鉄骨造(S造) 公開日:2026年6月14日 更新日:2026年7月22日

薄肉とは?厚み・軽量鉄骨・薄肉断面の種類

薄肉とは?厚み・軽量鉄骨・薄肉断面の種類

薄肉(はくにく)とは、鋼材などの板厚が薄いことを指す言葉です。軽量形鋼のように板厚おおむね1.6〜3.2mm程度の薄い鋼材を「薄肉」と呼び、軽量鉄骨造の骨組や下地材に広く使われます。薄いぶん軽くて経済的な一方、「局部座屈」という薄肉特有の弱点があり、厚板とは異なる設計上の配慮が必要です。この記事では、薄肉の読み方と意味、軽量鉄骨との関係、薄肉断面の種類、そして局部座屈への注意点を順に解説します。

この記事の要点
  • 薄肉は「はくにく」と読み、板厚が薄いことを表す。1.6〜3.2mm程度の軽量形鋼が代表。
  • 板厚6mm未満の鋼材を主体とする鉄骨造が軽量鉄骨造。
  • 薄肉断面は局部座屈が弱点。リップ等の形状で補い、接合はボルト・ビスが基本。

薄肉の読み方と意味

読み方は「はくにく」。鋼材の肉(板)が薄いことを表します。対義語は「厚肉(あつにく)」です。機械や配管の分野でも管の肉厚が薄いことを薄肉と呼ぶように、建築に限らず使われる用語ですが、鉄骨の分野では軽量形鋼(SSC400)やデッキプレートなどが薄肉の代表で、薄い鋼板をロールで折り曲げる冷間成形でつくられます。熱間圧延でつくるH形鋼などの厚肉材と違い、成形の自由度が高く、リップ付きなど複雑な断面形状にできるのが特徴です。

軽量鉄骨との関係

鉄骨造は、使う鋼材の厚さで大きく2つに分けられます。

区分板厚の目安主な用途
軽量鉄骨造厚さ6mm未満(薄肉)住宅・店舗・小規模建物
重量鉄骨造厚さ6mm以上中〜大規模・ラーメン構造

このうち軽量鉄骨で使う、板厚1.6〜3.2mm程度の薄い軽量形鋼が「薄肉断面」です。ハウスメーカーの鉄骨系プレハブ住宅の多くは、この軽量鉄骨にブレース(筋かい)を組み合わせた構造です。また重量鉄骨造の建物でも、母屋・胴縁・天井下地など二次部材には薄肉の軽量形鋼が使われており、両者は建物の中で併用されるのが普通です。

薄肉断面の種類

  • リップ溝形鋼(Cチャン):薄肉の代表。軽量形鋼の主役。
  • ハット形・Z形・溝形:母屋・胴縁などに。
  • デッキプレート:床・屋根の下地となる薄板成形材。

いずれも「薄い板を折り曲げて断面性能を稼ぐ」という共通の発想でつくられています。板を平らなまま使うとすぐたわみますが、折り曲げて山や縁をつくると断面二次モーメントが大きくなり、少ない材料で強く・硬くできます。デッキプレートの波形も、リップ溝形鋼の折り返しも同じ理屈です。

局部座屈への注意

POINT

薄肉断面は、部材全体が曲がる前に薄い板そのものが波打つように座屈する「局部座屈を起こしやすいのが弱点です。リップ(縁の折り返し)を付けて板を補強したり、許容応力度を低めに見込んだりして対処します。また薄いため溶接には不向きで、ボルト・ビス接合が基本です。

注意

薄肉材は断面が薄いぶん、錆による断面欠損の影響が相対的に大きい点にも注意が必要です。厚さ3mmの板が1mm錆びれば断面は3分の1減ります。めっき(Zマーク金物やZAM等の表面処理鋼板)や塗装など、防錆処理の仕様確認が厚肉材以上に重要です。

実務のワンポイント

軽量鉄骨造の耐震診断で古い建物を調べると、薄肉部材の錆による断面欠損が設計時の板厚より進んでいることがよくある。現地調査では実測値を優先し、図面上の板厚をそのまま信用しないようにしている。

