RC造の温度応力解析|温度差の設定条件と実務の考え方
温度応力解析でいちばん迷うのが「温度差 ΔT をいくつにするか」です。法令にも規準にも「ΔT=○℃」という決まった数値は書かれていないため、設計者が根拠を持って設定するしかありません。
ただし、ΔT を決める前にやるべきことがあります。それはどちらの温度応力を扱うのかを切り分けることです。ここが曖昧なまま数値だけを探すと、いつまでも条件が定まりません。この記事では、切り分け → 基準温度 → 部位別 ΔT → 乾燥収縮 → 剛性低減 → 拘束条件、という順に実務での設定手順を整理します。
- 温度応力 σ = R·Ee·α·ΔT。応力を決めるのは ΔT より拘束度 R と有効剛性 Ee。
- ΔT は「基準温度からの差」。基準温度は年平均気温などで定義し、設計方針に明記する。
- 屋根・外壁・室内・地下で部位ごとに ΔT を変える。一律にすると実態と合わない。
- 冬期側には乾燥収縮の等価温度(−15〜−25℃程度)を加算する。
- クリープによる剛性低減(Ee=Ec/3 程度)が必須。忘れると2〜3倍の過大評価になる。
まず「どちらの温度応力か」を切り分ける
「RC建物の温度応力解析」という言葉は、まったく性質の違う2つの検討を指します。設定条件も判定基準も別物です。
| ① 供用時の温度応力 | ② 施工時(マスコン)の温度応力 | |
|---|---|---|
| 原因 | 外気温の季節変化・日射 | セメント水和熱による温度上昇と、その後の降下 |
| 対象 | 建物全体の骨組(長大な建物、地下・屋外露出部) | 厚い基礎スラブ・地下外壁・耐圧版など |
| 時期 | 供用期間中(数十年) | 打設〜材齢1か月程度 |
| 解析 | 立体骨組モデルに温度荷重を入力 | 3次元FEMによる温度伝導解析+応力解析 |
| ΔTの決め方 | 基準温度からの差(±10〜25℃程度) | 打込み温度・断熱温度上昇・外気温から温度履歴を計算 |
| 判定 | 許容応力度・ひび割れ幅 | 温度ひび割れ指数 Icr |
| よりどころ | 日本建築学会 RC規準・荷重指針、社内基準 | JASS 5、土木学会 コンクリート標準示方書 |
一般に「RC建物の温度応力解析」と言えば①を指します。以下は①を中心に説明し、後半で②のマスコンクリートにも触れます。
温度応力は「温度差」ではなく「拘束」で決まる
もっとも重要な原則です。自由に伸縮できる部材には温度応力は生じません。伸縮を妨げる拘束があってはじめて、内部に応力が生まれます。
図:拘束がなければ応力はゼロ。拘束されているときだけ温度応力が発生する
試しに、コンクリートのヤング係数 Ec=2.1×10⁴ N/mm²(Fc24相当)をそのまま使い、ΔT=20℃、完全拘束(R=1)としてみます。
つまり、拘束された RC 部材はわずか20℃の温度変化でひび割れる計算になります。温度応力解析が「応力度の照査」であると同時に「ひび割れの検討」だと言われるのはこのためです。
結果を左右するのは ΔT だけではありません。拘束度 R と有効ヤング係数 Ee の見込み方のほうが影響が大きいのが実情です。ΔT だけ厳しくしても、剛性を弾性値のままにしていれば現実離れした応力しか出ません。
なお、鉄筋の線膨張係数も約 1.0×10⁻⁵/℃ でコンクリートとほぼ同じです。だからこそ両者は一体で挙動できます(コンクリートと鉄筋の関係)。
【供用時】温度差 ΔT の設定 5ステップ
ステップ1 基準温度(無応力温度)を決める
ΔT は絶対的な気温ではなく「基準温度からの差」です。基準温度とは、その部材に温度応力が生じていない状態の温度、すなわち構造体として拘束が形成された時点の温度を指します。ここを決めずに「ΔT=±20℃」とだけ書いても、根拠を説明できません。
実務では次のいずれかを設計方針として明記します。
- 建設地の年平均気温(もっとも一般的。施工時期を特定しない標準的な扱い)
