I形鋼とは?規格・断面係数とH形鋼との違い
I形鋼(アイがたこう、英語表記:I-beam/I-section)とは、断面が「I」の形をした形鋼です。上下のフランジとそれをつなぐウェブから成る構成はH形鋼と共通していますが、フランジの形状が異なり、現在の建築ではごく限られた用途にしか使われません。かつては鉄骨造の梁材として広く使われた歴史がありますが、断面性能に優れるH形鋼が普及したことで主役の座を譲りました。
- I形鋼はフランジ内側にテーパー(勾配)がある形鋼で、規格はH形鋼と同じJIS G 3192。
- フランジ幅が狭く、弱軸方向の断面性能・横座屈耐力でH形鋼に劣る。
- 現在はクレーン走行梁など、フランジを車輪が転動する特定用途に使われる。
I形鋼の形状
I形鋼は、上下フランジの内側に勾配(テーパー)がついており、ウェブとの付け根が厚く、先端に向かって薄くなる形です。これに対しH形鋼はフランジの内外面が平行で厚みが一定です。テーパーがある分、フランジ先端側の材料が断面二次モーメントに寄与しにくく、同じ材料量でもH形鋼より効率がやや劣る一因になっています。
規格
I形鋼もH形鋼と同じくJIS G 3192(熱間圧延形鋼の形状、寸法、質量及びその許容差)に規定されています。ただし現在はH形鋼が主流となり、I形鋼として流通するサイズはごくわずかです。設計でサイズを選ぶ際は、必ず鋼材メーカーの鋼材ハンドブックで在庫・製造可否を確認する必要があります。
なぜテーパーがあるのか
I形鋼は熱間圧延(赤熱した鋼片をロールで挟んで延ばす製法)でつくられます。フランジを完全に平行な厚みへ仕上げるには複雑な圧延工程が必要で、古くはテーパー形状のほうが圧延しやすかったという製造上の背景があります。その後、圧延技術の進歩によってフランジが平行なH形鋼が量産できるようになり、扱いやすさ・接合のしやすさから建築の主流はH形鋼へ移っていきました。
H形鋼との違い
| I形鋼 | H形鋼 | |
|---|---|---|
| フランジ内側 | 勾配あり(テーパー) | 平行 |
| フランジ幅 | 狭い | 広い |
| 弱軸の強さ | 小さい | 大きい |
| 接合 | 傾斜座金が必要なことも | 平行で接合しやすい |
| 用途 | クレーン走行梁など | 柱・梁全般 |
特にボルト接合では、フランジ内側が平行でないI形鋼は傾斜座金(テーパーワッシャー)を挟まないと座金・ナットが密着しないことがあり、施工の手間が増える点も実務上の弱点です。
断面係数の特徴
I形鋼はフランジ幅が狭いため、弱軸の断面係数が小さく、横座屈に弱い傾向があります。強軸の曲げ性能は確保できますが、横方向の安定性で不利なため、一般の梁にはフランジが広く扱いやすいH形鋼が選ばれます。同じせい(高さ)のH形鋼と比べると、I形鋼はフランジ幅が狭い分だけ断面二次モーメント・断面係数とも小さくなる傾向があり、同等の耐力を得るにはより大きなせいが必要になることもあります。
用途
I形鋼は、フランジ下面に車輪が走るクレーンの走行梁(ガーダー)やモノレール・ホイストのレールなど、特定の用途で使われます。クレーン走行梁では、車輪が転動するフランジ上面の局部的な変形・摩耗に対する耐久性が求められるため、あえてフランジが厚く安定したI形鋼の形状が選ばれてきた経緯があります。近年は同じ用途でもH形鋼にレール受けを追加した構成に置き換わる例もありますが、既存建物の改修では現状のI形鋼サイズを踏襲する必要がある点に注意が必要です。
「I形鋼」と「H形鋼」を混同し、断面性能をH形鋼の数値で見積もってしまう間違いに注意してください。両者は形状も断面性能表もまったくの別物です。またI形鋼は流通サイズが少なく、改修工事で同一サイズが手に入らないこともあるため、選定時は早めに鋼材メーカーへ在庫を確認しましょう。
Q1. I形鋼はもう製造されていないのですか?
完全に製造中止というわけではありませんが、建築向けの流通サイズは非常に限られています。クレーン走行梁のような専用用途向けに、必要に応じて生産されているのが実情です。
Q2. I形鋼とH形鋼、どちらを選ぶべきですか?
一般の柱・梁であれば、入手性・コスト・断面性能のすべてで有利なH形鋼を選ぶのが基本です。I形鋼は、フランジ上面を車輪が転動するクレーン走行梁のような、形状そのものに理由がある用途に限って検討します。
既存のクレーン走行梁を改修する案件で、同一サイズのI形鋼が入手できず苦労した経験がある。図面通りにI形鋼で更新したくても、実際には代替断面やレール受けの追加で対応せざるを得ないことがあり、早い段階での在庫確認が欠かせない。
まとめ
- I形鋼はフランジ内側に勾配がある形鋼。規格はH形鋼と同じJIS G 3192。
- H形鋼に比べフランジが狭く、弱軸・横座屈に弱い。
- 現在はクレーン走行梁など特定用途に限られ、一般部材はH形鋼が主流。
- 流通サイズが少ないため、選定時は鋼材メーカーへの在庫確認が欠かせない。