鉄骨造(S造) 公開日:2026年6月14日 更新日:2026年7月22日

軟鋼とは?硬鋼との違い・炭素量と引張強さ

軟鋼とは?硬鋼との違い・炭素量と引張強さ

軟鋼とは、炭素量が少なく軟らかくて粘り強い(延性に富む)炭素鋼のことです。鉄骨造に使うSS400・SN400などはこの軟鋼にあたり、建築の主役となる鋼材です。地震国である日本の建築鉄骨では、粘り強く変形できる軟鋼の性質が構造の安全性を支える重要な要素になっています。

この記事の要点
  • 軟鋼は炭素量が少なく延性に富む炭素鋼。引張強さ490N/mm²未満が目安。
  • 降伏後も粘り強く変形できる性質が、地震時のエネルギー吸収に役立つ。
  • より高い強度が必要な部材には高張力鋼を使い分ける。

炭素量による分類

炭素鋼は、含まれる炭素の量で性質が大きく変わります。炭素が多いほど硬く強くなりますが、もろく(延性が低く)なります。

区分炭素量の目安性質
軟鋼(低炭素鋼)約0.12〜0.30%軟らかく延性に富む。溶接・加工しやすい
硬鋼(中・高炭素鋼)約0.30〜0.60%以上硬く強いが、もろく溶接しにくい

軟鋼の引張強さ

軟鋼は一般に引張強さが490N/mm²未満の鋼材を指します。SS400・SN400(400N/mm²級)が代表例です。これに対し、引張強さ490N/mm²以上は高張力鋼と呼ばれます。

応力とひずみから見る延性

軟鋼の大きな特徴は、引張試験で応力度とひずみの関係を見るとよくわかります。軟鋼は力を加えていくと、ある応力度(降伏点)に達したところで、応力度がほとんど増えないままひずみだけが大きく進む「降伏棚」と呼ばれる領域が現れます。この間、材料は破断せずに大きく変形し続けることができ、これが軟鋼の粘り強さ(延性)の正体です。硬鋼や高強度の材料では、この降伏棚がほとんど見られず、降伏後すぐに破断に近づく傾向があります。

硬鋼との違い

  • 軟鋼:炭素が少なく延性大。曲げや溶接に強く、地震で粘って変形できる。建築鉄骨向き。
  • 硬鋼:炭素が多く硬くて強いが、もろい。ピアノ線・工具・PC鋼材など特定用途向き。

建築で軟鋼が使われる理由

  • 延性(粘り):地震時に塑性変形してエネルギーを吸収できる。
  • 溶接性:炭素が少なく溶接割れが起きにくい。
  • 加工性:曲げ・孔あけなどの加工がしやすい。

一方で、大スパンの梁や超高層建物の柱など、より大きな強度が必要な部材には、軟鋼より引張強さの高い高張力鋼を使い分けることもあります。高張力鋼は強度が高い分、一般に延性は軟鋼よりやや劣るため、部位や求められる性能に応じて選定します。

よくある質問

Q1. SS400とSN400はどちらも軟鋼ですか?

はい、どちらも引張強さ400N/mm²級の軟鋼です。SN材は建築構造用に降伏比や靱性などの規定が追加されたもので、SS材は一般構造用として広く使われます。

Q2. 軟鋼は硬鋼より弱いのですか?

強度(引張強さ)だけを見れば硬鋼の方が高い場合が多いですが、建築で重視される「粘り強さ(延性)」では軟鋼が優れています。地震時に粘って倒壊を防ぐという観点では、軟鋼の方が建築構造材として適しています。

実務のワンポイント

鋼材の材料試験成績書をチェックするときは、引張強さだけでなく降伏棚の有無を意識して見ている。数値上は軟鋼でも成分によって粘りが乏しいロットがまれにあり、溶接割れの報告を受けてから特に注意するようになった。

あわせて読みたい

強い鋼は「高張力鋼」、鋼材の分類は「普通鋼とは」、記号は「鋼材の種類」、変形の基礎は「応力度とひずみ」をどうぞ。

炭素量と性質の関係(図解)

炭素量と強度・粘り(延性)の関係 炭素量(%)→ 多い 性能 強度(硬さ) 粘り(延性・溶接性) 建築が使う範囲 軟鋼(C 0.3%以下) 0.1 0.3 0.6 1.0 建築は「強さ」より「粘り」を優先するので、炭素の少ない軟鋼を使う
炭素を増やせば硬く強くなるが、そのぶん粘りと溶接性が失われる。建築構造は地震で変形しながら耐えることが前提なので、あえて炭素の少ない軟鋼を選ぶ。

建築で使う軟鋼の一覧

規格記号正式名称特徴と使いどころ
SN400B / SN400C建築構造用圧延鋼材建築専用。降伏点の上限も規定され、溶接性・板厚方向特性が保証される。主要な柱・梁の標準
SN490B / SN490C建築構造用圧延鋼材SN400より強い(F=325)。大スパン・高層で使う
SS400一般構造用圧延鋼材もっとも一般的だが溶接性の保証がない。二次部材・小物向き
SM490A溶接構造用圧延鋼材溶接性を保証。橋梁など土木で多用
SSC400一般構造用軽量形鋼薄板の冷間成形材。溶接性の保証なし
STKR400 / 490一般構造用角形鋼管柱に多用。BCR・BCPとの違いに注意
なぜSNには「降伏点の上限」があるのか

耐震設計では「柱より梁が先に降伏する」「母材より接合部が強い」といった壊れる順番を設計者が決めています。ところが鋼材が想定より強すぎると、この順番が入れ替わって、粘り強く壊れるはずが脆く壊れてしまいます。そこで建築用のSN材だけは、降伏点の下限だけでなく上限も規定し、さらに降伏比(降伏点÷引張強さ)を80%以下に抑えて、確実に狙い通りの順番で降伏するようにしています。

まとめ

  • 軟鋼は炭素量が少なく延性に富む炭素鋼。引張強さ490N/mm²未満が目安。
  • 降伏棚と呼ばれる領域で粘り強く変形でき、地震エネルギーを吸収できる。
  • 硬鋼は炭素が多く硬く強いがもろい。
  • 建築鉄骨は延性・溶接性に優れる軟鋼(SS400・SN400など)が主役。より高強度が必要な部位では高張力鋼を使い分ける。