鉄骨造(S造) 公開日:2026年6月14日 更新日:2026年7月6日

H形鋼のフランジとウェブ|厚み・サイズ表記・覚え方

H形鋼のフランジとウェブ|厚み・サイズ表記・覚え方

H形鋼は、上下の水平な板=フランジ(flange)と、それをつなぐ垂直な板=ウェブ(web)からできています。フランジは英語で「鍔(つば)」、ウェブは「つなぐ膜」を意味し、名前どおりの形と役割を持つ部材です。この2つがどのように力を分担し、なぜ厚みが違うのか、サイズ表記や覚え方とあわせて整理します。

この記事の要点
  • フランジは曲げを、ウェブはせん断を負担する。役割が違うから厚みも違う。
  • フランジは厚く(t2)、ウェブは薄い(t1)のが基本。サイズ表記は3番目がt1、4番目がt2。
  • フランジとウェブの境目にはフィレット(丸み)があり、応力集中を和らげている。

フランジとウェブの役割

フランジ(flange)ウェブ(web)
位置上下の水平な板中央の垂直な板
主な役割曲げを負担(圧縮・引張)せん断力を負担
厚みの記号t2(フランジ厚)t1(ウェブ厚)

中立軸から遠いフランジが曲げに、中央のウェブがせん断に効きます。梁に曲げモーメントが作用すると、上フランジは圧縮、下フランジは引張の応力を受け、この2枚の力の偶力(作用点間の距離×力)が抵抗モーメントになります。一方ウェブは、上下端付近では曲げ応力もわずかに受けますが、断面の大半はせん断力の伝達を担っています。

なぜフランジは厚く、ウェブは薄いのか

H形鋼の断面は、曲げに効くフランジへできるだけ多くの材料を集め、せん断だけを受け持つウェブは必要最小限に薄くする、という考え方で設計されています。曲げの負担能力(断面二次モーメントや断面係数)は、中立軸からの距離の2乗に比例して増えるため、中心から離れたフランジに鋼材を配分するほうが、同じ重さでも高い曲げ性能を得られます。逆にウェブを厚くしても曲げ性能への寄与は小さいため、せん断に必要な最小限の厚みにとどめ、鋼材量と重量(→重量の計算方法)を抑えているのです。

フランジとウェブをつなぐフィレット

実際の断面では、フランジとウェブは直角に交わるのではなく、内側の隅にフィレット(丸み・R部)と呼ばれる丸まった部分でつながっています。角を丸くすることで、応力が一点に集中する応力集中を和らげ、疲労やき裂の起点になりにくくする効果があります。フィレットの分だけ実際の断面積は単純な長方形の組み合わせより大きくなるため、正確な重量や断面性能は近似式ではなく形鋼表の実測値を使う必要があります。

局部座屈と幅厚比のかかわり

注意

フランジ・ウェブとも、薄すぎると板自体が波打つように変形する局部座屈を起こし、断面全体の耐力を発揮できなくなります。板の幅(または高さ)と厚みの比率=幅厚比には上限が定められており、フランジ・ウェブそれぞれに基準があります。フランジは片側が自由端、ウェブは両側が拘束されるなど支持条件が異なるため、許容される幅厚比の考え方もフランジとウェブで別々に整理されています。

サイズ表記での位置

H-400×200×8×13 …×8(t1=ウェブ厚)×13(t2=フランジ厚)

表記の3番目がウェブ厚(t1)、4番目がフランジ厚(t2)です。通常はウェブのほうが薄いので、3番目<4番目になります。表記全体の読み方は「H形鋼の読み方」で詳しく解説しています。

覚え方
  • フランジ=鍔(つば)。帽子のつばのように上下に張り出した水平の板。曲げに効く。
  • ウェブ=web(クモの巣・つなぐもの)。上下をつなぐ垂直の板。せん断に効く。
  • 表記は「薄い方(ウェブt1)→厚い方(フランジt2)」の順。数字が小さい方がウェブ。

Q1. フランジとウェブ、どちらが厚いのが普通ですか?

ほとんどのサイズでフランジ(t2)のほうがウェブ(t1)より厚くなっています。曲げの負担が大きいフランジに鋼材を集中させる断面構成になっているためです。

Q2. ウェブが薄いと強度上の弱点になりませんか?

ウェブが薄いこと自体は合理的な設計ですが、集中荷重を受ける位置や柱脚・接合部では局部的な座屈やめり込みが問題になることがあり、必要に応じてスチフナ(補強リブ)を溶接して補強します。

あわせて読みたい

ウェブの詳細は「H形鋼のウェブ」、薄さの限界は「幅厚比」、表記は「H形鋼の読み方」、強軸・弱軸の考え方は「強軸・弱軸」をどうぞ。

実務のワンポイント

接合部の納まりを描いていて痛感するのは、フィレットの丸みを無視した近似計算と実測値の差が、孔あけ位置の検討で意外に効いてくることです。薄いウェブに集中荷重がかかる箇所では、計算上の余裕以上にスチフナの要否を現場目線で確認しています。

まとめ

  • フランジは上下の水平な板で曲げを、ウェブは中央の垂直な板でせん断を負担。
  • 曲げ性能への寄与が大きいフランジは厚く、せん断だけを担うウェブは薄いのが合理的。
  • フランジとウェブの間にはフィレット(丸み)があり、応力集中を緩和する。
  • 表記は3番目がウェブ厚t1、4番目がフランジ厚t2。覚え方はフランジ=つば、ウェブ=つなぐ板。