構造力学の基礎 公開日:2026年6月15日 更新日:2026年7月3日

力とは?移動・回転・変形を起こす作用をわかりやすく解説【構造力学の基礎】

力とは?移動・回転・変形を起こす作用をわかりやすく解説【構造力学の基礎】

「力」とは、物体に移動・回転・変形を起こす作用のことです。私たちの日常にも、重力・風・水圧などさまざまな「力」が存在します。建築・土木の構造設計においても、力の概念はすべての計算の出発点となる、もっとも基礎的な知識です。

この記事では、次の内容をできるだけわかりやすく・丁寧に解説します。

  • 力の定義と3要素
  • 力がもたらす3つの作用(移動・回転・変形)
  • 力のベクトル表現と合成・分解
  • モーメントとは何か
  • 建築・土木における力の実例
この記事のねらい

構造力学をこれから学ぶ方、復習したい方にも最適な入門記事です。「移動・回転・変形」という3つの作用を軸に、力の全体像をつかみましょう。

1. 力とは何か?定義と基本概念

力の定義の図解。物体に作用する力が移動・回転・変形を起こすイメージ
図1 力とは、物体に移動・回転・変形を起こす作用。

力(ちから)とは、物体に移動・回転・変形のいずれか(またはその組み合わせ)を生じさせる作用のことです。物理学では、力はニュートンの運動の法則に基づいて定義されます。

F = m・a F:力(N〔ニュートン〕) m:質量(kg) a:加速度(m/s²)

力の単位

構造設計の実務では、次の単位が使われます。

単位読み方使用場面
NニュートンSI単位系の基本単位
kNキロニュートン建築構造計算(主流)
kN/mキロニュートン毎メートル分布荷重(線荷重)
kN/m²キロニュートン毎平方メートル面荷重・応力度
POINT

1 kN = 1,000 N です。重力加速度を 9.8 m/s² とすると、約 102 kgf ≒ 1 kN。実務では概算として 1 kN ≒ 100 kgf(0.1 tf) と覚えておくと便利です。

2. 力の3要素

力の3要素の図解。大きさ(矢印の長さ)・向き(矢印の方向)・作用点を示す
図2 力の3要素=大きさ・向き・作用点。

力を正確に表現するには、次の3つの要素が必要です。この3要素が決まって初めて、力が一意に定まります。

  • ① 大きさ(マグニチュード)…力がどれだけ強いか。単位は N または kN。
  • ② 向き(方向)…力がどちらの方向に作用しているか。上下・左右・斜めなど、ベクトルの方向成分で表す。
  • ③ 作用点(作用位置)…力がどこに作用しているか。同じ大きさ・同じ向きでも、作用点が異なれば力の効果は変わる。
まとめると

力 = 大きさ + 向き + 作用点。この3つを「力の3要素」と呼びます。

3. 力がもたらす3つの作用

力がもたらす3つの作用の図解。移動(並進)・回転(モーメント)・変形(ひずみ)
図3 力がもたらす3つの作用=移動・回転・変形。

力が物体に作用すると、次の3つの作用が生じます。これが本記事の核心です。

① 移動(並進運動)

力の方向に物体が平行移動する作用です。

  • 水平力(地震力・風圧力)による建物の水平移動
  • 鉛直荷重による基礎の沈下
  • 荷重を受けた梁のたわみ(鉛直方向の移動)

物体の重心に力が作用する場合、回転は生じず純粋な並進移動のみが起きます。

② 回転(モーメント)

力の作用線が物体の重心を通らない場合、または複数の力が組み合わさる場合に、物体が回転しようとする作用が生じます。この回転を起こそうとする力の作用をモーメントと呼びます(詳しくは第6章・「力のモーメント」)。

M = F × d M:モーメント(kN・m) F:力(kN) d:作用線から回転中心までの距離(m)=アーム長
  • 柱の頂部に水平力 → 柱脚に回転(曲げモーメント)が生じる
  • 片持ちスラブの先端に荷重 → 根元に曲げモーメントが発生
  • 基礎に偏心荷重 → 転倒モーメントの発生

③ 変形(ひずみ・応力)

力が作用すると、物体内部に応力(内力)が生じ、それに伴いひずみ(変形)が発生します。変形の種類は、力の作用方向によって異なります。

変形の種類力の作用発生する応力建築での例
軸方向変形(伸び・縮み)引張力・圧縮力軸応力度(σ)柱の圧縮、ブレースの引張
せん断変形せん断力せん断応力度(τ)梁端部のせん断
曲げ変形(たわみ)曲げモーメント曲げ応力度(σ)梁・スラブのたわみ
ねじれ変形ねじりモーメントねじり応力度偏心荷重を受ける梁

応力とひずみの関係(フックの法則)

弾性範囲内では、応力とひずみは比例します(→「応力度とひずみ・ヤング係数」)。

σ = E・ε σ:応力度(N/mm²) E:ヤング係数(弾性係数) ε:ひずみ
ヤング係数の目安
  • コンクリート(Fc24):E ≒ 25,000 N/mm²(25 kN/mm²)
  • 鋼材(SS400・SN400):E = 205,000 N/mm²(205 kN/mm²)

4. 力の表し方(ベクトル)

