木材の背割りとは?心持ち材・心去り材との違いと効果
背割り(せわり)とは、柱などの木材に、乾燥による表面割れを防ぐためあらかじめ一面に中心(樹心)近くまで入れる切れ込みのことです。木材は繊維方向・年輪の接線方向・半径方向で収縮率が異なるため、乾燥が進むと内部にひずみが生じ、表面に不規則な割れが入ります。背割りは、その割れをあらかじめ狙った一面に誘導し、コントロールするために古くから行われてきた木造建築の知恵です。
- 背割りは乾燥割れを一面に集中させ、化粧面の割れを防ぐための切れ込み。
- 芯を含む心持ち材に多く用いられ、心去り材や乾燥材(KD材)では省略されることもある。
- 断面欠損はあるが、構造強度への影響は小さいとされ設計上大きくは見込まない。
心持ち材と心去り材
| 心持ち材 | 心去り材 | |
|---|---|---|
| 木取り | 樹心(芯)を含む | 芯を外して取る |
| 強度 | 強い(芯を含む) | やや劣ることも |
| 乾燥割れ | 表面が割れやすい | 割れにくい |
| 歩留まり | 良い(1本から取れる) | 悪い(太い丸太が必要) |
柱には強くて経済的な心持ち材がよく使われますが、芯を含むため乾燥すると表面に大きな割れが入りやすい弱点があります。一方、心去り材は芯の周辺を避けて木取りするため収縮のひずみが小さく割れにくい半面、1本の丸太から取れる本数が少なく、より太い原木が必要になるためコストが高くなりがちです。
背割りの効果と入れ方
背割りを入れておくと、乾燥収縮による割れが背割りの部分に集中し、表面(化粧面)の見えるところに割れが出るのを防げます。割れをコントロールするための工夫です。
背割りは、なるべく人の目に触れにくい面(部屋の隅や壁の中に納まる面など)を選んで入れるのが基本です。深さは断面の中心付近まで、幅は数mm程度の鋸目(のこめ)とすることが多く、木材が完全に乾燥する前の早い段階で入れておくことで、ほかの面に割れが広がるのを抑えます。
強度・乾燥への影響
背割りは断面の一部に切れ込みを入れますが、構造強度への影響は小さいとされ、設計上は大きく見込みません。柱の断面欠損としては軽微であり、曲げ・圧縮に対する検定では通常無視できる範囲とされています。乾燥を促し、施工後の割れ・ねじれを抑える効果があります。心去り材や、あらかじめ人工乾燥させた乾燥材(KD材)では、含水率が下がりきっているため背割りを入れないこともあります。
施工上の注意点
背割りを入れる面は、意匠上目立たない面を選ぶだけでなく、金物の取付け位置や他の部材との取合いも考慮する必要があります。背割り面にホゾ穴や金物孔が重なると、割れがそこから広がって欠損が大きくなる恐れがあるため、position(位置)は構造・施工の両面から検討します。
よくある質問
Q1. 背割りはどの面に入れるのが基本ですか?
完成後に人の目に触れにくい面(壁内に納まる面や部屋の隅側)に入れるのが一般的です。化粧柱では特に、見えがかりの美観を損なわないよう向きを検討します。
Q2. 心去り材やKD材には背割りは不要ですか?
心去り材やKD材(人工乾燥材)は収縮によるひずみが小さいため、背割りを省略する場合があります。ただし樹種や断面寸法によっては割れ対策として入れることもあり、現場や設計者の判断によります。
背割りを入れる面を現場で指示するとき、意匠上目立たない面というだけでなく、金物のビス孔と重ならないかを必ず確認しています。背割りにビス孔がかかると、そこから割れが思わぬ方向に広がってしまうことがあるため、位置の調整には毎回気を使います。
背割りがひび割れを防ぐしくみ(図解)
なぜ心持ち材は必ず割れるのでしょうか。木の断面は年輪の方向(接線方向)に大きく縮み、中心に向かう方向(半径方向)にはあまり縮まないという性質があります。この縮み方の差が引張応力を生み、外周のどこかが必ず裂けます。物理的に避けられない現象なので、「割れないようにする」のではなく「割れる場所を決める」というのが合理的な対処なのです。
背割りは強度を落とすのか
| 力の種類 | 背割りの影響 | 理由 |
|---|---|---|
| 圧縮(柱の軸力) | ほとんど影響なし | 断面積の減少がわずかで、隙間は閉じる方向に働く |
| 曲げ | 小さい(背割りを圧縮側または中立軸付近にすれば) | 引張側に来ないよう向きを管理する |
| せん断 | やや低下 | 断面が分断されるため。仕口部では注意 |
| めり込み | 影響なし | 圧縮方向なので隙間は閉じる |
| 接合部の耐力 | 注意が必要 | ボルト・金物の位置に背割りが来ると効きが落ちる |
柱として使う分には、背割りによる強度低下はほぼ問題にならないというのが一般的な理解です。実際、和室の化粧柱では古くから背割り材が標準的に使われてきました。ただし接合部だけは別で、ホゾ・ボルト・金物の位置と背割りが重なると、その部分の耐力が確実に落ちます。設計・施工では「背割りを壁の中に向ける」だけでなく、金物位置と干渉しないかも確認してください。
現在の主流はどうなっているか
| 材の種類 | 背割り | 特徴 |
|---|---|---|
| 心持ち材の天然乾燥材 | 必要 | 伝統的な和室の化粧柱など |
| KD材(人工乾燥材) | 不要な場合が多い | 含水率20%以下まで乾燥済みで、収縮がほぼ終わっている |
| 高温乾燥(高温セット)材 | 不要 | 表面に圧縮層をつくり割れを抑える |
| 集成材 | 不要 | ひき板を貼り合わせるため、そもそも大きく割れない |
| 心去り材 | 不要 | 木の中心を含まないので割れが発生しにくい |
近年の木造住宅では、背割りのない柱が主流になりました。KD材(人工乾燥材)や集成材が普及したためです。KD材は工場の乾燥室で含水率20%以下まで乾かしてから出荷されるので、現場に入った後の収縮がほとんどありません。集成材にいたっては、薄いひき板を貼り合わせた構成なので、大きな割れが生じる構造そのものがありません。
とはいえ、背割りが「古い技術」というわけではありません。天然乾燥の心持ち材を使う場合には今も必要で、伝統構法や和室の造作、神社仏閣の修繕では現役の技術です。材料の性質に合わせて選ぶ、というのが正しい理解です。
まとめ
- 背割りは乾燥割れを防ぐため、心持ち材にあらかじめ入れる切れ込み。
- 心持ち材は芯を含み強く経済的だが割れやすい。心去り材は割れにくいが歩留まりが悪い。
- 割れを背割りに集中させ化粧面を守る。構造強度への影響は小さい。
- 入れる面は目立たない位置を選び、金物・接合部との干渉にも注意する。