- 躯体が閉じた時期の月平均気温(施工計画が固まっている場合)
- 工区分けがある場合は、各工区の実際の施工時期の平均気温
参考として、主要都市のおおよその気温です(気象庁の平年値。実設計では必ず建設地の値を確認してください)。
| 地点 | 年平均気温 | 最暖月の平均 | 最寒月の平均 |
|---|---|---|---|
| 札幌 | 約 9℃ | 約 22℃ | 約 −3℃ |
| 仙台 | 約 13℃ | 約 24℃ | 約 2℃ |
| 東京 | 約 16℃ | 約 27℃ | 約 5℃ |
| 名古屋 | 約 16℃ | 約 28℃ | 約 5℃ |
| 大阪 | 約 17℃ | 約 29℃ | 約 6℃ |
| 福岡 | 約 17℃ | 約 29℃ | 約 7℃ |
| 那覇 | 約 23℃ | 約 29℃ | 約 17℃ |
表からわかるとおり、月平均気温の年較差は沖縄を除けばおおむね 22〜30℃です。基準温度を年平均気温にとれば、外気に接する部材の一様な温度差は±11〜15℃程度が出発点になります。ここに日射の影響を上乗せしていきます。
ステップ2 部位ごとに温度を設定する
同じ建物でも、外気に直接さらされる部分・空調された室内・地中では温度変化がまったく違います。全部材を一律の ΔT にすると、拘束の実態とかけ離れた結果になります。
| 部位 | 夏期 ΔT(上昇側) | 冬期 ΔT(下降側) | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 屋根スラブ(露出・断熱なし) | +25〜35℃ | −15〜20℃ | 日射で表面温度が 60〜70℃ に達する |
| 屋根スラブ(断熱・保護あり) | +15〜20℃ | −10〜15℃ | 断熱層で日射の影響が緩和される |
| 外壁・外気に接する柱梁 | +15〜25℃ | −15〜20℃ | 方位と仕上げ色で差が出る |
| パラペット・庇・外部階段 | +25〜35℃ | −15〜20℃ | 三方が外気。もっとも過酷 |
| 室内の柱・梁(空調あり) | 0〜+5℃ | 0〜−5℃ | 室温はほぼ一定 |
| 1階床・地中梁・浅い基礎 | +5〜10℃ | −5〜10℃ | 地表付近は外気の影響が残る |
| 地下階(GL−2m以深) | 0〜±3℃ | 0〜±3℃ | 年間ほぼ一定とみなせる |
日射の見込み方は、気温そのものではなく部材の表面温度で考えます。
- 屋上(アスファルト防水など濃色):気温+25〜35℃(夏期の表面温度 60〜70℃)
- 外壁の濃色仕上げ:気温+15〜25℃/白系・淡色:気温+10〜15℃
- 日射が当たらない北面・庇下:気温+数℃
さらに、屋根スラブや外壁は断面の表裏で温度が違うため、軸方向の伸縮だけでなく「そり(曲げ)」も生じます。断熱がなければ表裏の温度差 10〜20℃ 程度を見込み、部材に温度勾配として与えるのが一般的です。
ステップ3 夏期・冬期の2ケースを必ず流す
温度上昇と温度下降では、応力の向きも危険な部位も変わります。片側だけでは検討になりません。
- 夏期(上昇):建物が伸びる → 外周の柱が外側に押し出され、1階柱脚に大きな曲げ・せん断が生じる
- 冬期(下降):建物が縮む → 引張が生じてひび割れる。RC造では通常こちらが厳しい(コンクリートが引張に弱いため)
ステップ4 乾燥収縮を温度に換算して加算する
RC造の温度応力を検討するとき、乾燥収縮を無視するのは危険側です。乾燥収縮は「縮む」という点で温度降下とまったく同じ挙動をするため、温度差に換算して冬期ケースに加算するのが実務の定番です。
乾燥収縮ひずみの最終値は 6〜8×10⁻⁴ 程度ですが、収縮はきわめてゆっくり進むためクリープで大幅に緩和されます。有効値を 1/2〜1/3 とみて εsh(有効)=2〜4×10⁻⁴ とすれば、温度換算で −20〜−40℃相当。実務では安全側に−15〜−25℃程度を冬期の ΔT に加算する扱いが多く見られます。