力のベクトル表現の図解。矢印の長さが大きさ、向きが方向。x成分とy成分への分解
図4 力は矢印(ベクトル)で表す。長さ=大きさ、向き=方向。

力は大きさと方向を持つ量(ベクトル量)です。矢印で表現し、矢印の長さが大きさ、矢印の向きが力の方向を示します。

スカラーとベクトルの違い

量の種類定義
スカラー量大きさのみを持つ量質量・温度・時間・面積
ベクトル量大きさと方向を持つ量力・変位・速度・加速度

力のベクトル表現

2次元(平面)では、力 F を x 成分と y 成分に分けて表します。

Fx = F・cosθ / Fy = F・sinθ θ:x軸(水平)からの角度

5. 力の合成と分解

力の合成と分解の図解。平行四辺形の法則による合力、x・y方向への分解
図5 力の合成(合力)と分解。

力の合成

複数の力が一点に作用するとき、それらをまとめて1つの力(合力)に置き換えることができます。平行四辺形の法則を用いるか、x・y 成分ごとに足し合わせます。

Rx = ΣFxi / Ry = ΣFyi
R = √( Rx² + Ry² ) R:合力の大きさ Rx・Ry:合力のx・y成分

力の分解

1つの力を、互いに直交する2方向(x・y)の力に分解することを力の分解といいます。斜め荷重の計算や、トラス部材の軸力計算でよく使われます。

6. モーメントとは?(回転を起こす力の作用)

モーメントの図解。力Fとアーム長dの積で回転作用M=F×dが決まる
図6 モーメント M = F × d(力 × アーム長)。

モーメントは「回転を起こそうとする力の作用」であり、構造設計では非常に重要な概念です。

M = F × d F:力 d:アーム長(作用線から回転中心までの距離)

モーメントの正負の定義

一般に、時計回りを正(+)、反時計回りを負(-)とする場合と、その逆の場合があります。計算書内で統一することが重要です。

建築構造でのモーメントの例

片持ち梁の根元の曲げモーメント:先端に集中荷重 P が作用する長さ L の片持ち梁では、根元の曲げモーメントは次のとおりです。

M = P × L

単純梁の中央の曲げモーメント:スパン L の単純梁の中央に集中荷重 P が作用する場合。

M = P・L / 4

等分布荷重 w(kN/m)が作用する場合。

M = w・L² / 8

各種はりの公式は「はりの公式一覧」、図示の方法は「Q図・M図の描き方」も参考にしてください。

7. 力の釣り合いとは?

力の釣り合いの図解。x方向・y方向の力の総和とモーメントの総和がいずれもゼロ
図7 力の釣り合い(ΣFx=0、ΣFy=0、ΣM=0)。

物体が静止(変形していない)状態にあるとき、物体に作用するすべての力は釣り合っています。これを力の釣り合いといいます。釣り合い条件は、次の3式で表されます(2次元の場合)。

ΣFx = 0 / ΣFy = 0 / ΣM = 0 x方向・y方向の力の総和=0、任意の点まわりのモーメントの総和=0

この3条件が、構造力学における静定構造の解法の基本となります。

POINT

釣り合い式は構造計算のすべての基礎です。反力の計算、応力計算、変位計算のすべてがこの3式から始まります。

8. 建築・土木における力の種類

実際の建築・土木構造物には、さまざまな種類の力(荷重)が作用します(→詳しくは「固定荷重・積載荷重の拾い方」「外力(荷重)とは」)。

荷重の分類

荷重の種類具体例作用の特徴
固定荷重(G)建物自重(コンクリート・鉄骨・仕上げ材等)常時・鉛直・不変
積載荷重(P)人・家具・設備機器等常時・鉛直・変動
積雪荷重(S)屋根への積雪季節的・鉛直
風圧力(W)建物外壁面への風の圧力水平・変動
地震力(E)地盤の振動による慣性力水平・動的
土圧・水圧地下外壁への土・水の圧力水平・常時

荷重の作用形式

作用形式説明単位
集中荷重一点に作用する力kN
分布荷重(線荷重)長さ方向に分布する力kN/m
面荷重面積に分布する力kN/m²

9. よくある質問

Q1. 力とエネルギーの違いは?

力は「作用そのもの(ベクトル量)」であり、エネルギーは「力が物体を動かした仕事量(スカラー量)」です。

W = F × δ W:仕事(エネルギー) F:力 δ:変位 単位は N・m = J(ジュール)

Q2. 内力と外力の違いは?

外力は外部から物体に作用する力(荷重・反力など)、内力は外力によって部材内部に生じる力(軸力・せん断力・曲げモーメントなど)です。構造設計では、外力から内力(応力)を求め、内力が部材の許容値以内に収まるかを確認します。

Q3. 「力の流れ」とは何ですか?

建築構造において「力の流れ」とは、荷重がスラブ → 梁 → 柱 → 基礎 → 地盤へと伝達されていく経路のことです。構造計画の根本は、この力の流れを明確にすることにあります。

Q4. kN と tf(トン力)の換算は?

1 tf ≒ 9.8 kN ≒ 10 kN

実務の概算では 1 tf ≒ 10 kN と覚えておくと便利です。

実務のワンポイント

構造計算ソフトへ荷重を入力するとき、大きさと向きは意識しても作用点(節点位置)のズレは見落としがちです。特に片持ち部分は作用点のわずかなずれが曲げモーメントに直結するので、入力後は反力の合計と実際の荷重合計を必ず突き合わせて検算しています。

10. まとめ

項目内容
力の定義移動・回転・変形を起こす作用
力の3要素大きさ・向き・作用点
移動並進運動。重心への力の作用で純粋に発生
回転モーメント M = F × d で表現
変形応力・ひずみ。フックの法則(σ = E・ε)で表現
釣り合い条件ΣFx = 0、ΣFy = 0、ΣM = 0

力の概念は、構造力学・建築設計・土木設計のすべての基盤です。「移動・回転・変形」という3つの作用と、力の3要素・モーメント・釣り合い条件をしっかり理解することで、構造力学の学習が大きく前進します。

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力の3要素」「力の合成」「力の分解」「力のモーメント」「応力(軸力・せん断・曲げ)」「反力の求め方」をどうぞ。