の詰まった中実断面から、中央の空洞分を差し引く考え方です。空洞部は中立軸の近くで曲げにあまり寄与しないため、抜いても性能の低下が小さく、軽くできます。
【計算例】外形200×200mm・板厚12mm(空洞176×176mm)の箱型断面では、I=(200×200³−176×176³)/12 ≒ 5,340万mm⁴(≒5,340cm⁴)、Z=I/100 ≒ 53.4万mm³(≒534cm³)となります。同じ200×200の中実断面(I≒13,330万mm⁴)と比べると I は約4割ですが、断面積(重量)は約4分の1で済むため、単位重量あたりの効率は箱型の方がはるかに高いことがわかります。
角形鋼管への応用
角形鋼管(BCR・BCP・STKR)はこの箱型断面の代表です。実際の角形鋼管は四隅に丸み(コーナーR)がありますが、設計では形鋼表に記載された I・Z の値を使います。柱に角形鋼管が多用されるのは、箱型断面の「2方向に強くねじれに強い」性質が柱に好都合だからです。超高層建物や大きな軸力を受ける柱では、規格品より大きな断面が必要になるため、厚鋼板を溶接して組み立てる「溶接組立箱形断面柱(ボックス柱)」が用いられます。
箱型断面は閉じているため、内部の防錆塗装や溶接後の検査ができないという施工上の注意点があります。また柱梁接合部では、内部にダイアフラム(力を伝える板)を設ける必要があり、通しダイアフラム形式などの標準的な納まりが使われます。
ボックス柱の溶接部は完成後に内部を目視できないため、工場立会いでは開先形状と溶接順序を写真で残してもらうよう頼んでいる。竣工後にトラブルが出ても後から確認できる記録を残すのが、閉断面ならではの品質管理のコツだと感じている。
計算の基礎は「断面二次モーメントとは?」「断面係数とは?」、中空の効果は「中空断面」、開断面との違いは「開断面」をどうぞ。
箱型断面の計算:中実から中空を引く(図解)
計算例:□-200×200×9
角形鋼管□-200×200×9(外形200mm角、板厚9mm)で実際に計算してみます。角の丸み(コーナーR)は無視した概算です。
内空:b = h = 200 − 9×2 = 182mm
I = 200×200³/12 − 182×182³/12
= 133.3×10⁶ − 91.5×10⁶ = 41.8×10⁶ mm⁴(=4180cm⁴)
Z = I ÷ (200/2) = 41.8×10⁶ ÷ 100 = 418×10³ mm³(=418cm³)
規格値(コーナーRを考慮した実際の値)はI=3890cm⁴、Z=389cm³なので、概算値は約7%大きめに出ます。検討の当たりをつける段階では概算で十分ですが、最終的な断面算定では必ず鋼材ハンドブックの規格値を使ってください。
同じ重さのH形鋼と比べると
| 比較項目 | □-200×200×9(54.1kg/m) | H-200×200×8×12(49.9kg/m) |
|---|---|---|
| 強軸まわりのI | 3890cm⁴ | 4720cm⁴ |
| 弱軸まわりのI | 3890cm⁴(同じ) | 1600cm⁴(1/3に落ちる) |
| ねじり剛性 | 非常に高い | 非常に低い |
| 向きの影響 | なし(正方形なので) | 大きい(強軸・弱軸の管理が必要) |
強軸だけを見ればH形鋼のほうが効率的です。しかし柱はどの方向から地震が来るかわからないため、弱軸のない箱型断面が有利になります。逆に梁は曲げの向きが決まっているので、強軸を効率よく使えるH形鋼が経済的です。この違いが「柱は角形鋼管、梁はH形鋼」という定番の組み合わせを生んでいます。
よくある質問
Q1. 箱型断面と角形鋼管は同じものですか?
角形鋼管は箱型断面の一種です。箱型断面は「4枚の板で矩形に囲んだ断面」という形状の総称で、それを既製品として製造したものが角形鋼管(STKR・BCR・BCPなど)、厚板を溶接して現場ごとに組み立てたものがビルドボックス柱です。
Q2. 箱型断面の断面二次モーメントは引き算だけでよいのですか?
外形と内空の図心(中心)が一致している場合は、引き算だけで求められます。□-200×200×9のように上下左右対称な断面はこれに当てはまります。ただし非対称な箱型では、図心を求めたうえで平行軸の定理を使う必要があります。
Q3. 計算値と規格値がずれるのはなぜですか?
角形鋼管には製造上どうしてもコーナーR(角の丸み)があり、その分だけ断面積が実際には小さくなるためです。単純な引き算では角が直角として計算されるので、5〜10%ほど大きめの値になります。設計では必ずメーカー規格値を使ってください。
まとめ
- 箱型断面は4枚の板で囲んだ矩形の閉断面。2方向に強くねじれに強い。
- I=(BH³−bh³)/12、Z=I/(H/2) で計算する。「外形−空洞」の引き算。
- 中実断面より軽さあたりの効率がよく、座屈にも有利。
- 角形鋼管(BCR・BCP)が代表例で、柱に多用される。