木材の許容応力度|基準強度と長期・短期の計算
木材の許容応力度とは、基準強度Fに所定の係数を掛けて求める、部材が安全に負担できる応力度の限界値のことです。木材は同じ樹種でも等級によって基準強度が異なるうえ、荷重の継続時間によっても強さが変わる特徴があり、長期と短期で係数を使い分けます。
- 木材の許容応力度は基準強度F×係数(長期1.1/3・短期2/3)で求める。
- 基準強度は無等級材・目視等級区分・機械等級区分で値が異なる。
- 木は長時間荷重がかかるほど弱くなるため、長期係数が小さい。
基準強度(Fc・Fb など)
木材の基準強度は、応力の種類ごとに定められています。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| Fc | 圧縮の基準強度 |
| Ft | 引張の基準強度 |
| Fb | 曲げの基準強度 |
| Fs | せん断の基準強度 |
値は樹種・等級で異なります。例:スギ無等級材で Fc≒17.7、Fb≒22.2 N/mm²、ヒノキで Fc≒20.7、Fb≒26.7 N/mm² 程度が目安です。
等級による基準強度の違い
同じ樹種でも、木材は強度を保証する等級区分によって基準強度の扱いが変わります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 無等級材 | 強度等級区分を行わない製材。樹種ごとの基準強度を一律に適用する |
| 目視等級区分材 | 節・割れ・繊維の傾きなどを目視で確認し等級付けした製材 |
| 機械等級区分材 | ヤング係数などを機械測定して等級付けした製材。強度のばらつきが小さい |
目視等級区分材・機械等級区分材は、無等級材より基準強度を割り増して使える場合があります。等級の高い木材ほど、節や欠点が少なく強度のばらつきも小さいため、構造上有利です。使用する木材の等級表示は、含水率区分とあわせてJASの規定に基づき確認します。
長期・短期の計算
短期許容応力度 = 2/3 × F(≒0.67F) F:各応力の基準強度。建築基準法令に基づく(積雪時は別途係数)
木材は荷重が長時間かかるほど壊れやすくなる(クリープ・荷重継続効果)性質があります。そのため、長期(常時かかる固定荷重など)は係数を小さく、短期(地震・台風など短時間)は大きく取ります。
計算例:スギ無等級材(Fc=17.7N/mm²)の柱の長期許容圧縮応力度は、17.7×1.1/3≒6.5N/mm²です。短期なら17.7×2/3≒11.8N/mm²となり、長期の約1.8倍まで負担できます。
座屈・積雪時の考え方
木材の柱は細長い部材が多く、圧縮力を受けると座屈(横に曲がって耐力を失う現象)を起こしやすくなります。そのため圧縮の許容応力度は、細長比(柱の長さと断面の比)に応じて低減した値を用いるのが基本です。また積雪の多い地域では、積雪荷重が長期間かかり続けることを考慮し、長期・短期それぞれに積雪時用の係数を別途定めて評価します。
よくある質問
Q1. 無等級材と等級区分材はどちらを使うべきですか?
どちらも使用できますが、等級区分材は強度のばらつきが管理されているため、より合理的な設計が可能です。近年は機械等級区分材(プレカット材など)の使用が広がっています。
Q2. 長期と短期の許容応力度はどちらが大きいですか?
短期の方が大きくなります。短期は地震・台風など短時間の荷重を想定し、木材が瞬間的に負担できる強さに近い値を採用するためです。
木造の許容応力度計算をチェックするとき、無等級材の数値をそのまま使っている図面に出会うことがあります。プレカット材や機械等級区分材を使う設計では、割増しできる余地がないか確認するだけで断面に無理のない設計になることがあります。
許容応力度を求める流れ(図解)
主な樹種・等級の基準強度
| 樹種・等級 | Fc(圧縮) | Ft(引張) | Fb(曲げ) | Fs(せん断) |
|---|---|---|---|---|
| スギ(無等級材) | 17.7 | 13.5 | 22.2 | 1.8 |
| ヒノキ(無等級材) | 20.7 | 16.2 | 26.7 | 2.1 |
| ベイマツ(無等級材) | 22.2 | 17.7 | 28.2 | 2.4 |
| カラマツ(無等級材) | 20.7 | 16.2 | 26.7 | 2.1 |
| 集成材(E105-F300) | 27.0 | 20.4 | 30.0 | 3.0 |
| 集成材(E120-F330) | 30.6 | 23.4 | 33.0 | 3.6 |
単位はすべてN/mm²です。表からわかるのは、せん断強度Fsが極端に小さいということ。曲げ強度の1/10程度しかありません。木は繊維の束なので、繊維に沿って裂ける方向にはとても弱いのです。梁の端部(せん断力が最大の位置)に大きな欠き込みを入れてはいけない、というのはこの性質が理由です。
許容応力度を下げる要因
| 要因 | 低減の考え方 | 実務での扱い |
|---|---|---|
| 積雪時(多雪区域) | 長期と短期の中間の係数を使う | 長期×1.3程度(積雪の継続期間による) |
| 高含水率(未乾燥材) | 強度が大きく低下 | 使用時の含水率が20%を超える場合は低減 |
| 高温環境 | 常時50℃を超えると低下 | 特殊な用途以外はあまり問題にならない |
| 細長い柱(座屈) | 座屈長さ比λに応じて低減 | λ=ℓk/i で判定し、座屈低減係数ηを乗じる |
| 接合部の欠損 | ボルト孔・ホゾ穴の分だけ有効断面が減る | 有効断面積で応力度を計算する |
木材そのものの許容応力度を丁寧に計算しても、実際の木造住宅で耐力を決めるのは、多くの場合接合部(仕口・継手・金物)です。木は繊維方向には強いのに、繊維に直交する方向(めり込み)と繊維方向のせん断には弱いという性質があり、力を受け渡す接合部ではまさにその弱い方向に力がかかるためです。
だから木造の構造設計では、部材断面の検討と同じかそれ以上に、接合部の金物選定と配置が重要になります。「柱を太くしたのに接合部が同じ」では、建物の耐力はほとんど上がりません。
まとめ
- 木材の基準強度はFc(圧縮)・Ft(引張)・Fb(曲げ)・Fs(せん断)。
- 無等級材・目視等級区分材・機械等級区分材で基準強度の扱いが異なる。
- 長期=1.1/3×F、短期=2/3×F で許容応力度を求める。
- 柱は座屈による低減、積雪地域は積雪時係数も考慮する。