たとえば「冬期の温度差 −15℃ + 乾燥収縮相当 −20℃ = 合計 −35℃」のように、収縮側は温度単独よりかなり厳しい値になります。膨張側(夏期)には加算しません。RC造ではこの非対称性が特徴です。
ステップ5 剛性を低減する(クリープ・ひび割れ)
温度応力解析でもっとも重要かつ間違えやすいのがここです。温度変化は年単位でゆっくり進むため、コンクリートのクリープによって応力が大きく緩和されます。弾性剛性のまま解析すると、実際の2〜3倍の応力が出てしまい、柱脚がまったく成立しません。
| 温度変化の種類 | クリープ係数 φ の目安 | 剛性の扱い |
|---|---|---|
| 季節変化(年周期・ゆっくり) | 2〜3 | Ee = Ec/3 〜 Ec/4 |
| 乾燥収縮(数年かけて進行) | 2〜3 | 同上 |
| 日射による日変化(速い) | 0〜1 | Ee = Ec 〜 Ec/2 |
加えて、ひび割れによって部材の曲げ剛性は低下します。梁・スラブの曲げ剛性を全断面剛性の 0.3〜0.5 倍にするなどの低減を併用するのが一般的です。
温度応力は「変形が強制される」タイプの応力(強制変形)です。したがって剛性が下がれば応力も下がるという性質があります。外力の大きさが先に決まっている地震力とは感覚が逆になる点に注意してください。
拘束条件(境界条件)のモデル化
ΔT と同じくらい結果を左右するのが拘束条件です。とくに次の4点を押さえてください。
- 柱脚を完全固定にしない:実際には基礎も地盤も変形します。杭基礎なら水平地盤バネ、直接基礎ならスウェイ・ロッキングバネを入れると拘束度が現実的になります。完全固定のままだと1階柱脚の応力が過大になります。
- 危険な部位は決まっている:伸縮の中心(おおむね平面重心)からもっとも遠い両端部の1階柱・耐震壁が最大となります。ここを重点的に確認します。
- 地下は動かない:地下は温度がほぼ一定で、かつ土に囲まれて動けません。地上が伸縮して地下が動かないため、1階レベルにせん断力が集中します。
- 耐震壁は拘束の要:剛性の高い耐震壁は伸縮を強く拘束します。壁の配置が偏っていると温度によるねじれも生じます。
荷重の組み合わせと照査
- 温度荷重は長期荷重と組み合わせ、短期許容応力度で照査するのが一般的な扱いです(荷重の組み合わせ)。設計方針書に明示しておきます。
- 地震時との組み合わせは通常考えません。大地震ともっとも厳しい温度条件が同時に生じる確率が低いうえ、地震時にはひび割れによって温度応力自体が解放されるためです。
- 応力度の照査だけで終わらせず、ひび割れ幅の検討とひび割れ制御筋の配置まで行うのが本来の目的です。地下外壁・屋根スラブでは漏水や鉄筋腐食に直結します。
建築基準法上の位置づけ
建築基準法施行令83条が定める荷重・外力は、固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風圧力・地震力の5つで、温度荷重は明記されていません。同条2項が土圧・水圧などを「実況に応じて」求めているのと同じく、温度は設計者の判断で必要に応じて考慮する荷重という位置づけです。だからこそ、設定値には根拠と方針の説明が求められます。
実務的には、次のような場合に検討します。
- 平面が長い建物(伸縮目地を設けずに 50〜60m を超える)
- 屋外に露出する大スパンの屋根・スラブ
- 地下と地上、コアと外周で温度条件が大きく異なる建物
- ひび割れが機能上致命的な建物(水槽、地下駐車場、冷凍倉庫など)
- PCa・PC造で、ひび割れを許容できない部材
温度応力を発生させない最も確実な方法は伸縮目地(エキスパンションジョイント)です。RC造では建物長さおおむね 50〜60m ごとに設けるのが目安とされます。目地を設けられる計画なら、解析で追い込むより設計的にずっと有利です。ひび割れの位置を制御するひび割れ誘発目地も併用します。