あわせて読みたい

軽量形鋼は「軽量形鋼」、材質は「軽量形鋼SSC400」、座屈は「座屈とは?」、板の薄さの指標は「幅厚比」をどうぞ。

板厚でこれだけ変わる:薄肉と厚肉の違い

「薄いか厚いか」は見た目の話ではなく、設計のやり方そのものが変わる境目です。板が薄いと、部材全体が折れる前に板そのものがベコッとへこむ(局部座屈)ため、鋼材が持っている強度を最後まで使い切れません。厚板ではまず起きない現象なので、薄肉には専用の考え方が必要になります。

比較項目薄肉(1.6〜3.2mm程度)厚肉(6mm以上)
つくり方冷間成形(常温でロール曲げ)熱間圧延(赤熱させて圧延)
代表的な材軽量形鋼・角形鋼管(小径)・デッキプレートH形鋼・厚板・大径鋼管
主な弱点局部座屈(板がへこむ)全体座屈・横座屈
接合方法ボルト・ドリルビス・タッピングが基本溶接・高力ボルト
さび対策肉厚の余裕がなく厳しい(めっき必須)塗装・耐火被覆と併用
使いどころ住宅・下地材・二次部材主要な柱・梁

とくにさび(腐食)は薄肉の泣きどころです。厚さ9mmの材が0.5mmさびても余力がありますが、厚さ1.6mmの材が0.5mmさびると断面の3割が失われます。そのため軽量形鋼は溶融亜鉛めっきや電気亜鉛めっき品を使い、切断面・孔あけ部にも防錆処理をするのが基本です。

局部座屈のイメージ(図解)

薄肉断面では板がへこむ局部座屈が先行する 薄肉:板がへこんで先に壊れる 厚肉:断面の強度を使い切れる 波打つ まっすぐ保つ 圧縮 圧縮 同じ材質でも、薄いと材料の力を出し切る前に座屈する 板厚に余裕があれば降伏まで持ちこたえる
局部座屈は「部材が折れる」のではなく「板がへこむ」現象。薄肉ではこれが先に起こるため、幅厚比の制限で板の薄さを管理する。

この「へこみやすさ」を数値で管理するのが幅厚比(板の幅÷板厚)です。幅厚比が大きい(=相対的に薄い)ほど局部座屈しやすいため、告示や規準で上限値が定められています。軽量形鋼にリップ(縁の折り返し)が付いているのは、この幅厚比を実質的に小さくして、板がへこみにくくするための工夫です。

よくある質問

Q1. 薄肉と軽量鉄骨は同じ意味ですか?

違います。「薄肉」は鋼材の板が薄いという材料側の状態を表す言葉で、「軽量鉄骨造」は薄い鋼材を主体につくる構造の種類を指します。重量鉄骨造の建物でも、母屋・胴縁・天井下地などには薄肉の軽量形鋼が使われるので、薄肉=軽量鉄骨造とは限りません。

Q2. 薄肉の鋼材は溶接してはいけないのですか?

禁止ではありませんが、実務では避けるのが基本です。板厚が薄いと溶け落ち(穴あき)や過大な熱変形が起きやすく、めっき層も焼失して腐食の起点になります。そのためドリルビス・タッピングねじ・ボルト接合が標準で、どうしても溶接する場合は低電流の専用施工と防錆補修が必要です。

Q3. 薄肉だと建物の強度は足りないのでしょうか?

板厚が薄いこと自体は問題ではなく、薄さに応じた設計をすれば十分な強度が確保できます。2〜3階建ての住宅規模であれば、軽量形鋼にブレース(筋かい)を組み合わせた構造で必要な耐力は満たせます。ただしスパンが大きい建物や大きな地震力を負担する部材には向かないため、重量鉄骨を選びます。

まとめ

  • 薄肉(はくにく)は板厚が薄いこと。1.6〜3.2mm程度の軽量形鋼が代表。
  • 厚さ6mm未満の鋼材を使う鉄骨が軽量鉄骨造。重量鉄骨の二次部材にも薄肉材が使われる。
  • 折り曲げて断面性能を稼ぐのが薄肉断面の発想。
  • 薄肉断面は局部座屈と錆に注意。リップで補強し、接合はボルト・ビス。