鉄骨造(S造) 公開日:2026年6月14日 更新日:2026年7月6日

JIS鋼材とは?建築で使う主要鋼材の規格記号と特性一覧

JIS鋼材とは?建築で使う主要鋼材の規格記号と特性一覧

JIS鋼材とは、日本産業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)に適合した鋼材のことです。寸法・形状の許容差、化学成分、引張強さ・降伏点などの機械的性質が規格で細かく定められており、鉄骨造の設計・施工はこのJIS鋼材を前提に行われます。建築基準法上も、JIS適合鋼材は指定建築材料として基準強度が告示で与えられているため、設計者は「JISの何という規格の、どの記号の鋼材か」を指定するだけで、必要な品質と強度が担保される仕組みになっています。

この記事の要点
  • JIS鋼材は日本産業規格に適合した鋼材で、建築の構造設計はこれを前提とする。
  • SS400・SM・SN・STK・STKRなど、記号を見れば鋼材の種類と強度級がわかる。
  • 鋼種ごとに基準強度Fが定まり、許容応力度の計算のもとになる。現物はミルシートで確認する。

建築で使う主要なJIS鋼材

建築の鉄骨工事で登場する鋼材は、おおむね次の表の規格に集約されます。まずは記号と用途の対応を押さえましょう。

記号規格番号名称・用途
SS400JIS G 3101一般構造用圧延鋼材(汎用・二次部材)
SM400〜570JIS G 3106溶接構造用圧延鋼材
SN400・SN490JIS G 3136建築構造用圧延鋼材(主要部材)
STKJIS G 3444一般構造用炭素鋼鋼管(円形)
STKRJIS G 3466一般構造用角形鋼管
SSCJIS G 3350一般構造用軽量形鋼(リップ溝形鋼など)

このうちSN材(建築構造用圧延鋼材)は、阪神・淡路大震災での鋼構造の被害を踏まえ、建築専用に整備された規格です。降伏点の上限管理や降伏比の規定など、地震時に骨組が粘り強く変形できる(塑性変形能力を確保する)ための性能が盛り込まれており、現在の建築の柱・梁など主要構造部材にはSN材を用いるのが標準的です。SS材は最も歴史の古い汎用規格で、小梁・母屋・胴縁などの二次部材に、SM材は溶接性を重視する部位に使われます。

注意

SS400は溶接性や靭性(粘り強さ)の規定が緩いため、溶接を多用する主要構造部材への使用は慎重に判断すべきとされています。柱・梁の主材にはSN材(溶接部はB種・C種)を指定するのが現在の実務の一般的な考え方です。

基準強度F(許容応力度の基礎)

各鋼材には告示で基準強度Fが定められ、許容応力度の計算に使います。Fはおおむね降伏点(降伏耐力)に対応する値で、たとえば長期許容引張応力度はF/1.5、短期はFとして算定されます。SS400ならF=235N/mm²なので、長期許容引張応力度は235÷1.5≒156N/mm²という計算になります(板厚で変わるため下表は40mm以下の目安)。

鋼種基準強度F(N/mm²)
SS400・SN400・SM400・STK400・STKR400235
SN490・SM490・STK490・STKR490325
SM520355
SM570400

記号の読み方

鋼材記号はアルファベットと数字の組み合わせで、意味を知れば初見の材料でもおおよその素性がわかります。

  • 頭の文字=鋼材の種類(SS=一般構造用、SN=建築構造用、SM=溶接構造用、STK・STKR=構造用鋼管)。
  • 数字=引張強さの下限値の級(400・490など、単位はN/mm²)。降伏点ではない点に注意。
  • 末尾のA・B・C=品質区分(SN材などで溶接性・靭性のグレード。Aは溶接しない部材用、B・Cは溶接部材用、Cは板厚方向の性能も保証)。

たとえば「SN490B」なら、建築構造用で引張強さ490N/mm²級、溶接部材に使えるB種と読み解けます。

ミルシートでの確認

実際に使う鋼材は、ミルシート(鋼材検査証明書)でJIS適合・化学成分・機械的性質(降伏点・引張強さ・伸びなど)を確認します。ミルシートは製鋼メーカーが発行する成績書で、鉄骨製作工場(ファブ)から工事監理者に提出され、設計図書で指定した材質どおりの鋼材が使われていることを担保します。工事監理では、ミルシートの記載と設計図書の材質指定を突き合わせて照合するのが基本です。

あわせて読みたい

記号の違いは「鋼材の種類(SS・SN・SM)」、構造用鋼材は「構造用鋼材とSTKR」、許容応力度は「許容応力度計算とは?」をどうぞ。

よくある質問

Q1. SS400とSN400Bはどちらも「400」ですが、何が違うのですか?

引張強さの級は同じ400N/mm²ですが、SN400Bには降伏点の上限、降伏比の上限、シャルピー吸収エネルギー(靭性)など、耐震設計に必要な追加規定があります。地震エネルギーを塑性変形で吸収する主要部材には、こうした保証のあるSN材が適しています。

Q2. JISに適合しない鋼材は建築に使えないのですか?

原則はJIS適合材ですが、国土交通大臣の認定を受けた材料(大臣認定材)であれば使用できます。高強度鋼やTMCP鋼の厚板など、認定ベースで流通する材料もあります。いずれも設計図書で材質を明示し、証明書類で確認することが前提です。

実務のワンポイント

ミルシートを受け取ったとき、記号の末尾だけでなく降伏比やシャルピー吸収エネルギーの欄まで見るようにしています。SS400とSN400Bを図面上で読み違えたまま発注されかけた図面に、過去に出会したことがあるからです。

まとめ

  • JIS鋼材は日本産業規格に適合した鋼材。建築はこれを前提に設計・施工する。
  • 主要規格はSS400・SM・SN・STK・STKR・SSCなど。記号で種類と強度がわかる。
  • 各鋼材に基準強度Fが定まり、ミルシートで材質を確認する。