【施工時】マスコンクリートの温度応力解析
「温度応力解析」がセメント水和熱によるマスコンクリートの検討を指すこともあります。厚い基礎スラブや地下外壁が対象で、設定条件はまったく別物です。マスコンとして扱う目安は次のとおりです(土木学会 コンクリート標準示方書)。
- 広がりのあるスラブ:厚さ 80〜100cm 以上
- 下端が拘束された壁状部材:厚さ 50cm 以上
ここで考える温度差は2種類あります。
| 種類 | 内容 | 生じるひび割れ |
|---|---|---|
| 内部拘束 | 部材の中心部と表面の温度差(主に温度上昇時) | 表面の比較的浅いひび割れ |
| 外部拘束 | 部材全体の平均温度が下がるとき、既設コンクリート・杭・地盤に伸縮を拘束される | 貫通ひび割れ(漏水の原因になる) |
主な入力条件は次のとおりです。
- 打込み温度:外気温+数℃。夏期は 35℃ を超えないよう管理する(コンクリートの温度管理)
- 断熱温度上昇:単位セメント量とセメント種類から設定。普通ポルトランドセメントで最終上昇量 40〜60℃ 程度。低熱・中庸熱・高炉セメントB種で低減できる
- 外気温:打設時期の日平均気温(気象庁の旬平均値など)
- 型枠・養生条件:存置期間、保温・断熱養生の有無
- 有効ヤング係数:材齢による強度発現と若材齢のクリープを考慮し、弾性値の 0.4〜0.6 倍程度
- 外部拘束係数 R:既設コンクリート上で 0.3〜0.6、岩盤上で 0.5〜0.8 程度(部材の L/H 比で変わる)
判定は温度ひび割れ指数で行います。
| 目的 | 温度ひび割れ指数の目安 |
|---|---|
| ひび割れの発生を防止したい | 1.85 以上 |
| ひび割れの発生をできるだけ制限したい | 1.2 以上 1.85 未満 |
| ひび割れは許容するが、幅を制限したい | 0.7 以上 1.2 未満 |
指数が足りない場合の対策は、低発熱セメントへの変更、単位セメント量の低減、プレクーリング・パイプクーリング、打設ブロックの分割と打設間隔の調整、ひび割れ誘発目地、ひび割れ制御筋の増設などです。
設定手順のまとめ(供用時)
- ① 検討対象を切り分ける(供用時の外気温か、施工時の水和熱か)
- ② 建設地の気象データ(気象庁の平年値)を取得する
- ③ 基準温度=年平均気温(または躯体完成時期の月平均気温)を決め、設計方針に明記する
- ④ 部位ごとに夏期・冬期の温度を設定し、ΔT=部位温度 − 基準温度 を求める
- ⑤ 冬期側に乾燥収縮の等価温度(−15〜−25℃程度)を加算する
- ⑥ クリープ・ひび割れを考慮して剛性を低減する(Ee=Ec/3 程度、曲げ剛性 0.3〜0.5 倍)
- ⑦ 柱脚は地盤バネでモデル化し、完全固定を避ける
- ⑧ 「長期+温度」で夏期・冬期の2ケースを解析し、短期許容応力度とひび割れ幅で照査する
- ⑨ 応力集中部(両端部の1階柱、地下との取り合い、耐震壁まわり)を重点的に確認する
よくある失敗
- 弾性剛性のまま解析して応力が出すぎる(最頻出)。クリープ低減を忘れると柱脚がまったく成立しません。
- 柱脚を完全固定にする。地盤バネを入れるだけで応力は大きく下がります。
- 乾燥収縮を忘れる。RC造では温度単独より収縮の寄与が大きいことすらあります。
- 室内も外部も同じ ΔT にする。空調された室内の柱まで ±20℃ にすると実態と合いません。
- 基準温度を決めずに「ΔT=±20℃」とだけ書く。根拠を必ず問われます。
- 地震時と組み合わせる。過剰であり、一般には行いません。
温度応力解析は「厳しく設定すれば安全」という性質のものではありません。ΔT・剛性・拘束条件はセットで整合させる必要があります。ΔT だけ大きく、剛性は弾性のまま、柱脚は完全固定——これがもっともよくある過大評価のパターンです。
よくある質問
Q1. 温度応力解析はどんな建物で必要ですか?
