H形鋼の強軸・弱軸|縦使い・横使いの関係
H形鋼は、どの向きで曲げるかによって強さが大きく変わります。曲げに強い向きが強軸、弱い向きが弱軸です。梁の縦使い・横使いだけでなく、柱の座屈方向にも直結する重要な考え方なので、使い方とあわせて理解しましょう。
- 強軸は断面二次モーメントIxが大きく曲げに強い向き、弱軸はIyが小さく弱い向き。
- 梁は必ず縦使い(強軸で曲げる)にする。横使いは強度が大幅に落ちる。
- 柱の座屈は弱軸方向から生じやすいため、弱軸の座屈長さの管理が重要。
強軸・弱軸とは
- 強軸(x軸):断面二次モーメントが大きく、曲げに強い向き。
- 弱軸(y軸):断面二次モーメントが小さく、曲げに弱い向き。
材料が中立軸から遠いほど曲げに強いので、上下フランジが中立軸から離れる向き=強軸になります。断面二次モーメントは距離の2乗に効くため、せいの大きいH形鋼では強軸と弱軸の差が非常に大きくなるのが特徴です。
縦使い・横使いの関係
| 使い方 | 向き | 強さ |
|---|---|---|
| 縦使い | せいを縦に=強軸で曲げる | 強い(梁の正しい向き) |
| 横使い | 寝かせて=弱軸で曲げる | 弱い |
同じH形鋼でも、せいを縦にして使う(縦使い)と曲げに強く、寝かせて使う(横使い)と何分の一にも弱くなります。梁は必ず縦使い(強軸で曲げる)が基本です。
強軸・弱軸の断面二次モーメントの違い
細幅のH形鋼では、強軸Ixが弱軸Iyの10倍以上になることもあります。
| 呼称(mm) | 強軸Ix(cm⁴) | 弱軸Iy(cm⁴) | Ix/Iy |
|---|---|---|---|
| H-400×200×8×13(細幅) | 23700 | 1740 | 約13.6 |
| H-400×400×13×21(広幅) | 66600 | 22400 | 約3.0 |
細幅は強軸に大きく偏るため向きが決まった梁向き、広幅は弱軸も大きいので2方向に強い柱向きです。系列ごとの幅と用途の関係は「広幅・中幅・細幅」で詳しく解説しています。
弱軸と座屈長さ・断面二次半径
柱のように圧縮力を受ける部材では、曲げ性能そのものよりも座屈のしやすさが問題になります。座屈のしやすさは断面二次モーメントIと断面積Aから求まる断面二次半径 i=√(I/A)で評価され、iが小さい方向ほど座屈が起きやすくなります。
H形鋼を柱に使う場合、強軸方向の座屈は梁との剛接合などで拘束しやすい一方、弱軸方向は拘束が少なくなりがちです。そのため柱の座屈検討では弱軸方向の座屈長さと細長比が支配的になることが多く、これも柱に広幅系列(弱軸のiが相対的に大きい断面)が好まれる理由の一つです。
梁を縦使いしても、弱軸方向は弱いため、圧縮フランジが横に倒れる横座屈が起きます。これを防ぐのが横補剛(小梁・床で圧縮フランジを支える)です。横座屈は曲げ材、細長比による座屈は圧縮材(柱)の問題ですが、どちらも「弱軸方向の弱さ」が原因という点は共通しています。
現場での注意点
鉄骨の建方では、梁を誤って横使い(弱軸使い)に近い向きで架けてしまうと、想定した曲げ耐力・たわみ性能が得られません。図面には梁の向き(せいの方向)が明示されるため、建方・検査では強軸方向が設計どおりかを確認することが重要です。またブレース材として使う場合も、軸力を受ける方向と部材の座屈しやすい方向(弱軸)の関係を意識して断面を選定します。
Q1. なぜ梁の断面性能は強軸で語られることが多いのですか?
梁は基本的に縦使いで、荷重(鉛直荷重)による曲げが強軸方向に生じるためです。梁の設計で断面係数Zやたわみを検討する際は、特に断りがなければ強軸(Zx・Ix)の値を指します。
Q2. 弱軸方向にも曲げが生じることはありますか?
あります。地震時に梁が2方向から力を受ける場合や、小梁の取り付き部などでは弱軸方向の曲げ(2軸曲げ)を考慮することがあります。この場合は強軸・弱軸それぞれの許容曲げ耐力を組み合わせて検討します。
建方の立会いで一度ヒヤリとしたのは、図面の指定と逆向きに梁が仮置きされていたことでした。強軸・弱軸は図面上では当たり前でも、現場ではせいの向きを目視でひと目確認する癖をつけてから、この手のミスに気づきやすくなりました。
まとめ
- 強軸は曲げに強い向き、弱軸は弱い向き。Ixが大きく、Iyが小さい。
- 梁は縦使い(強軸で曲げる)が基本。横使いは大幅に弱い。
- 細幅は強軸偏重で梁向き、広幅は2方向に強く柱向き。弱軸方向は横座屈に注意。
- 柱の座屈検討は弱軸方向の細長比が支配的になりやすく、断面選定の重要な視点になる。