令83条に温度は明記されておらず、温度荷重は設計者が実況に応じて判断する荷重です。実務では、伸縮目地を設けずに平面長さが50〜60mを超える建物、屋外に露出する大スパンの屋根やスラブ、地上と地下・コアと外周で温度条件が大きく異なる建物、ひび割れが機能上致命的な建物(水槽・地下駐車場・冷凍倉庫など)、ひび割れを許容できないPCa・PC部材などで検討します。逆に伸縮目地を設けられる計画であれば、解析で追い込むより設計的に有利です。
Q2. 温度差ΔTは何℃に設定すればよいですか?
全部材を一律にせず、部位ごとに設定するのが基本です。目安として、外気に接する外壁・柱梁で ±15〜25℃、日射を受ける露出屋根スラブやパラペットで夏期 +25〜35℃・冬期 −15〜20℃、断熱された屋根で夏期 +15〜20℃、空調された室内の柱梁で 0〜±5℃、地下階(GL−2m以深)はほぼ 0℃ です。日射を受ける部位は気温ではなく表面温度で考え、屋根や外壁は断面の表裏の温度差 10〜20℃ も温度勾配として与えます。ただしこれらは一般的な目安であり、規準の規定値ではありません。
Q3. 基準温度(無応力温度)はどう決めればよいですか?
ΔTは絶対的な気温ではなく基準温度からの差なので、基準温度の定義が設定条件の出発点になります。基準温度とは、その部材に温度応力が生じていない温度、すなわち構造体としての拘束が形成された時点の温度です。実務では建設地の年平均気温を用いるのが最も一般的で、施工計画が固まっている場合は躯体が閉じた時期の月平均気温を使います。いずれの場合も、採用した基準温度とその根拠を設計方針書に明記してください。
Q4. 乾燥収縮は温度応力と一緒に考える必要がありますか?
必要です。乾燥収縮は「縮む」という点で温度降下とまったく同じ挙動をするため、無視すると危険側になります。乾燥収縮ひずみの最終値は 6〜8×10⁻⁴ 程度ですが、収縮はゆっくり進むためクリープで大幅に緩和されます。有効値を 1/2〜1/3 とみて α=1.0×10⁻⁵ で割ると −20〜−40℃相当となり、実務では安全側に −15〜−25℃ 程度を冬期のΔTに加算する扱いが多く見られます。膨張側(夏期)には加算しません。
Q5. 温度荷重は地震力と組み合わせますか?
一般には組み合わせません。大地震ともっとも厳しい温度条件が同時に生じる確率が低いうえ、地震時にはひび割れによって温度応力自体が解放されるためです。実務では長期荷重と組み合わせ、短期許容応力度で照査する扱いが一般的です。あわせて、応力度の照査だけで終わらせず、ひび割れ幅の検討とひび割れ制御筋の配置まで行うことが本来の目的になります。
まとめ
- 温度応力は σ = R・Ee・α・ΔT。α=1.0×10⁻⁵/℃。応力を決めるのは拘束度と有効剛性。
- ΔT は「基準温度(年平均気温など)からの差」。基準温度の定義が設定条件の出発点。
- 部位ごとに分けて設定する。外気に接する部材で ±15〜25℃、日射を受ける屋根で +25〜35℃、地下はほぼ 0℃ が目安。
- 冬期側には乾燥収縮の等価温度(−15〜−25℃程度)を加算する。
- クリープ・ひび割れによる剛性低減(Ee=Ec/3 程度)が必須。忘れると2〜3倍の過大評価になる。
- 施工時(マスコン)の温度応力は別物。温度ひび割れ指数 Icr で判定する。
- 設定値は必ず根拠とセットで設計方針書に明記する。
本記事の数値は実務で一般的に用いられる目安であり、規準・指針に定められた規定値ではありません。実際の設計にあたっては、建設地の気象データ、日本建築学会の各規準・指針、社内基準、および構造計算適合性判定の運用を確認のうえ、設計者の責任において設定してください。